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ヨハネはINFJ

劇団青春の庭のうさぎたち、第7回公演「あなたはだんだん」の感想です。
僕は8/25(日)16:00〜の回を観ました。

※パンフレットを読む前に書いています。
※ネタバレを多分に含みます。

とりあえず1番言いたいことは、
今回も最高でした。

青うさぎの作品は、脚本担当にもよるのかもしれませんが、
「人間界とは別の世界を舞台にして、人間を俯瞰して見る」
という構図がよく出てくる印象があり、
この劇団の1つの持ち味なのかな、と感じます。

様々な視点から物を見る、って、頭でそう思っても中々出来ないじゃないですか。
でも劇の中では、登場人物はその世界の常識を前提にしたセリフを発しますよね。
例えばセミが、ここ数日間のことを「ずっっと(長い間)」と発言したり。
観客はそれを受け入れざるを得ない。
そんな体験を通して、視野を広げることを誘導してくれるので、毎回とてもワクワクします。


For

英単語の”for”と同じく、まさに前置詞のように、
それぞれの物語の合間に挟まれて展開される演目だったんですね。

最初の数分で、
・演者の登場の仕方(今回は客席後ろの階段から降りてくる)
・「観客参加」の仕方(本公演では、観客に話しかけるような演出があると事前告知があった)
・人間とは違う種族の世界を見せること
・しかし中央線が出てくるなど、人間世界のような構造でもあること
が完全に説明されているのが凄いと思いました。
ここで外堀が固まってくれたおかげで、
『閻魔代理』が始まった時に世界観の内容の部分に、集中しやすかったです。

また、中盤の時計を拾うシーンで、ガブリエルが
「落ちてたものなんだし、拾ってもいいんじゃないかしら」
的なことを言っていたのがとても可笑しかったです。
「いやいや、あなたは天使なんだから”交番に届けなさい”って言う側でしょw」
と心の中でツッコミを入れてしまいました。

閻魔代理

胸の痛くなるセリフが印象深かったです。

「普通に育てていれば15歳でバイクなんて乗らない」の
「普通」という言葉は、特に重くのしかかってきました。
きっと、ノリコもウメも本人達にしか分からない、どうしようもない事情があった。
それなのに「普通は」などと言われてしまい、
理解されないことのやり場のなさ。
人間界でも思い当たる節がいくつもあります。

閻魔が佐藤にかけた、
「普通なら、もっと早く気付けたんじゃないのか」
「散々殺してきて”もう誰も傷つけたくない”だなんて、言って満足したいだけだろ」
(記憶が曖昧で、正確じゃないかもしれません)
などのセリフも、
自分に言われているような気がし過ぎて辛かったですね…。
(誤解無いように言っておくと、辛かったのが面白かったです!笑)

また、『For』にも出てきた「中央線」、それから「生ビール」といった言葉は、
きっと元の言葉が、公演用に変換されているんだと勝手に思いました。

ここは人間世界から階段を下った先にある地獄の世界、
しかし人間界のように「労働」という仕組みがあったり、
電車のようなものや、居酒屋のようなものが存在する。
『For』の誘導のおかげで、ここら辺の設定はこのように解釈し、すんなり入ってきました。

そして、そのおかげで人間界のリアリティと重ねて見ることができ、
ただでさえ胸の痛くなるセリフが、一層グサグサと刺さってきました。

Lumiere

階段を下った先のもう1つの世界。
というより、全ての生命はこの世界と現実世界を「輪廻」により循環している。
『閻魔代理』と繋がっているのであれば、
日本に住む人間の場合は輪廻の世界ではなく「地獄」に行く場合もある。
他の地域の他の種族にも地獄的な場所があり、複雑なパイプが張り巡らされている。

