オオサンショウウオの見る夢
昨年の紅葉も終わりの頃、わたしは、生まれて初めて、オオサンショウウオに出会いました。
いつからそこにいるのか、捕らえられ、何もない、石も、水草もない、ただガラスだけに囲まれた水槽の中にオオサンショウウオはいました。置き物や、化石のように、身動き一つせずただじっと、そこにいました。
すぐそこに、ふるさとの湖があるのに、帰ることもできず、何年くらいそこにいるのでしょうか。気が遠くなるくらいの年月を、来る日も来る日も、そこでそうしていたのでしょうか。
可哀想という気持ちと、捕らえられたから、今私が見ることが出来ているという皮肉な状況に複雑な気持ちになりました。
現状とは裏腹に、巨大なオタマジャクシのような、どこかユニークな姿のオオサンショウウオ。
どうして捕らえられたのか。たまたま、その日、うっかり人のいる方へ行ってしまったのか。
わたしも、どこかこのオオサンショウウオに似ているな、と思ったのです。
わたしも、うっかりしていて運命に捕まってしまった。
自分が今ここにこうしていることが不思議です。何かに動かされるようにここにやってきたのですから。
あの水槽の中のオオサンショウウオは、今何を思っているのか。起きているのか、寝ているのか。
夢を見ることも、あるのでしょうか。
私も、水槽のような現実の中で、夢を見ているのでしょうか。
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