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読書:海の十字路の交流誌 矢延洋泰

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[2008年に書いた記事を転載]

第二次大戦後、東南アジア植民地が相次いで独立するなか、出稼ぎにきていた華僑はその地にとどまりながら中国籍を捨てなかった「華僑」および公民権を得た「華人」となった。華僑の華は中国を示すが、華人の華は中国人の血統を表す。中国国籍を捨て、新生国家の公民となった者が多かったが、中国籍を捨てながらも、現地の公民権をとらず無国籍となった者、第三国に出た者、これを機に帰国した者などさまざまな人生を選択した。

現地生まれの「僑生(Local Born Chinese)」と呼ばれる人のなかに、現地人や中国人以外の女性と結婚した人の子孫も多くなってきている。こうした人たちを、タイではルーク・チーン(Lukcin)、ヴェトナムではミン・フォン(Minh huong、明郷)、インドネシアではプラナカン(Peranakan)、フィリピンではチャイニーズ・メスティソ(Chinese-Mestizo)、マレーシアではババ(Baba)と呼び、彼らを一括して「華裔(Hua Yi)」と称している。

落葉帰根(落葉が根に帰るように、人間が死んだらふるさとに帰る)であった出稼ぎの華僑が、落地生根(故郷を離れ異国の地で根を生やし、その地の土に帰る)の華人になったのだ。

もともと現地にあった文化の上で、海を媒体として、西洋から植民地化とともに持ち込まれた文化、中国から華僑とともに持ち込まれた文化、が交差する。その文化の十字路であった東南アジア諸国の現在の姿を理解するうえで、人の移動という歴史はまさに欠かせないものである。

欧米諸国の植民地支配と日本の植民地支配のし方の違いが、現在の欧米企業と日本企業の海外での現地法人運営のし方に現れているのでは、との切り口が新鮮であった。自分の会社はどうだろうか。 

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