…といった感じなのでしょうか。
それとも、魂とそれ以外が分離してそれぞれ「地獄」と「輪廻学校」に運ばれたりもするのかな。

1番ゾクっとしたのは、命の源の数を減らすために
「地獄行きの判定を甘くします」とか上層部が言い出しそうだな、と思ったんですよね。

でも地獄は日本人だけかもしれませんが、
とにかく、命の源が過剰であることに対して「システムを考え直す」のではなく、実際には
「輪廻から外したくない?じゃあ地獄的な場所に連れていく基準を下げて、輪廻に向かう個体数を減らそう」
という方策が取られたりしそうで恐ろしいな、と思ってしまいました。

人間界でもありますよね。
年収何百万以上だとナンタラ控除を受けられなくなるとか。そういうの。

最後に、ヨハネが再び人間を志望して2次面接を受けていましたが、
結局「輪廻から外れるものを選ばないといけない」問題はどうなったのか、
その答えは明かされていませんでしたね。
先生は「善処する」と言っていましたが、こんなに短期間で
システムの変更が反映されるとはちょっと思えません。
ましてや、全編通してここまで人間界のリアルと重ねられるように描いているのですから。

ヨハネが無事に面接を受けていることを見ると、ひょっとしたら先生が…。

ヨハネはINFJ

意味深なタイトルをつけて、内容を最後に持ってくるというズルい作戦です。すみません。

『閻魔代理』を乗り越え、コミカルな雰囲気もあったのでリラックスして途中までは見ていました。
しかし、ヨハネの考え方があまりにINFJの自分と合いすぎていて、再び体が震え始めました…。

「ヨハネ、あなた面接を舐めすぎ。もっと考えて。」

めっっちゃわかる!!!
考えすぎるほど考えてるのにこういうこと言われるんですよね。
トマスやペトロは、大して考えていないように見えて、
要領を押さえて、うまく世渡りしていく。
それを目の当たりにすると、羨ましくてしょうがない。

でもそんなことを口に出すと周りから言われるんですよ。

「彼らだって色々考えてるんだよ。」

そう、考えていないわけではない。
ただ「潜在的な思考」「余計なことを考えない」が、無意識のうちにできている。
分かってる。分かってるよ。そうなんだよ。
でも、だからどうしろって言うんだ。
弱音を吐くことすら許されず、更に追い込まれて何も解決しない。

でもそうやって反論すると今度は
「人から答えを貰うのを待ってないで自分で考えろ」
とか言われるんですよね。分かってる。だから何も言えなくなっていく。

すみません、ヒートアップして本題から逸れてしまいました…。
とにかくそんなヨハネ、
夢も適正も分からない。
けどなんとなく遠くへ行きたい。
新しいものに出会いたい。
そして周りの気遣いは、本人の価値観とはすれ違ってしまう…
ここら辺の表現も凄く共感する所があって、頷いてばかりでした。

ヨハネは彼女なりに答えを出して再び動き出しましたが、
きっと苦しみに押し潰されそうになる時が、
これからも何度も来ると思います。
社会に迎合するか、自分を貫くか、どっちがどう転ぶかは誰にも分かりませんが、
人生を全うしてくれていたらいいな…と願うばかりです。

というわけで、命の源の世界にMBTIを持ち込んでしまいました。
ヨハネの生まれた姿が自分だったりして…なんて()

他の感想としては、登場人物のキャラがとっても好きでした。
世界観がぶっ飛んでいる分、キャラ付けを割と極端にすることで見やすくしているように感じられて、流石だなあと思っていました。
特に、ヤコブのような優等生キャラは小さい頃のアニメ以来久々に見たような気がして、
懐かしく感じながら見ていました。

最後に

ちなみに、今回は最前列の席を取ることができ、更に
「観客参加型の演出への参加希望」を伝えていました。

そしたら、公演中に輪廻転生学校の先生から
「あのお兄さんは、おそらく1周目だな」
と言われました。
僕は人生1周目らしいです。

ということは僕はヨハネでは無いですね。
ありがとうございました。

演出参加可能の印のリボンを記念に持ち帰らせてもらえました。

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