
「俗世の垢は するりと落ちる」
妹に誘われ、わざわざ新宿まで出向いてスイパラに行ってきた。「にじさんじ」とのコラボメニューがあるらしく、「色々食べたい」みたいなことなのかなと思い行くことにした。
新宿駅の改札のところで兄妹と待ち合わせしているのが何だかむず痒かった。合流するなり「いつもの服じゃん」「黒ばっか」「大学にそういう人いっぱいいる」というチクチク言葉を投げかけられた。店名に「新宿東口店」とあるだけのことはあり、5分ほどで店に着いた。地下に伸びる階段にすでに待ち列ができており、メニュー表を見て注文を紙に書きつつ待つことになった。
妹の「私これ食べたいんだよね」の時点ですでに6品くらいあったことに驚きつつも、それ以外から自分も2品ほど選び、「分けて食べよう」ということになった。
店内に入店して初めて「食券を買うシステムなんだ」ということに気がついた。修学旅行でスイパラに行くような男女グループにいなかった自分としては予想外も予想外。家を出てすぐに2万円をATMから引き出し、スマホ決済にも1万円チャージしていた自分に感謝した。僕は無言で諭吉を流し込み、食券に変えていく。
店内を見渡すと9割型が女性客で都心でしか見かけないようなオシャレをしたお客さんで賑わっていた。男性客は本当に少なかった。
三連休初日ということもあり、とにかく混雑していて店員さんもてんやわんやな様子だった。
ランダムの絵柄で推しを引けたらしく、嬉々としてアクリルスタンドやぬいぐるみと写真を撮る妹に、素直に「いい推し活してんねえ」と言った。
後出しのデザートが中盤で出てきたり、チャーハンの商品が忘れられていたりはしたものの、本当に忙しそうで申し訳なさすら感じるレベルでした。
こういう時に、自分に声量・男気・勇気がないことが申し訳なくなる。「チャーハン来ないね」の会話を妹としてから、実際に店員さんにお声がけするまで実に7分。「店員さん忙しそうね〜」とか適当に言っていたが、本当は通常より張った声を出すのが憚られただけだ。「一人で居酒屋に行けない」とか、「誰かと居酒屋行く時に一番手で入れない」とか、そういうところが滲んでしまった。お前がやるべき瞬間は自意識を捨てろや、とながい7分間を過ごす中で思った。
自意識が邪魔だなと思った瞬間がもう一回あった。原宿のGalaxyで当該推しがコラボをしているらしくそこに行った時。ビルの1フロアが体験型施設になっているというものだった。こういうのを心の底から楽しめる人間でいたいのに、なんか斜に構えてしまった。やらない言い訳をして、逃げていたのは情けなかったなと思った。たとえ知らないVTuberでも、写真スポットでポーズをとってそれをシールにしてもらえばいいのに、「めちゃくちゃ街列できてるから良いや」と言い訳をしてしまった。別に「ぎこちなすぎる」「キモい」で良いよなと思う。
テーマパークも含め、そういう空間では浮かれられるようになりたいです。
最後に妹と喧嘩をしたのがいつ頃なのか、明確には覚えていない。妹は図太い芯があるタイプなので、父親と変に意地を張り合う瞬間があって、それが自分は居心地が悪かった。「わざわざイオンに来てまで怠いことしてんなよ」と本気で思っていた。男女で分かれるか自分が妹側に立つかをしないと行けなくて、変に自意識が顕在化してからは意識的にそうしていた気がする。
親族に「兄妹、本当仲良いね〜」と言われるのが凄く嫌だった時期があるが、今なら胸張ってそれに頷けるかもなと思った日でした。
#367 「俗世の垢は するりと落ちる」