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あの夜

君は感情が激しい人だった。感情が高ぶり、ひたすらに人を愛し。時とともに、その感情がすぐ薄らいでいって、そして、無くなる。まるで、暑い日に朝露が蒸発して消えるみたいに。

あの夜のこと覚えてる?狭いリビングのソファーに二人が並んで座り、冷めかけたピザを君は手で食べた。わたしはピザでもなんでも、お箸で食べるからお箸で。確かテレビで映画を観てたはずだけど、何を観てたのか思い出せない。覚えてるのは、映画のキスシーンを見た後の、照れくさそうに隠そうとしていた、ほろ酔いのような君の頬。

君には知られたくなかったけど、あの夜は少しドキドキしたよ。自分より25cmほど背の高い君に、上から見られるなんて。壁ドンされるかと思ったよ。

少女漫画読みすぎだった。

君の愛の告白なんてとても信じられなかった。だとしたら、あの夜のドキドキは何だった?

そして当たり前のように、消えた。君が中途半端に証明しようとしていた、わたしへの愛が。まるで、女と男が、新宿の町の夜に消えてしまうような…