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もし、乃木坂46のアンダーメンバーが単独でロックフェスティバルに出演したら

論旨及び仮定

初めに


その名の通りだ。もしロックフェスにアンダーが参戦したら、その時のセトリを本気で考えてみたいと思う。

✳︎筆者はコロナ禍で邦ロックでハマったためにフェスに行ったことがない。映像を見たことがあるのみだ。故に所々実情と異なる部分がある可能性があるのはご容赦いただきたい。またアイドルファンであるが故に無意識下で推し補正が掛かっている可能性がある。読んでいて不可解なチョイスがあったらご理解いただきたい。そして何より、このセトリは筆者個人が推測に推測を重ね私情をドバドバぶち込んで考えたものだ(極力客観的であるようには努める)。故に、異論は死ぬほど認める。

まず大前提として、客層はファンはほとんどいないと仮定する。なぜならやはりロックフェスの主役は「ロックミュージシャン」であり、邦ロックが好きな人が会場の大多数を占めているのが常だからだ。基本的に、そこにヒップホップアーティストやアイドルが参加することの方が稀であることは自明だろう。
そしてセットリストは10曲とする。これはROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019において姉妹グループである欅坂46、現櫻坂46が披露した曲数が10曲だからだ。今回はフェスの先達である櫻坂の皆さんにリスペクトを込めて同数の10曲で考える。
また衣装の転換もほとんど行わないこととする。VTRやダンスパートでの尺稼ぎができず、更に着替えのための動線が確保できないであろうという予想に加えて、パフォーマンス一本で勝負してもらいたいとの願望も含めた仮定だ。
そしてアンダーのメンバーは29thシングル現在のものとする。

それでは考察に移っていきたい。

アンダー曲たち

さて、まずは乃木坂のアンダー曲、すなわちアンダーメンバーが担当したカップリング曲をおさらいしていこう。
1stから順に

・左胸の勇気
・狼に口笛を
・涙がまだ悲しみだった頃
・春のメロディー
・13日の金曜日
・扇風機
・初恋の人を今でも
・生まれたままで
・ここにいる理由
・自由の彼方
・あの日僕は咄嗟に嘘をついた
・君と僕は会わない方がよかったのかな
・別れ際、もっと好きになる
・嫉妬の権利
・不等号
・シークレットグラフィティー
・ブランコ
・風船は生きている
・アンダー
・My Rule
・新しい世界
・三角の空き地
・日常
・滑走路
・~Do my best~じゃ意味はない
・口ほどにもないKISS
・錆びたコンパス
・マシンガンレイン
・届かなくたって…

更にそれに加えてアルバム収録曲
・自由の彼方
・欲望のリインカネーション
・君が扇いでくれた
・自惚れビーチ
・その女
・誰よりそばにいたい
・Hard to say
合計35曲が現在アンダー曲として知られている曲である。
改めて見ると壮観だ。アンダーとして括られながらも、乃木坂において非常に大きな役割を果たしていることがその曲数からもみて取れるだろう。そんな彼女たちが輝く姿を夢想して、この考察を書いているわけだ。

筆者の考える最強のセトリ(小並感)

結論から言おう。筆者の考えるベストのセトリはこうだ。(敬称略)

1.インフルエンサー(C.阪口、楓)
2.狼に口笛を(C.伊藤)
3.あの日僕は咄嗟に嘘をついた(C.林)
MC①
4.Route 246(C.金川)
5.三角の空き地(C.黒見)
6.ここにいる理由(C.弓木)
7.日常(C.松尾)
MC.2
8.Sing Out!(C. 中村)
9.錆びたコンパス(C.山崎)
MC.3
10.届かなくたって…(C.楓)

