読書:エスニック・ワールド 山下清海 編著
[2008年に書いた記事を転載]
エスニック・ワールド、読みながら会社の海外研修に行った時のことを思い出した。ブラジル人というと、褐色の肌を想像するのだが、ブラジルから研修に来ていた二人は白人だった。本によると、白人、褐色人、黒人、アジア系それぞれがおり、その割合は地域によって異なり、リオデジャネイロ等の南東部ではポルトガルやイタリア系の白人が多く、マナウス等の北部、北東部では褐色人が多いようだ。普段接することの少ない国に対しては特定のイメージで捉えがちだが、実際そこにいる人にはいろいろな文化・歴史的背景があり、一括りにはできないようだ。
シンガポールではその出身地別に最も多いのが福建人、次に潮州人、広東人、客家人、海南人となっているようだ。"華人国家"と言っても、その出身の地域の文化や風習によって、移民した先での生活スタイル等、大きく左右されるのだと思う。シンガポールの起源を福建や潮州に見つけるのも面白いと思う。一方で日本では近年中国の東北地方出身の人が増えており、東北地方では朝鮮族の存在や、日本語教育が盛んだという理由もあるが、同じ中国でも北と南で移民先となる場所が異なってくるのは興味深いことだと思う。
研修での話だが、インドの二工場から来ていた人は研修中いつも二人一緒にいて、周囲の人からも話しかけづらく、皆敬遠するような雰囲気があった。日が経つと、その二工場は同じインドでも距離的にもかなり離れており、そのため地元の言葉では言葉が通じないらしく実はその二人は英語で話していたということがわかった。それを知った周囲の人が自分も話に加わろうとし、結局最後は皆打ち解けるということがあった。知らないこともまだまだあるのだ。外から入ってきた英語を標準語としたインドと、北京官話を標準語とした中国。今後の展開が楽しみだ。
本の著者は、中華街は観光客へのサービス、チャイナタウンは中華同胞へのサービス・助け合いの場である、として中華街とチャイナタウンをそれぞれ呼び分けている。横浜、神戸、長崎の中華街と、池袋チャイナタウン。確かに池袋チャイナタウンで買い物をすると、中国で体験したようなそれなりの対応をされる。決して観光客向けではない。自分達で生きていくためなのだ。ちなみに聞いた話で場所は少し変わるが中国人のベットタウンになっている埼玉の蕨や西川口には朝鮮族専門の引越屋というかなりニッチなサービスもあるそうだ。
またインドの話になるが、日本では最近インド人も多く見かけるようになっているが、インド人はIT系企業で働いている人が多いこともあり、チャイナタウンのようなコミュニティーをインターネット上に持ち、レストランや学校についての情報交換をしているというのだ。インターネットの登場によりコミュニティーの在り方も変わってきているのだ。
人が流動的になるに従い、やってきた得体の知れない人に対し、得体の知れないままではなく、理解することも大切なのではと思った。