スウェーデンの田舎町へ③
振り返り旅記録。
この日はスンドボーンという小さな村に出かける。ファルンという街からバスで30分弱くらい。
到着して少し散歩。赤い実がなった木がたくさん。
この木、日本で見たことがある記憶がないのだけど、フィンランドでもよく見かけて、フィンランド語ではPihlajaと呼ばれていた。
調べると日本語ではナナカマド。北海道や東北にはあるそうだ。
つい、つまんで食べてみたくなっちゃうけど、絶対すっぱい気がする。鳥たちが食べるのかな。
ダーラナ地方(このスンドボーンという村も含まれる)の家や小屋などは、ほとんどが赤茶色をしている。
この赤茶色は、ファル(ン)レッドといわれるようだ。スウェーデンの他のエリアも、たぶん北欧の他の国でも、スウェーデンレッドと呼ばれて利用される有名な染料の色。
ファルンには有名な銅山(世界遺産)があり、そこで採れる銅を原料にこの染料が作られる。木材の腐食を防ぐ効果があるため昔から木造建築に多用されているらしい。
その地にあるものを活かして生活をつくってきたような街って、なんていうかすごく自然で地に足がついている感じがする。
色あせててもかわいいポスト。3軒分がひとつの場所にある。郵便屋さんに優しいね。
横道に入ったりして散策していたら、歩行器を使って散歩するおばあちゃんがいた。
この場所でアジア人はきっとほとんどいないから、不審がられるかな?とちょっとだけドキドキした。(別の国の田舎で少しだけ差別的な態度をとられた経験があるので…)
でも少し遠くから、おばあちゃんはにっこりと笑って、近づくと”Hej” (スウェーデン語で「こんにちは」)と言ってくれて、その「こんにちは」がすごく気持ちのこもった温かいものを伝えてくれた。
本当の挨拶って良いものだね。
人と会えて嬉しいなって思う。
このスンドボーンという村に来たのは、画家のカール・ラーションさんという人の生前の自宅兼アトリエに行きたかったから。
そのCarl Larsson-gårdenという家は、今はガイド付きで見て回れるようになっている。
家の内部は撮影NGなので、写真は外観とお庭だけ。
控えめな案内板。民家だからこのくらいがしっくりくるし、本当に来たい人だけを穏やかに歓迎してくれている感じがする。
外観とお庭。
湖に面していて、橋もある。
きっと全部手づくりなんだろうな。
りんごの木があるなんて、いいな〜🍎
赤茶色の染料が、おしゃれに映えてる。
家の中には、カール・ラーションさんの妻のカーリンさんがつくった衣類や暖簾、テーブルクロスなど、たくさんの服飾品や雑貨が使われていたまま置いてあったり飾られていたりしている。
家のつくりも、小物の数々も、ラーションさん夫妻の家族への愛が溢れているというよりも、それだけでできているように感じられた。
子供は7人いたそうだ。全員がここで暮らしていたのかは分からないけれど、凝ったデザインでつくられた棚なども含めて、家具のひとつひとつに子供たちとのストーリーがあった。
カール・ラーションさんの絵を見ても、家族を心から大切にしている気持ちが伝わってくる。
この家に入ると、それがずっとリアルに温かく感じられる。
日々の暮らしが芸術になっていた。
ひとつの部屋には、日本の浮世絵や版画、小さめの仏像などがコレクションされていて、ラーションさんは来日したことはないが「日本は芸術家としての私のふるさと」と書き残しているそうだ。私はこのことを全く知らなかったので、ここで日本の芸術を目にするとは思わなくてびっくりした。
浮世絵はヨーロッパの芸術に影響を与えたという話は聞いたことがあってもなかなかリアルに実感できてはいなかった。
生きる環境が違ったり、文化が違ったり、全く違う同士だからこそ影響しあえる素敵なことって、日常にもたくさんあるように思う。
30分くらいの内覧ツアーは、とても濃くて楽しい時間だった。
ラーションさん夫妻がここで暮らしていた時代に比べたら、今の生活は便利だし人との関係も楽しみ方もずっと選択肢が多い。
でも家族の原点、暮らしの原点って、ここで感じられたようなものかもな、と思った。
ラーションさんのお家を出てすぐに、カフェ?みたいなものがありそうなプチ森が。
ここで鳴くカラスの声に聞き覚えがある!
日本のカラスのカーカーじゃない声。
これはまさしく「魔女の宅急便」に出てくるカラスの声。
そういえば魔女宅の舞台はスウェーデンと言われている。画家のウルスラがこの奥から出てきそうだもんな。
ファルンの街に戻ってからも、この鳴き声のカラスが結構いた。
ニシコクマルガラスという種類らしい。
日本のカラスよりも丸っこくて鳩っぽいね。
世界遺産の銅山の跡地にも行ってみた。
深く掘られたこの風景を上から見て、何をつぶやいたかと言うと…
「君の名は。」
ということで、ファルンの旅記録は終わり。