ネットだからこその戦略的手法 -エンタメとネットを結びつけた「一筋の光」 -
こんにちは、久野憲明です。
今回は、約4年前に、「テック」というよりも「リアル」かつ「IT」というよりも「エンタメ」の領域に飛び込んでしばらくして気がついたこと、そして、私自身が、「ネット」x「エンタメ」と言うものに熱中することになったきっかけを共有していきたいと思います。更に、次の記事と連動して、その後うまれた様々な事例も公開していきたいと思います。
※上記の経緯はこちらをご覧ください!
「ネット」「エンタメ」に踏み込んだ直後の苦悩の日々
自己紹介にも記載しましたように「IT・モバイル・ベンチャー領域」から「リアル・エンタメ・テック期」転じた時のタイミングで感じていたこととして、果たして、自分なんかにエンタメをすることができるのか?と言うことでした。どちらかと言うと「ただやりたい」。10代〜20代の音楽に熱中し、30代で「IT・モバイル・ベンチャー領域」の経験を積み、これらをかけあわせてやれるのは自分しかいない、と勝手に思い込み、ライブ配信の領域に飛び込む決断をしたというのが正直なところでした。
当時は「ライバー」という言葉もなく、ライブ配信をする方を集めるところからのスタートでした。「ユーザー」もゼロからのスタートでしたので、ライブ配信をしても誰も見にこない、なかなかうまくいかずに、頭を悩ませる毎日でした。「これは、エンタメどころではないぞ・・。」という状況でした。
コンテンツが人間であることの難しさと魅力
アプリのビジネスやサービスの領域においては、BtoBもBtoCも経験はしていましたが、ライブ配信で一番難しいなと感じた点は、「コンテンツが生身の人間であること」でした。様々なメディアコンテンツ、ゲームコンテンツに関わってきましたが、利用者に提供するのは、企画・制作・開発というプロセスを通じて、コントロール可能なコンテンツでしたが、今回は全く違うやり方を考えなければいけないと感じていました。
よく考えると当たり前のことです。リアルのエンタメは大きな熱狂と感動をうみだします。それは、コンテンツとして提供される、生身の人間には、背景やストーリー、人間性やキャラクターがあり、その上で、音楽や演技、ファッションやダンス、映像などのコンテンツが上乗せされているものです。当然ながら、高い価値になり大きな熱狂をうみだすことになるわけです。そんな課題を感じながらも、そんな熱狂に近いものをうみだしたいのである、自分がやるのであると決めて、試行錯誤を続けていきました。
まずは「成功事例」つくろう
未来へのアイディアや計画がない場合は、過去の経験に基づいてできることをやるという基本に立ち返り、様々なアプローチを試みることにしました。
Metaps時代に、繰り返してきたこととして、とにかく成功事例をつくる、それを繰り返す、失敗事例は再現しないようにする、超高速回転で!ということがありました。また、アプリビジネスを行うパートナー向けに、データ分析のプロダクトやコンサルティングを提供していたこともあり、データに基づく成功事例をパターン化することができるのではないかというところに注目していました。
ライブ配信をする方々も様々ですので、全てのライブ配信のコンテンツをみると同時に、全てのライブ配信のデータを徹底的に見るようにしていると、少しづつ成長するパターンが見えてきました。
コンテンツ面においては、多くのコンテンツを見ていくことで、前に進んでいる手応えを感じることができました。自分が1人のユーザーとして1人のライブ配信者として、ライブ配信という空間にダイブしていけば、何が良くて何が悪いか?楽しいのか面白くないか?感動があるのかつまらないのか?などは一つ一つ言葉にしていくことができました。
しかし、それをつかんだとしても、十人十色のライブ配信者に対して、整理して伝えていくことは、簡単なことではありませんでした。それぞれのキャラクターや考え方があるので、「こうしなさい」と言うことができず、「こういう風にすると良いからこんなのはどうかな」「こういうやり方もありますよ」ということで、個別化して伝える必要があることと、成功が確約できる内容ではないということが難しい点でした。
数回やってみて「つまらない」よくわからないということでやめてしまうライブ配信者もいましたし、頑張ってはいるものの先が見えずに疲弊してくる方もいました。
「まずはこれとこれを必ずやりましょう!絶対に前進するから!!」という「全員共通の何か」が必要でした。そんな中、成長する事例をみていると、共通点が発見され、詳しく調べてみると、いくつかの方程式がうまれてくるようになりました。
データにダイブして見えた「一筋の光」
現在は、ライブ配信という市場が拡大し、たくさんのライブ配信者、たくさんのマネージャー・プロデューサーの方々が存在しています。これから共有する内容は、現在では当たり前のことばかりとなってはいます。しかし、当時の私にとっては「一筋の光」となりました。そして、ぼんやりと2つに分かれていた「ネット」と「エンタメ」という言葉が「ネットエンタメ」という一つの言葉として成立するイメージがわいてきた第一歩となりました。
こちらは、ライブ配信をはじめてから「最初の50回」の「ギフティング累計」と「ファン数」の推移を比較しています。
