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「君たちはどう生きるか」人生の最後に何を作るか

映画監督という職業は人生の最後に何を作るのかが明快に自覚できるクリエイターであります。建築家などもそうですが作品一つ作るのに莫大なお金と時間がかかるため(世界的な作家になればなるほど)作品一つ一つの区切りというのは大きいものです。
押井守が映画監督の勝利条件に「映画を作り続けること」を挙げていました。作品を作り続けることができる、それが映画監督の勝利条件なのだとしたら宮崎駿は勝利したということでしょうか?
天才監督とその仲間たちをもってしても北米、日本を除く世界各国にNETFLIXからジブリ作品を見れるようにしたり、愛知にしょうもないテーマパークを作ったりとお金を産むことにエネルギーを注ぐ必要はあったようですが少なくともスタジオジブリから宮崎駿作品を出し続けるという任務は達成したように見受けられます。

長年のファンとしては宮崎駿という人間が自分の人生の最後に何を作るのか。何を作ることに決めたのか。何を残すことに決めたのか。
それが最大の関心でした。
映画を見た皆さんはどう感じたでしょうか。
私は宮崎駿という人は映画を作ることで本当に世界を変えようと思っていて、世界をよりよくできるのは作品を作ることだと本気で思っているのだなと感じました。世界をよりよくするために作品を作っている。

1941年に生まれ太平洋戦争を経験し、GHQによる占領、戦後復興、高度経済成長、IT革命と現代、それらを生き抜いた人間が考える最大限のメッセージ。
それが「君たちはどう生きるか」でした。

言葉によって世界を変えることはできない。
価値観とはある種の競争関係にあるものです。海が美しいことが大事なのか、あるいはそこを埋め立てて空港を作るのが大事なのか。
例え話に過ぎないわけですが自然を大事にすることが大事なのか経済が大事なのかそこに正解などないわけです。
あるのは価値観の競争関係だけです。
なにが美しくて、なにが楽しくて、なにが尊いのか。
映画を見るという体験を通し他人の人生を生きることでしか伝わらないこともあるのでしょう。

想像力とは世界を斬り裂く一振りの刀です。
「君たちはどう生きるか」
宮崎駿という刀そのものでした。

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