考察のポイント

この結論に至ったのにはいくつかのポイントがある

1.場所


まずポイントになる点は「ロックフェス」であるということ。彼らはロックが好きで、ロックミュージシャンのアツいフィロソフィーとパフォーマンスを体感するためにフェスに赴いている。故に曲調としてもカッコイイ系、またはしっとりとした
バラード系の曲を主軸として考えなければならない。現在の29thのアンダーメンバーのもつ高いダンス力を十全に発揮できるダンスナンバー、または林瑠奈さんや北川悠理さん、中村麗乃さんのもつ歌唱力を観客に知らしめる必要がある。逆に残念なことではあるがあまりアイドルアイドルし過ぎた曲は、少なくとも初回は避けるべきだ。

2.環境


2つ目に「ファンがいない」ということ。アイドルのコンサートの文化として、ファンが盛り上がる要素にペンライト、そしてコールがある。しかしこれはそのグループが好きであり、ペンライトを持参しコールを予習してあるというかなり大きな前提の上に成り立っている。それが、ロックフェスという場では完全に封印される。かつて観客全員がペンライトを振り回すロックフェスをみたことがあるだろうか?筆者が無知なだけかもしれないが、少なくとも聞いたことがない。
またロックフェスにおける観客の行動はヘンズアップ、ヘットバンギング、ジャンプ、合唱、コールアンドレスポンス、クラップ、ウェーブなどであろう。このうちアイドルが受けやすいのはコールアンドレスポンス、ヘンズアップ、クラップといったところだ。これがそもそも曲のコールの中に存在していたり、Wow や Hey を繰り返すことで乗りやすい曲だと盛り上がることが想像できる。

3.アイデンティティー


3つ目に彼女たちは「乃木坂46」であるということ。おそらくこれを読んでいる方は「アンダーがもっと注目されてほしい」や「選抜に負けないことを示してほしい」といった考えをお持ちの方が多いはずだ。もちろん筆者もそうだ。29th アンダーライブを現地で見てその熱量に心を打たれた約1万人の一人だ。しかし乃木坂をあまり知らないであろう邦ロックファンの観客たちはそうではない。そもそも選抜とアンダーなどという概念があることすら知らない客が大半を占め、齋藤飛鳥さんや秋元真夏さん、山下美月さんをはじめとした選抜の皆さんのいる乃木坂46と同じ目線で登場してきたアンダーのメンバーを見るだろう。これは余計な偏見なく評価してくれる意味では彼女たちにとって追い風であり、同時に、彼女たちの観客に与える印象が乃木坂全体の印象に直結するという点では足枷にもなりかねない。彼女たちは、自らのパフォーマンスだけで、自分達が「乃木坂46」であることを示さなければならないのだ。

以上のことを踏まえてそれぞれの曲の理由を解説していく。

選曲理由

1曲目:インフルエンサー

表題曲だ。アンダーが主役となって活躍できる場において、アンダー曲をメインに披露してほしいと思う人がこれを読んでいる人の大半だろう。筆者もできる限りそうあってほしいと思っている。しかし、前述したように彼女たちは自分達が「乃木坂46」であることを示さなければならない。1曲目はいわば名刺代わりだ。乃木坂が、フェスを盛り上げにきたという印象を観衆に与える必要がある。

乃木坂46は48グループのアンチテーゼとして生まれたグループだ。それもあってと言っては皮肉に聞こえるかもしれないが、AKB48に比べると一般大衆に広く認知されている曲が少ない。誰もが聞いただけで乃木坂の曲だとわかるのは、客観的に見て『インフルエンサー』と『シンクロニシティ』の2曲のみであろう。もう少し緩めて「知っている」「聞いたことある」となる可能性があるのも『制服のマネキン』『ガールズルール』『君の名前は希望』『裸足でSummer』『帰り道は遠回りしたくなる』といったところだろう。つまるところ乃木坂と曲が直接的に結びついているのはこのあたりのみということだ。そしてこの曲たちの中で、更にパフォーマンスと結びつくのは『インフルエンサー』だけだ。

