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先生、なぜ芋掘りロボットだったのですか。

※プロフィール記事としてリライト。2019/12/27

#1コマでどれだけ語れるかチャレンジ

物心ついた頃から「ドラえもん」の単行本45巻が揃っていた。

それもてんとう虫コミックスではなく、今は廃刊となっている藤子不二雄ランド版だ。

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当時の小学生だった僕にとってマンガは絵だけを見る事が多くて、手に取ってパラパラと眺めてはすぐに別ものを見るという、内容や本質を理解せずに単に目で鑑賞する物だった。だから後々に繰り返し何度でも読めた。

でも、そんなことだからどの巻もボロボロになってしまっていた。半分になった物は前半が無くなった物もあった。それでもその状態の本も何度も何度も読んだ。小学5か6年生の時には、ほぼ全ての内容を把握していたように思う。

あと理由はわからないけど、てんとう虫コミックス版の事は下に見ていた。藤子不二雄ランドが本家で、てんとう虫コミックスは邪道だと思っていたんだと思う。藤子不二雄ランドにプライドを感じていた。選ぶべきブランドはこっちだ。という確信があった。なぜかはわからない。

テレビアニメの「ドラえもん」と原作の違いをオンエアーでチェックするくらいには内容を覚えていた。アニメだとこうだったけど、原作ではこうだったと次の日に友達に訴えるくらい不思議な熱意があった。そして、周囲にドラえもんの事を良く知っているのは僕である。という事を常にアピールしていた。

しかし、いつしか読まなくなった。たぶん中学校に上がるころだ。

そんなある日、父にこう聞かれた。

「これだけ読んだら、もうドラえもんは読まないよね?」

僕は「そうだね、もう読まない」と答えた。

本当に心底飽きるくらい読んだ。卒業してもいいはずだ。と思った。そしてたぶんだが、そのころアニメのドラえもんがのび太に対して甘くなってきたタイミングだった。そして世の中にはドラえもん以外にも読むべきマンガがたくさんある事を知ってしまっていた。

だから、今やプレミア価値の付く「藤子不二雄ランド」を捨てた。それはまるでのび太のママが、のび太のマンガを捨てる時のようにまとめて捨てられた。

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しかしこれを後悔するのは、10年以上も先の話だ。最もあのボロボロの状態では、価値も何もないだろうけど。それでもガラーンとした本棚のように、心に空いたスペースに気が付かない振りをしていたのかも知れない。

時は流れ、30歳になってから、改めててんとう虫コミックスで全45巻を買い直した。その時僕は、きっとこれは共感してもらえないかもしれないけど「これなんだけど、これじゃない。」と思った。

世の中には取り返しのつかない事がある。もう二度と、セル画を透かした日々は帰ってこないのだ。

その時にハッと気が付いた。

F先生がお亡くなりになったのは、ちょうど僕がドラえもんを読まなくなり始めた時だ。と思っていたが、それは逆だったかもしれない。F先生の死で、僕の中のドラえもんは終わらせてしまっていたのだ。

なんて申し訳ないことをしたのだろう。F先生はそんな風な終わり方を望んではいないはずだ。

そんな思いの中で45巻セット、大長編セット、それを並べて本棚に入れて、最初から読み始めた。

すると不思議な事に読み飽きたはずの話の中に、今更ながらに「気づき」や「新たな疑問」がたくさん出てきたのである。

先生は、なぜこんな発想をしたのだろうか、この何気ない1コマに描かれている物はなんだろうか。これはもしや。はたまたこれは。F先生に聞いてみたい事が山ほどあるじゃないか。

とそんな具合に。

僕の中で終わったハズのドラえもんが、また新たなはじまりを見せたのである。

むしろ大人になってからの方がその疑問は増えて行きつつあり、1コマ1コマを読み飛ばせないのだ。そして、その読み方をすると、話は無限に広がっていく。

これは、昔の僕がいかに漫然と読んでいたかがわかる出来事だった。読み解いたり、読み深めていない。という事が分かったのだ。

だから今、F先生に聞きたいことが沢山ある。

しかし、コロコロコミックの宛てにハガキを送っても、F先生はもうこの世にいらっしゃらない。だから、F先生の作品の中で何かに疑問を持ったとしても、もはや本当の答えを得る事は出来ないのだ。

僕が知る日本一のクリエイター。僕の人格に影響を与え、優しさや厳しさ、友情や努力、ブラックユーモア、皮肉、「オモシロさ」の基準を作った人。尊敬する偉大な人物。

もし僕が死んで天国か何かで先生に質問させてもらえる機会があるとしたら、しょうもない僕は緊張のあまりに、しょうもない質問しか浮かんでこないかもしれない。普通の会話ができるかどうかも疑問だ。

だから用意しておこうと思う。

1コマ1コマに感動した事や、感じた事なども含めて用意しておく。先生が「なるほど、それはですね・・・」と嬉しそうに話してくれる事を妄想しながら僕なりの思いを綴っておく。

これは僕の先生への質問状なのだ。

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