ケースAもケースBもはじめの15回目までは、「ギフティング累計」は横ばいでスタートします(①)。しかし、15回目をこえるあたりで、ケースAのギフティング累計が急成長を迎えることになります(②)。そして、ケースAのファン数はじわじわと継続的に成長しながら40回目をこえるあたりで、急上昇することになります(③)。
配信回数が50回目の終了時点を比較すると、「ファン数」はほぼ同じ結果となりましたが、「ギフティング累計」においては「約4倍」の差がうまれました。
ここまででお分かりかと思います。ここの比較からうまれた仮説は、以下の3点です。
一つの「仮説」がうまれたのでこれを「検証」するべく他の事例についても同様に確認を行いました。確認を終えて「確信」に至ったところで、はじめての「これとこれをやれば必ず前進する」「全員共通の何か」がうまれた瞬間でした。
そして、更に他の指標との相関性もみていきます。
「1配信ごとのギフティング」の推移に注目してみたところ、ケースBはこれといった変化はないのですが、ケースAはきちんと「1配信ごとにギフティングのヤマがうまれていること」が分かりました。
次に「1配信ごとのギフティングのヤマ」が、なぜうまれているのか?を確認するために、また新しいデータにしてみたところ、関連性がありそうなものとして「1配信あたりの配信時間」というものが浮上してきました。
上記をご覧ください。ケースAは「1配信ごとにギフティングのヤマ」と「1配信ごとの配信時間」が連動しています。
ここまでくると面白いもので、次から次へと新しい「事例」「仮説」から「事実」がうまれてくるようになりました。
ギフティング数や配信時間、配信回数などの表面的な数字はもちろんのこと、いいね数やコメント数、視聴時間、など目に見えにくい数字も一つ一つ見逃さないようにしました。成長や前進のきっかけになるものは一つ残らず確認をして、どのように変動するか、どのようなパターンで増加・減少するか、増加傾向に至るまでのきっかけ、減少傾向に至るまでの失敗パターンなどを数値化・可視化・比較を繰り返し、言葉にしていきました。
ここまでの一連の流れを何度も何度も繰り返し続けることで、頭を悩ませ、試行錯誤をする毎日から抜け出すこととなりました。その結果、上記のグラフのような段階的・継続的に成長していく成功事例が、次から次へとうまれてくるようになりました。
「コンテンツが人間」でも確信をもって伝えられること
「コンテンツが人間であること」に対して難しさを感じたことを繰り返し記載してきましたが、「データにダイブ」した結果うまれた「方程式」と「共通のやるべきこと」は、圧倒的な破壊力(説得力)がありました。
性別、年齢、居住地、職業、バッグラウンド、カルチャー、趣味、特技、性格、言語など、様々な構成要素があるのが人間でありますが、全ての方々に対して、適用できるものとなりました。
ネットだからこその戦略的手法
本記事の内容は、既に業界の常識となっていることですので、たいした情報ではありませんが、本記事を通じて、お伝えしたいこととしては、以下二点です。
エンタメにおける「効率・成長・熱狂」の可視化
「1」については、記載の通りです。上記のグラフや数字を、個人の活動に置きかえることで、「活動状況」「課題」「成功要因」「失敗要因」が全て可視化できるのです。たまたま、今回はライブ配信の事例を起点としましたが、プラットフォームやサービスは問いません。YouTube、Instagram、Twitterでも同じです。多くの方々が登録者数やフォロワー数を伸ばそうとしている活動においては、全く同じことがいえます。次の記事では、TikTokに適用させた考察や事例を共有していきます。
「2」について、従来のリアルのエンタメは、どちらかというと、成功するか成功しないかわからない、成功の指標もあいまい、売れるかどうかは予測しにくいという領域であると考えています。(だからこそ、成功した時の爆発的熱狂が大きいというのはありますが、それはここではおいておきます。)
しかし、その不確定なチャレンジもネットエンタメやデータと連動することで、より成功確率をあげること(リスクを最小化すること)ができるのではないか、効果を最大化できるのではないかということです。
最後に、「1」と「2」のどちらに対しても関連して重要な点があります。それは、「成長した」きっかけやタイミングを見逃さずに「なぜ」成長したかを見極めて「同じことを繰り返す」とができれば、「戦略的な継続成長」をうみだせる、ということです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
次の記事では、最新の事例と共に「エンタメにおける「効率・成長・熱狂」の可視化」というタイトルで詳しく共有していきたいと思います。
こちらの記事は、「TikTok編」としていくつかの事例をまとめていますが、以下の内容で、「ライブ配信編」というものも準備中でして、以下のようなデータ・グラフを用いた事例と考察を共有させてもらいます。ご期待ください!
-LIVE YOUR DREAM PROJECT- N.Hisano "Ace"
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