アンダーの強みはアツいパフォーマンスだ。それを一曲目から知らしめるにはこの曲しかないと考える。音楽番組で見るのとはまた違う、圧倒的熱量でのインフルエンサー。センターはもちろん阪口珠美、佐藤楓の二人だ。選抜もアンダーも知っているメンバーであり、ダンスに乃木坂でも最上位の信頼を置かれているこの二人。更に楓さんはアンダーセンターの自覚と覚悟ももそこに乗っかってくるだろう。阪口さんも26thのアンダーセンターだった。共に先頭に立つものとして不足はない。故に選抜の曲を背負い、アンダーとして乃木坂を表現するのにここまでの人材はいないのではないかと考える。
あと裏センターは決まっている。金川紗耶だ。説明はいらない。

2曲目:狼に口笛を

一曲目が終わった頃には前のバンドの空気から一気に乃木坂の空気感に入れ替わっていることだろう。会場のボルテージもインフルで上がっていることは間違いない。ならばここで必要なのはアイドルの要素だ。他のバンドと完全に差別化できる要素、それが乃木坂の持つ「アイドル」のエッセンスだろう。これによって他のバンドでは出せない空気感を作り上げることが可能となるわけだ。

しかしアイドルらしい甘ったるい曲は嫌悪される傾向にあるため避けなければならない。感情的な要素を除いても、インフルエンサーからの流れを妨げないためにはアイドルの可愛らしさとかっこよくアガる曲調を両立させた曲をやる必要がある。となれば選択肢は一つだ。クラップしやすくメンバーも煽りやすい『狼に口笛を』、ただ一つ。

ここで一つ期待したい要素に「煽り」がある。『インフルエンサー』は何かを語る曲ではない。故におそらくOverture後そのままに曲が始まるはずだ。ならばメンバーが最初に観客と繋がれる場所はここ、一発煽りでぶち上げる必要がある。最初に浮かんだのは和田まあやさんだ。アンダーキャプテンであり唯一の一期生として全てを見てきたメンバー、そんな人なら、と考えたが一点懸念事項がある。声だ。我々が愛してやまないまあやさんのあの雰囲気はフワッとしたあの声と喋り方から生まれる。それの声は、乃木坂を知らない人を盛り上げるには少々則さない可能性がある。ここに適するのは声が大きく、熱く、可能ならばシャウトできるメンバーだ。こうなると適任は伊藤理々杏ただ一人だろう。彼女の熱のこもった煽りを聞けば、会場は一気に熱狂に包まれるに違いない。クラップを求めたりなどすればもう完璧だ。

3曲目:あの日僕は咄嗟に嘘をついた

この3曲目は正直迷った。盛り上がった会場を一気にグッと引き込みMCへと繋ぐ、重低音が響くような曲が理想だと考えた。候補は二つ、この咄嗟と『不等号』だ。ここはかなり個人の好みに寄るところが大きいため人によって考え方が異なる可能性があるが、私は咄嗟の方がよりアンダーらしいと考えた。ここは完全に好みだ。オリジナルセンターである井上小百合さんのあの迫力が忘れられないのである。更にダンスもこちらの方が好みであるが故の選曲となった。

ではセンターはどうするか。強さを出せるメンバーである必要があった。他の曲との兼ね合いもありこの曲のセンターとして思い浮かんだのは矢久保美緒、林瑠奈の2人だった。林の歌唱力は『乃木坂スター誕生』を経てある程度乃木坂のファンにも知れ渡ったことだろう。しかし矢久保のダンスが非常に力強く良いことをご存じだろうか?そのままセンターとしてMCをやる場合でもトークに安定感があるのはおわかりいただけるであろう。

ここで個人的に重視したのは表情と雰囲気だ。咄嗟はダークかつ鋭いイメージのある楽曲だ。現にオリジナルセンターの井上さんは非常に力強い目つきでパフォーマンスし、それを忘れられない自分がいる。よってその表現が可能なのはこの二人のうちどちらか。筆者は林を選んだ。彼女の歌声も楽曲と非常にマッチするだろうと考えた結果でもある。推し補正は、、、

