有名なフレデリックを原作で読んであげたい 〜Frederick by Leo Lionni〜
海外名作絵本と読み聞かせ方法について
リトル・スマーティ・パンツかららいおんさん(およそ3歳)コースの今月(8月)にお届けした絵本は「Frederick」by Leo Lionniです。
1967年、半世紀以上も前に書かれたこの絵本 Leo Lionniの代表作品です。コールデコットオナー賞受賞、23ヵ国で翻訳され700万冊以上販売されました。また、30冊ほど絵本を作成したレオにとってこの絵本は手腕を試す試金石でした。レオ・レオーニは絵本作家であり、素晴らしいイラストレーターでもあり「スイミー」でも有名です。
http://littlesmartypantsbook.com
1.あらすじ
少し長いですが、この絵本の内容を知らない方には先に知ってから英語の絵本に入っていただきたいので、細かく説明します。
主人公はフレデリックと呼ばれる野ねずみ。彼は少し変わり者でほかのねずみ家族とは一線を画しています。彼らは牧場に沿った石垣の中に住んでいますが、お百姓さんが引っ越してしまった為、つてがありません。冬に備えてせっせと食糧を蓄えなければなりません。
ねずみたちは食糧を運ぶことに余念がありません。とうもろこしに木の実、小麦や藁など、協力し合って石垣の中へと運ぶのです。しかし、フレデリックは違います。「フレデリック、どうしてきみは働かないの?」ほかのねずみは尋ねますが、「こう見えたって働いてる」と日向ぼっこしながらフレデリックは言います。「寒くて暗い冬の日の為に、ぼくはお日様の光を集めているんだ」
食糧集めにいそしむ、ねずみの家族は働かないフレデリックに少し腹を立てていました。だって彼は牧場をじっと見つめて、半分眠っているような顔で「色を集めているのさ。冬は灰色だからね」と意味のわからないことを言っています。「フレデリック、きみは夢でもみているのかい」「ちがうよ、僕は言葉を集めているんだ。冬は長いから、話のタネもつきてしまうもの」
そうして冬がやってきて、ねずみは石垣の間の隠れ家に冬籠りします。最初は食べ物も豊富でぬくぬくとしていた冬の生活でしたが、徐々に食べるものも乏しくなり、凍えてしまいそうでおしゃべりもできません。その時、ねずみはフレデリックの言っていたことを思い出したのでした。
「きみが集めたものは一体どうなったんだい、フレデリック」
そこで、フレデリックは、「目をつむってごらん」と言って、太陽の金色をイメージさせます。すると、みんなの体はポカポカと温まってきたのです。彼らは待ちきれなくなって、今度は色をせがみます。フレデリックはまたも、彼らに眼をつぶらせて、青い朝顔や黄色い麦、赤い芥子(けし)や野いちごの緑の葉っぱのことなどを話して聴かせるのでした。ねずみの頭上に飛び出た白い吹き出しには、鮮やかな色が詰まっています。
最後に家族は言葉を求めます。フレデリックは、おもむろに四季の素晴らしさを語り始めるのでした。三月に氷を溶かすのは…、六月に四つ葉のクローバーを育てるのは…、夕暮れに空の明かりを消すのは…、月のスイッチを入れるのは…。それは、僕達そっくりの、空に住んでいる小さな野ねずみなのだと、フレデリックは話します。夕立係の春ねずみ、花の色係の夏ねずみ、胡桃(くるみ)と小麦係の秋ねずみ、それから小さな冷たい足をした冬ねずみ。フレデリックは、四季の美しさを自分の言葉で讃えるのでした。
終わるとみんな拍手喝采。
「おどろいたなあ、フレデリック。きみって詩人じゃないか!」
フレデリックは赤くなっておじぎをしました。そして、はずかしそうに
「そういう わけさ」と言いました。
こちらの絵本の読み方については、下記Yotubeをご参考ください。
読み聞かせのポイントを3つ。
絵本の内容はフィロソフィーや芸術が含まれていて、実は奥が深いこの絵本、子どもは、なんのことかさっぱりです。でも、(1)ねずみの家族の中にフレドリックがいること(Mindfulness)、(2)彼は他のねずみとは少し違うこと(Individuality)、(3)彼のサプライズプレゼントが他の家族をハッピーにさせること(Kindness)、これらのポイントを抑えて読んでいきましょう。
MINDFULNESS (注意深さ)
温かみのある押し絵の中で、なんどもねずみの家族が描かれていますがフレデリックはどこにいるでしょうか?子どもは、彼を探すのがとっても上手くなりますよ。フレデリックはいつも白昼夢、一人だけ働かずに考えてばかり。でも、なんとも愛らしい眠たそうな顔、許してしまうのも分かります。
INDIVIDUALITY(個性)
フレデリックが、他のねずみとは少し違うことをママから特に指摘せずに
読んでいくと、子どもは「なんかおかしいな?」と思うでしょうか?うちの子は5歳で読んだ時にフレデリックは「怠け者」だなんて1mmも思ってない様子でした。それどころか、最後の展開にフレデリックを尊敬し真似をして「ポエム」を書き初めました。クラスにも多種多様な性格や行動を取る子がいるアメリカではフレデリックはそこまで「他の子と違う」と思われないと感じます、日本だとどうでしょうか?
KINDNESS(いたわり)
ねずみの家族は、全く働かないフレデリックに対し怒ったり、ご飯抜きなどの罰則もありません。結局、フレデリックは家族から愛されているのです。
どんな子でも、平等に愛されるっていうメッセージがお子様に伝わるといいですね。そして、フレデリックも皆んなの為にずーっと溜めにためた「思想」を共有します。生きていく上で何が必要なのか考えさせられます。
我々はこの、少し難しい絵本を3歳のらいおんさんコースにあえて入れたのですが、何故かというと、押し絵の素晴らしさもありますが、やはり「メッセージ性」が強かったというところです。3歳には全く理解できなくて、なんか可愛いねずみの話くらいで、大丈夫なのです。その子が大きくなって、ある瞬間に、そういえばフレデリックって母親が昔読んでくれたなー、なんか英語でよくわからなかったけど、なんで英語で読ませたかったんだろう?とか、小さいながらに「Poet」という言葉を覚えたな、など何十年もかけてじっくりと理解するための絵本だと考えていますし、皆様にもそうなっていただきたいという思いがつまっています。
Let's read aloud!