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好きな漫画家さんが亡くなったと知ったのは、帰り道の地下鉄のホームでのことだった。
その漫画家さんについては、その頃、いわゆるネットニュースで様々な情報が流れていた。
「色々大変なんやな。」記事に目を通すたび、そう思っていた。
記事とは別に、語気の強い、誰かを一方的に責める言葉が多く書かれていた。
そういうとき、いつも
「何かを悪いというのはとても難しい」
という、椎名林檎の声が頭に響く。
そんな矢先の出来事だった。
ホームでニュースのタイトルが目に飛び込んできて
すぐに電車が来たので乗り込む。
電車の中でスマホにじっと目を落とす。
途中で座席が空いたので、座る。
ふと目線を上げると
ドア付近に立つ女性が鼻をすすっている。
もしかして。
彼女もその漫画家さんのファンだったのでは。
そう思うと、思わず
「もしかして、〇〇さんのファンの方ですか?ニュースを読まれましたか?」
と聞いてしまいそうになる。
でも、聞けなかった。
でも、同時に、「誰か、少なくともその漫画家さんの作品が好きな人とこの気持ちを共有したい」
と思った。でも、できなかった。
彼女が、なぜ鼻をすすっていたのかは、分からない。
けれど、ちょうどニュースが配信されたタイミングで
とても悲しそうな顔をしている人だったので、
私の直感ではファンの人だったと思う。
*
しばらく、つらかった。
今も正直、つらい。
その漫画家さんの作品に
何度も何度も、心を救ってもらった経験があったからだ。
何より悲しかったのは
私が勇気づけられた作品の中で
主人公が自死を思いとどまるシーンがあったことだ。
けれど、その作品を創り出した人は
その道を選んでしまわれた。
あれからまだ、その作品を読むことができない。
どうしたらいいの。大好きなのに。
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