4曲目:Route 246

MCを挟んでの4曲目。おそらくMCでは自己紹介、アンダーについての説明、メンバーの意気込みなどを語るのがまあベタだ。そこである程度観客も彼女たちの境遇を理解するだろう。そこで少しアンダーを甘くみる観客も出てくるかもしれない。ならばここで示すべきは圧倒的なパフォーマンスだ。曲に関しても聞いただけで歓声が上がるような曲であることが望ましいだろう。

1曲目でも言った通り乃木坂は圧倒的な知名度を誇る曲が少ない。更にこういったフェスでは客層が入り混じることが予想される。学生のような若年層は学校で坂道ファンと触れ合う機会がある可能性があるためまだ多少知っている可能性があるが、M2やF2と呼ばれるやや年齢が上の方々ではそうはいかない。単純にフェスが好き、出演するアーティストが好き、邦ロックというジャンル自体が好き。そういった愛の集まる場であるフェスにおいて、年齢で貴賤をつけるのはありえない。乃木坂を全く知らない人にも最大限楽しんでもらう必要がある。では老若男女が初めて聞いても絶対に楽しめる曲とは何か。この問いにおいて、乃木坂は2020年に1つの切り札を手に入れた。そう、「TKサウンド」だ。

小室哲哉。アーティストとしてもプロデューサーとしても一時代を築き上げたまさに偉人だ。彼の曲には特徴がある。聞きゃわかるのだ。よく使用したことから自身の名がついた小室進行、記憶に鮮明に焼き付くエレクトリカルなサウンド、このいわゆる「TKサウンド」は聞けば一発でわかる。上の年齢層の人たちは懐かしさを覚えるであろう。そして、逆に若年層は新鮮かつイカしたビートだと捉える。これが小室さんの本当にすごい所だ。大学生の私は全くもって世代ではないにも関わらず、このRoute 246を初めて聞いた時にはそう感じたのだ。つまり乃木坂を知っていようがいまいが、観客全員が聞いただけでノれる。そんなこの曲がこの場面において最適だ。

センターは?悪いが議論の余地はない。金川紗耶だ。The.ダンスナンバーであるこの曲のセンターを勤め、圧倒的なパフォーマンスを示すことができるのはこの人しかいない。
白状しよう、推しだ。しかし、贔屓目抜きにしても彼女のパフォーマンスは確実に乃木坂全体で3本の指に入る。いつ選抜に入ってもおかしくない逸材だが、せっかくアンダーにいるんだ、ど真ん中に立ってもらおうではないか。

5曲目:三角の空き地

ガンガンにビートを響かせた後の6曲目は、美しいメロディーのこの曲を選んだ。儚げな歌詞のにも関わらず、美しさと力強さを同居させたダンス。観客を引き込むことは間違いないだろう。

この曲は、唯一センターありきで考えた。センターは黒見明香だ。彼女は非常に魅力にあふれた人物だ。海外で生まれ、日本語・英語・中国語を操る乃木坂唯一のトリリンガル、それとは裏腹に4期生からことごとく「ツボ」と言われるほど独特な感性とキャラクター、カンフーという普通の女性では辿り着け得ない特技、そしてUp to Boy などの雑誌に出演しているのを見ると最近明らかにビジュアルが爆発し始めている。しかし、しかしだ、彼女は未だ日陰者の立場にある。バラエティにも前向きで、『ノギザカスキッツ Act.2』においてさらば青春の光から表彰された彼女であるにもかかわらずだ。筆者もかつてはとても頑張っているのはわかるがどこか周りとズレてしまう、そう思っていた。29th アンダラを見るまでは。
そこで彼女がセンターとして披露したのがこの『三角の空き地』だった。28thは学業の関係で参加できず、初めて主役に立った29thアンダラ、彼女のパフォーマンスに圧倒された。彼女自身が、オリジナルセンターである中田花奈さんへのリスペクトと共に選曲したこの曲で、彼女は圧倒的な存在感を示した。筆者は理解した、あれはズレていたんではない、合っていなかったんだと。

