中村治×田崎健太トークショー at 鳥取大学医学部附属病院 外来ギャラリー 2019年8月23日
2019年8月13日(火)〜9月6日(金)の期間、鳥取大学医学部附属病院外来ギャラリーにて、中村治写真集「HOME 〜 Portraits of the Hakka」の写真展が開催されました。
こちらが、鳥取大学医学部附属病院です。
中村治さんが、同病院の広報誌「カニジル」の写真を撮影されているご縁で実現した今回の展示。作品32点が、外来・中央診療棟1階の長い廊下に並べて展示された光景は圧巻でした。
写真集のチラシも、置いていただいています!
そして8月23日(金)には、カニジル編集長であるノンフィクション・ライター、田崎健太さんと中村治さんのトークショーが開催されました。病院関係者の方から、入院されている患者さん、外部からの一般参加の方まで、大勢の方にご来場いただきました。
最初に、中村さんがご紹介され…
続いて、鳥取大学医学部附属病院長、原田省先生より開催のご挨拶と、広報誌カニジルのご紹介。カニジルの表紙の写真も、もちろん中村さん撮影です。
そして、いよいよ田崎健太さんと中村治さんのトークショー開幕です。
田崎さんは小学生の時、3年間を鳥取で過ごし、父親が医者だったこともあり、鳥取との縁を感じられて「カニジル」の編集長を受けられたとのこと。そして、病院の広報誌ということで清潔感のある写真を撮れる写真家がよいのではと考え、中村さんを選ばれたとのことでした。
最初に中村さんのこれまでのお仕事について紹介。続いて、中村さんが写真家を志すことになったきっかけとして、沢木耕太郎さんが英訳されていたロバート・キャパの本を読んだことで、写真家になれば面白い人生を歩めるんじゃないかと考え、写真家を目指すことになったと言います。
そして、写真家になるためにはシャッターを切る動機が生まれる場所に行く必要があると考え、被写体を探して中国へ語学留学することになったという経緯が語られます。
当時の中国は経済発展もまだ先で、裏通りにある胡同(フートン)の生活がまだ残っていて、そこを撮影しながら歩いていると、「ご飯食べた?」などと声をかけられ、ご馳走になることも多くあったそうです。
そして中村さんが現地で写真を撮り続ける中、ロイターで仕事をするチャンスを得たこと。そして語学の学習と同時に写真の仕事を必死でこなす間に疲労がたまり、危うく髄膜炎で死にかけた際、現地のお医者さんに命を助けられたという話が続きます。
そしていよいよ写真展のお話。プロジェクターで写真を映しながら、客家(はっか)と客家土楼(はっかどろう)についての興味深いお話が始まりました。
そもそも客家に関心をもつきっかけとなったのは、中国で見つけた建築の写真集のなかに、客家の人たちが住む集合住宅である客家土楼が写っていたこと。もともと中国の中心である中原に住んでいた客家の人たちが逃れて来たのが、中国南西部の福建省の山奥で、客家の人たちはそこに土楼を築いたのだそうです。
中村さんは留学をしていた北京で漢民族の顔を見るにつけ、漢民族の顔をトータルで想像できないということに気づきます。そして、漢民族の古の顔というものがあるとしたら、漢民族のルーツと言われる客家の人たちなのではないかと考え、客家の写真を撮りに、2006年〜2008年にかけて、客家の村を訪ねて行ったのです。
客家土楼は古いものでは700年余り前に作られ、大きいものだと2〜300人は住めるものだそうですが、撮影に行った時は、すでに若い人たちは外に出て行って、老夫婦が数組というところが多かったそうです。
客家土楼を最初に見た印象は、とにかく異様で巨大なものだということ。土楼の3、4階には銃口をのぞかせられる窓があり、360度守ることのできる円形になっているのだそうです。各階には回廊が渡されていて、守る上でどこから攻めてこられても合理的な作りになっているのだそうです。
撮影当時の客家土楼の人たちは昔ながらの自給自足の生活を続けており、中村さんは客家の人たちの顔に北京や上海、日本ではもう見られないものを感じて、人の皺というのはこんなに綺麗なのか、と感動されたそうです。
そしてそんな中、95歳にして初めて写真を撮られたというお婆さんとの出会い。露出を見るために撮ったポラロイドをあげたとき、それを見たお婆さんは涙を流したといいます。中村さんは、そんなお婆さんの思いを写し込もうと写真を撮ったとのことです。
今では世界遺産に登録された土楼が46棟あり、それらの土楼は修復され綺麗になっているのですが、それ以外の多くの土楼は住む人も、修復する人もいなくなり、風化の一途をたどっているようです。
トークショー終了後には、ご来場いただいた方からの質疑応答。最後に、中村さんのサイン会が行われました。
こうして、トークショーは大盛況のうちに終了。最後は中村さんと記念写真を撮るお客様も大勢いらっしゃいました。
イベントを開催していただいた鳥取大学医学部付属病院の皆さま、田崎健太さま。そしてご来場いただいた皆さま、ありがとうございました!