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熱い春

一人でいるのが好きすぎて、困っている。

正確には、好き、というよりも
「誰か」と一緒にいるのがとても辛く感じる瞬間が多い、という感じ。
そういう時は、「ああ、自分は今調子がよくないのだな」と思うようにしている。

昔から人に対して気を遣いすぎてしまう癖のようなものがあって
それはもはや体質の一部だと思っているので、今さら変えることが難しい。

先日も、職場に来た短期アルバイトの大学生に
やたらと気を遣ってしまった。
相手は自分よりも一回り年下で、礼儀正しく
とても感じの良い人だった、にも関わらず。
いや、感じの良い人だからこそ、気を遣ってしまうのか。
自分を良く見せたい、と思いすぎるのか(小心者のクセに見栄っ張りな私)
たった数日のお付き合いで、今後会うかも分からないのに
できるだけ相手を不快にさせないよう、丁寧にふるまう自分に
ほとほと嫌気がさした。
本当はそんな清らかな人間じゃないくせに、という自分の声が頭に響く。

帰り道のバスで、気疲れしてボーっとしていたら
ふと、6年前に退職した会社のことを思い出していた。

退職日の2週間前に、私の後任の人が入社してきた。
歳は1つ離れているくらいだったと思う。
とても感じの良い、真面目な女の子だった。
退職する半年前には退職が決まっていたのに
なぜか採用はギリギリまで行われず
その結果、引き継ぎ期間はたったの2週間だった。

ちなみに、私がその会社に入社した時には、
前任の人が辞めるまで1週間ほどしかなかった。
加えて、私の前任者はかなりテキトーな人で
引き継ぎ資料はもちろん無く、
最低限の仕事内容を足早に教えてもらい
彼女は颯爽と退職していったのだった。
もちろん、そこからが大変な日々の幕開けであった(略)

そんな苦い経験があったからこそ
たった2週間の引き継ぎ期間の間に
できる限り、私は後任の人に伝えられることはすべて伝えよう!!
と熱くなっていた。自分は去って行く立場なのに
なぜか働いていた2年間で1番、燃えていたと思う。笑

後任の人が来る前に、引き継ぎ資料を作成した。
上司から言われた訳ではなかったが、絶対に無いと困るだろうと思い
(私はかなり困ったので)
正直、かなり忙しい業務の合間を縫って
黙々とマニュアルを作っていた。

後任の人の入社日は、まだ彼女に1つも仕事を教えていないのに
私はグッタリと疲れていた。意気込み過ぎていたのだ。

この時も、きっと私は
「できるだけいい先輩で、嫌われないように接しよう」
とかなり気を遣っていたと思う。
だけど、今になって思い返すと、それだけじゃなかったと思うのだ。

自分が苦労した部分を、絶対に彼女に味わわせたくない、
できる限り、仕事を理解しやすいよう、彼女が困らないよう
短い引き継ぎ期間でも最大限伝えられるよう
緊張しすぎなくらい緊張しながら、ひとつひとつ彼女に伝えていった。

退職日には、彼女がプレゼントと手紙をくれた。
手紙には「もっと一緒に働きたかったです」と書いてくれていて
照れくさくも、かなり嬉しかったことと、
私も彼女ともっと一緒に働きたかったな、と思ったことを覚えている。

気遣いしすぎて気疲れしてしまう自分はあまり好きではないけれど
誰かのために一生懸命になれる(時もある)ところは
尊いな、と思うし、これからも大切にしたい自分の一部だ。


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