彼女はセンターがとてもよく似合う。それをロックファン、そして乃木坂ファンに見せつけてやってほしい、そう願うばかりだ。

5曲目(別パターン):嫉妬の権利

先ほどは『三角の空き地』を選んだが、どうにもこうにも最後まで選びきれなかった曲がある。それが『嫉妬の権利』だ。『三角の空き地』は私情MAXと流れを考えた上での選曲となってしまったが、アンダーを表現するならこちらだろう。

この曲はアンダー曲の中でも屈指の悲しみに満ち溢れた曲だ。なぜなら、筆者が
敬愛してやまない2期生全員がアンダーへと降格してしまった曲だからだ。その中には、7thシングルで表題センターを務めた堀未央奈さんも含まれている。表題であった『今、話したい誰かがいる』の希望の象徴のような雰囲気とは正反対の雰囲気を纏い、センターを経験した堀さん、そして乃木坂を語る上で決して欠かせない中元日芽香さんがWセンターとして禍々しいまでの感情を全面に出して表現した曲がこの『嫉妬の権利』だ。

この曲のセンターは苦悩を表現できるメンバーが望ましい。嫉妬は何かに憧れないと生まれない。憧れとは理解から最も遠い感情だ、とはどこかの五番隊隊長の言葉だが、憧れを理解しようとする葛藤の中にこの曲を表現する資質が生まれると考えている。一人は決まっている。和田まあやさんだ。1期生でアンダー歴の長い彼女の苦悩は我々ファンには到底窺い知ることはできない。この曲を表現するには十分すぎるほどだろう。

そしてもう一人は佐藤璃果だ。彼女はアイドルらしいゆるふわ感も大きな魅力だが、それは外見によるところも大きいだろう。しかし彼女の本質はそこではない。非常に強い責任感、それが彼女を持つ最も大きな資質だ。筆者の持論だが、人を動かす最も大きな動力は愛と責任感だと思っている。璃果ちゃんはそのどちらもを乃木坂に対して抱いているであろう。故に「グループに迷惑はかけられない」という感情が強く働きながら活動している印象がある。彼女が時折見せる涙は、決まって何かをミスした後だ。『乃木坂工事中』で、『乃木坂46時間TV』で、こちらから見れば全く非がないとも取れるとこにも責任を感じ、涙している。笑って誤魔化すことも、誰かのせいにすることもできるだろう。その場に芸人さんが、特にバナナマンさんがいる限りはそれら全てが正解になり得る。しかし彼女は逃げないのだ。たとえ捻挫をしていても、こちらに一才気取らせることなく最高のライブを完遂する。その責任感をアンダラで目の当たりにしてから、この曲を背負ってみてほしいと勝手に思ってしまっている。

6曲目:ここにいる理由

この曲を選んだ前提には、前の曲で『三角の空き地』をやったということがあるのでそちらでお考えいただきたい。この段階で現地ではピシッと張り詰めるような緊張感が生まれていると予想している。綺麗なメロディーの曲が前にあったからだ。その雰囲気に見事に合致するのがこの『ここにいる理由』だと考えている。乃木坂のライブでもラスサビ前以外は基本的にコールはない。メンバーのパフォーマンス以外を極力削ぎ落とした楽曲であるとも捉えられるだろう。サビにかけて音の重なりが増していくエレクトロニカなメロディーと、「ここにいる理由」を問いかけるような歌詞はきっと邦ロックファンにも受け入れられるはずだ。

