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地球タクシー
車に乗ると静かになってしまう。
意識しないと変えられない癖は誰にでもある。車で静かになってしまうのは子供のころ両親がよく家族旅行に連れて行ってくれていた時からの癖だ。
ぼーっと何も考えず外を眺める。心躍る発見があるでもなく、来たことはないが特に感想も浮かばない見知らぬ街を車は走り抜ける。
昨日初めて知ったBS1の地球タクシーという番組。旅行先で移動中、まっさきにみるその国の風景は、きっと空港から街中に向かう交通機関の窓外の風景だ。
旅行中で最もインパクトを持つこの光景を、地球タクシーはただただ映し出す。観光地でもない見慣れない国の日常の風景に、私たちは集中して目を見張る。
タクシー運転手の言葉も印象的だ。ネパール最大の都市、カトマンズ。信号もなく、野牛が道端に佇む。生活がまるごとストリートに溢れ出ているような活気。ここでのドライバーは、自身はヒンズー教徒だが、キリスト教も、イスラム教も、仏教も、それぞれの神様を信じているといった。カーストもまだ残る世間で。
残念ながら私はたくさんの国に行くような仕事ではない。時間もお金も限られている。
でもこの30分間、他の国の日常が、車の窓から見る高さで、親しみとリアリティを持って流れてくる。想像力に鍵をかけない限り、そこから自分の日常を客観的に考えてみるきっかけも掴める。
番組が終わるとタクシーからいつもの日常に降りるような感覚がある。でもその日常は、いつもとは少し奥行きが違って見えるのだ。