『見回す』
見回すと、ふつうに溶岩だ。
とはいえ、赤く湧き出しては冷えて黒くなる溶岩を、ひとはあまり知るまい。
俺が立ってるところは、火照ってはいるが、それゆえに乾いているところで、それは熱い稚児の淵であり、冷めたハワイのハワイ島。
あるいは、どこにでも名付けられている、千畳敷と言われる岸辺。
体力のある俺は、見回し、あちこちに同じ境遇にある人を見かけたので、声をかぎりに、
「おーい! そこのあなたー! ここはどこかなのー? 少し寝ぼけてしまったようなんですー」
と呼びかけた。
ほとんど誰も返答しなかったが、割と近いところにいた、釣り人風で、でも竿を持っていない男が、
「ここは《げへな》やらと言うらしいぞー」と。
聞いた覚えがある。
霧の向こうのように朧げなその人は、それきり何も言わなかった。
俺の靴は濡れていた。
潮汐でいうところの満ち潮が、俺の足元を急速に小さくしていく。
その水は冷たい。
しかし、脱ぐに脱げない服や帽子を取り囲む大気は、熱い。
顔を嬲る潮風も、嫌な臭いのする、獣を毛皮ごと丸焼きにしたような、脂じみたもので、耐えがたいものだが、耐えるよりない。
悪い夢なのかなと思いながら、空腹と渇きを感じた。
てんでまとまりのない文章を、連想しながら勝手に書いているだけです。 たまに霊感が降りて、意味ありげなことも書けたらいいなと思っています