もし一週間前に筆者が同じ文章を書いていたら、曲の説明はここで終わっていただろう。だが今は違う。10th Birthday Liveを見たからだ。このライブではなんと総勢9名もの乃木坂OGが一夜限りの復活をし、会場を大いに沸かせてくれた。錚々たるOGメンバーの中で、唯一のアンダー経験者、それがDay 1でこの曲のセンターを改めて務めた伊藤万理華さんである。明らかに「アンダーの象徴」としての凱旋だった。初期のアンダーをセンターとして支え、選抜入りした時はその類まれなる表現力で他を圧倒し、比較的早期に卒業した後には女優として賞を獲得するだけでなく個展を開催するなどまさに表現者として、今眩いまでに輝いている。
彼女の凱旋を見て、これは「自分らしさの肯定」を意味していると解釈した。アンダーは選抜に劣る。乃木坂46というアイドルグループの構造上、どうしても生まれてしまう価値観だ。メンバーとそのファンは嫌が応でもこの価値観と付き合う必要がある。しかしそういったシステムを敷いた張本人の一人であるはずの秋元康先生は、『アンダー』を通してメンバーにこう伝えた。
『美しいのはポジションじゃない』
これを体現しているのが伊藤万理華その人ではないだろうか。グループのために活動しつつ、自分の核は決してブラさない、その果てに今の自分らしい栄光を勝ち取りさらに進もうとしているのが彼女なのではないだろうか。そんな彼女が今の乃木坂のメンバーに背中で示した、自分らしくあることの重要性とその肯定、そんな新たな意味があの日この曲に新たに刻まれた気がした。

今の個性的な乃木坂メンバーの中でも、とりわけ強烈な個性をもつ人がいる。それが弓木奈於だ。ぱっと見ははんなり和風超美人。しかし一度口を開けばカオス、誰も止めることができない勢いでその場を制圧する。本当に沈金のアシスタントに推薦してくれたスタッフさんには感謝したい。しかしながらきちんとしたコメントを求められればそれに応え、時折核心をついたようなことも言ってくる。歌唱力とダンス力も高く、現在もアンダーフロントとして他の4人と張り合っているほどだ。そんなな彼女の魅力をライブで、配信で、ラジオで、グループの冠番組で、「彼女の」冠番組で目の当たりにするたびに、毎回妙に惹かれてしまう。そんな人だ。
個性を生かす、それを実現した先人である万理華さんのパフォーマンスを見て彼女はどう感じたのだろうか。弓木のあの異質なまでの独特さは乃木坂の宝だ。絶対に潰してはならない(もっとも誰かにどうこうできるような人ではないが)。アンダラで見せた弓木奈於センターの『ここにいる理由』は素晴らしいものだった。それをもう一度見られるならそれでも十分なのだが、さらに自分らしくあの曲のセンターに立つ弓木の姿を、筆者は見たくて仕方がない。

7曲目:日常

アンダーは選抜にも劣っていない。今は、少なくとも筆者は声高らかにこう言えるわけだが、そう言えるようになったのはおそらくこの曲からだろう。『日常』、初めて曲名だけ聞いた時、ほのぼのした曲なのだろうと想像した。だからこそ初めて聞いた時、パフォーマンスを見た時は絶句した。題名とはかけ離れた超絶ロックな曲調、もはや日常という単語の解釈違いとも言えるほどにメッセージ性の強い歌詞、そしてセンターの北野日奈子が作り上げたアンダー曲史上最高とも言えるパフォーマンス。全てを総合してメンバーからも、ファンからも非常に高い人気を誇り、毛色の違う他の坂道グループのファンからも支持を集めるまさにアンダー曲という枠組みをぶっ壊した革命の曲だ。こんな最高に熱い曲をロックフェスでやらない理由があるだろうかいいや無い!!!!!!!
会場のボルテージは最高潮まで上がること間違いなしだ。

ただここで問題が生じる。後継者問題だ。人類の歴史上常に争いの種となってきた問題をこの曲も孕んでいる。日常=北野日奈子、この等式は万丈不変の定理だ。しかしこの神話は2022年3月25日に、日奈子さんの卒業で終焉を迎える。最後のステージ、赤と青の炎で彩られた日常を共にしたのはアンダーメンバーだ。しかし彼女が後継に指名したのは、深い親交があり乃木坂を誰よりも愛している久保史緒里だった。全く文句はない。最適解だ。現にバスラの2日目で披露した『日常』は踏襲と変革を果たした、新しい久保史緒里の『日常』であった。しかし彼女は最前線で戦う選抜のフロントランナーの一人。アンダーとしてラストステージに共に立つことはできず、今後おそらくアンダーとしてこの曲を披露することはないのだ。非常に悩ましい。この曲はアンダーにとっても欠かせない、それと同時に乃木坂というグループにも欠かせないものになった。この二つはどうやっても久保ちゃん一人では背負い切ることはできないだろう。ならばどうすればいいか。
分ければいいのだ。

