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デジタルでフルHDクオリティのイラストに挑戦する

デジタルイラストの創作工程、第2回目です。

個人的にこの一年で一番影響を受けたコンテンツはPS4のゲーム、コジマプロダクションさんの『DEATH STRANDING』

ゲームという枠を超えた素晴らしい映像作品で、今まで何枚かモチーフにしたイラストも描かせてもらっています。

今回はトロイ・ベイカーが演じる「ヒッグス」というキャラがモチーフ。不運な生い立ちと境遇から狂気に変貌し、主人公の行く手を阻む悪役です。初めは素顔の分からない黄金のマスクとフード。外見も印象的なキャラです。

このイラストを描く際、「実際のゲームの画像に極限まで模写する」ということをテーマにしました。さらに、可能な限りぼかし以外の視覚効果を使わず、できるだけ手描きでいきます。

相手はフルHD画質なので、言葉通り挑戦でございます笑

モチーフとなるゲーム画像はこちら
※画像はクリックすると拡大表示されます

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デスストは、全編どこを切り取っても画になります。小島プロのスタッフの仕事のクオリティの高さを証明していますよね。この画像を模写していきますが、まずトレースで下書き。

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今回は実物に近づける事を目的とするので、人物部分は陰影を含めかなり細かく線画にします。次に塗りの工程に入ります。

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まずは黒の部分を丸ブラシでベタ塗りしていきます。後々エアブラシで陰影を付けるので、ベタベタです。

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色付けに入りました。こちらもベタ塗りです。パレットから一箇所づつ色を乗せてゆく、とんでもなく地味な作業です。一番辛いかもしれない笑 ちなみに以前に書いた以下の絵も、同手法でベタ塗りで着色しました。

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さて、どんどん塗っていきます。

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塗り終わった箇所が増えるごとに、絵の輪郭が見えてきて筆が進みます。それにしても、ヒッグスのこのマスクのデザインは秀逸過ぎますね。表面の凹凸が乱反射して美しいです。

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人物の着色が終了しました。この時点でそれなりの手応えは感じています。ここでクオリティが追い付かないと、今回のテーマはダメだと思っていたので。次にこのキャラにディティールを追加。

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正直どこが変わったのか分かりづらいですが、色の差が激しい輪郭をエアブラシでぼやかしたり、表面の雨粒を再現したり、光の表現を強調したり、かなり細かく修正しています。

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次に左肩のオドラデク(センサーみたいなもの)を追加、光の表現をエアブラシでざっくり。ここまでで人物部分の書き込みはほぼ終了。

次は背景ですが、今回の一番のハードルはここだと考えていました。元絵を見ていただけると分かるのですが、カメラ焦点の演出として背景はぼけています。さすがにこれを手書きで表現するのは至難の業なので、大まかに描いた背景をぼかす手法を取ります。ぼかすことを逆算して背景を描かなければならないので、自分の技術で表現できるかどうか不安な部分でした。

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手描き背景こちら。かなりざっくりですが、これを人物と合わせてぼやかしてどうなるか・・・

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いいじゃないすか・・・。今回の作品の成功が見えた瞬間でした。あとは微調整・・・なんですが、今回はここにさらに表現を加えます。

元絵のイベントシーン、本来なら雨が降っているんですが、切り出した画像はそれが分かりづらくなってしまったので、視覚効果的に雨粒を表現したいと思います。背景と人物の間に細かい雨粒、手前には目の前を過ぎる大きな雨粒を表現し追加します。

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いかがでしょうか。後ろの雨粒は拡大して目を凝らさないと分かりづらいかもしれませんが、落ちている雨粒の動きと、焦点の合わないぼやけ具合を表現してみました。オドラデクの光のぼやけも調整しています。これでオリジナルにほんの少しだけ自分の味を出せたかな。

最後に陰になった右目を微かに入れ、全体の微調整とタイトルなどを入れて完成です。

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全製作時間は21時間でした。元々20時間くらいと踏んでいたので、想定通り工程を進める事ができました。完成度についても現時点では満足しています。持てる技術は全て出せたと思います。

正直、さらに時間さえかければ、もっと現物に寄せる事は出来たと思いますが、それをやったところで間違い探しになるだけですし、イラストと気づいてもらえないかもしれないので、ここが良い塩梅と判断しました。

私は画力がまだまだで、オリジナリティのあるイラストはなかなか描けないので、今は写実と模写を繰り返すことで技術を上げようと考えています。絵を学ぶ上で模写はとても大切で、ひとつの作品や作者に長時間向き合って筆を重ねる事で、普段気づけないことにたくさん気付けます。

基本集中力と根気さえあれば、確実にクオリティを高めることもできますし、完成時の達成感もかなりありますね。時間がある方はトライしてみると、意外にハマるかもしれません。

最後に、計32になったレイヤーを、ざっくりだんだん重ねたものをシェアします。

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ここまでご覧いただき、ありがとうございました。



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