松尾美佑。彼女は2期生を愛するメンバーの一人だ。高い身長と身体能力を土台としたダイナミックなパフォーマンスは、まさにアンダーの熱量を表現していると言っても過言ではないだろう。そんな彼女がアンダラで披露した『世界一孤独なLover』がいまだに忘れられない。
セカラバはまさに赤い炎だ。演出でも赤が頻繁に取り入れられ、ファンでも赤いサイリウムを振り回す人は多い。『日常』も、初期の頃は赤とイメージづけされてきた。ならば、アンダーにはまだ未完成なこの赤い『日常』を託したいと筆者は考えた。
赤い炎は不安定だ。揺れるし、少し陰ることもあるだろう。しかし薪をくべればいくらでも熱く、大きく、光り輝くことができる。あの日日奈子さんが灯した種火を、アンダーメンバーが守り育てて全く異なる色に育った『日常』、それはまた新たな神話になるに違いない。松尾ちゃんのもつ表現者としての力は、その火守としての要件を十分満たすであろう。
青い炎は研ぎ澄まされたものだ。北野日奈子が作り上げ、決して揺らがず褪せない形で久保ちゃんにその松明を手渡した。久保ちゃんはその松明を篝火に、次の駅を目指して暗闇を突っ走って行ってほしいと心から願う。

8曲目:Sing Out!

ライブも終盤に差し掛かってきた。会場の雰囲気も完成されつつあり、MCを挟んでのラストスパートをかけていきたい場面だ。ならまずは"あの曲"をやるためにも会場を一つにしたい。前述したようにロックフェスの観客にコールを求めることは厳しい。だからこそ一体感がそもそもの構成に含まれている曲で客の心を一つにする必要がある。ともすれば、この曲しかないのではないか。Sing Out!。

まず何よりこの曲は死ぬほどいい曲だ。世間の知名度は比較的高い程度に止まっているかもしれないが、乃木坂の衣装の特徴であるロングスカートを最大限活かした美しいダンスも相まって見た人を必ず魅了することができるだろう。そこにさらにあのクラップが加わるのだ。筆者の行ったことのあるライブは数少ないが、あの一体感はSing Out!にしか出せないと確信している。乃木坂の良さを最大限出すために必要な曲だ。

センターはやはり美しいダンスを持つ人であるべきだ。ソロダンスは観客の視線を一身に集める。それに臆せず素晴らしいパフォーマンスをできるメンバーは誰か。頭に浮かんだのは阪口珠美と中村麗乃の2人だった。ダンス単体で言えばたまちゃんの方がやや上だが、麗乃ちゃんの場合は歌唱力というアドバンテージがある。はっきり言って互角だが、アンダラのように全員が輝いてほしいという観点から、ここはインフルでセンターをやったたまちゃんを下げて麗乃ちゃんをセンターに置きたい。
麗乃ちゃんは舞台の出演経験が多く、板の上での自分の見せ方をよく理解している。それ故に彼女はライブで最大限に輝くのだ。それはきっと、ロックフェスという場でも変わることはない。

9曲目:錆びたコンパス


アンダーがロックフェスに出てほしい。筆者がこう考えた大きな理由の一つがこの『錆びたコンパス』をもっと知ってほしいという気持ちだ。センターは山崎怜奈。アイドル以外の面で乃木坂最高峰の知名度を誇り、乃木坂の幅を現在進行形で広げ続けているグループにとって最も重要な人物の一人だ。ご存じの通り、彼女のこれまでの道のりは長く険しいものだった。いまだ未選抜、卒業していく同期、活躍する後輩たち。今となってはアンダー唯一の2期生となりながらも、未開の地を力強く歩んでいる。そんな彼女の唯一のセンター曲は、彼女にふさわしい素晴らしいものだ。

『行き倒れ立ってそれで本望だ 立ち止まっているより前へ進め 志なかばで挫折しても 一度くらい夢を見てた方がマシだ』

全ての人に向けた応援のアンセム。これを聞いた全ての人の背中を押してくれる、そんな曲。しかもその曲の真ん中に立つのは、メンバーの中でも屈指の努力を重ね続けている山崎大先生。ついて来いと言わんばかりに、苦労の果てに手に入れたポジションで輝いている。そんな曲をもっとみんなに知ってほしいのだ。そして、全員で拳を天に振り上げたいのだ。その空気感を作り上げるための、前曲Sing Out!でもある。
想像しただけでも最高だ。

10曲目:届かなくたって…

ついにラストの締め。錆コンで会場が歓声に包まれた後、短いMCを挟んでのラストの曲。1~9曲目まではいわば過去の曲をやってきた。最後は、今の彼女たちを見せつけたい。すなわち『届かなくたって…』だ。

29thシングルアンダーライブ。北野日奈子卒業コンサートに続いて3日間行われたこのライブは、日奈子さんから全てを吸収したアンダーメンバーたちの成長の場であり、暗いムードの漂う乃木坂46の正念場とも言える場だった。
開催前は逆風が吹き荒れていたかもしれない。だがそこで見た景色は、2ヶ月近くが過ぎバスラを経た後でも全くもって色褪せていない。全てが見どころだった、全てがハイライトだった。アンダーの16人が全員それぞれの形で輝いた、本当に最高のライブだった。あのWアンコールを望む拍手に加われたことを、心から誇りに思っている。
そんな伝説のライブを作り上げることができたのは、ひとえにセンター佐藤楓の功績だ。センターとして引っ張りながらも引くところは引き、自分だけが主役になるのではなく全員が輝く道を選んだ、素晴らしいアンダーセンターだ。あのアンダラを経て、彼女が率いるアンダーは史上最強になったと確信している。
そんなアンダーの「今」を表現するのに、『届かなくたって…』以外の選択肢は思い浮かばない。センターでんちゃんの力強いソロダンスから始まり、全員が均等に前に出るようなフリでまさに16人全員でアンダーであることを表していると言えるだろう。
特にパフォーマンス力がバグっている今回のフロントを先頭に、一丸となって締めにかかる。このフェスでセンターとして、またはそれぞれのポジションで輝いたメンバーが一つになる。インフルのでんちゃんに始まり、届かなくたってのでんちゃんで終わる。
これはきっと素晴らしく美しいものになるだろう。

以上の理由から、私はこのセトリが最高だと考えた。

最後に

まず謝罪したい。この段階で12240文字になってしまった。正直こんなに書くとは思っていなかったが、筆者は思ったより乃木坂を心から愛しているようだ。申し訳ない。
そしてここまでなんとか読んでくれた方、本当にありがとう。こんなクソ長い文章、おそらく筆者なら読まない。
そして最後に改めて記すと、これは筆者の独断と偏見及び推測と憶測の上に成り立った砂上の楼閣、机上の空論も甚だしいものだ。客観性を意識したはずだが、13回以上も「筆者」と書いている時点で客観性もクソもないのではないのかもしれない。だが、筆者はアンダー、ひいては乃木坂46がマジで大好きであることを理解してほしい。今回言及しなかったメンバーや曲もあったが、それは嫌いだからとかでは決してなく、別に適している場所があると判断したからである。それを忘れないでいただきたい。

長文誠に失礼しました。
読んでいただき、ありがとうございました。
これからも乃木坂を、選抜を、そしてアンダーを好きでいてくれると幸いです。

ランダマイザ

追記

衣装はMy Ruleの灰色の衣装を推す

公演時間は曲が合計41分59秒、出演枠を1時間とするとMCを①7分 ②7分 ③3分 最後に1分で挨拶をすればきっかり1時間となる計算だ






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