1st Mini Album 「Memoria」
※6.マイヒーローは以前記したので省略します。バンドHPのBLOGをご覧ください。
1.anthology
心の中に空間があるとしたらそこはどんな光景だろうか。
よく学生時代なんかにぼんやりと思い馳せてみたりしていました。
自分の場合は窓も扉もない暗い空間でした。
全てをシャットアウトする空間でありながら、自分だけの秘密の空間、そこに妙な居心地の良さを感じます。
僕は子供の頃、物置き部屋の中にランタンを持ち込んで、乱雑に積み上げられた段ボールや荷物を登り、自分だけがすっぽりと収まるスペースで本を読んでいました。秘密基地に仕立て上げた暗くて狭い埃っぽい空間。
意外にそこで読み耽った漫画や絵本の事は大人になった今でも覚えているものです。
自分の心の中には自分以外入る事はできない。
僕の中ではその物置部屋と同じでした。
そこで見た物語は自分を何処へでも連れて行ってくれたと同時に自分は世界で1番狭い空間に居る。
異空間に迷い込んだような感覚に酔いしれる。
その様子をイントロからよく表現できているなと思います。
アルバム1曲目のこの曲はこれからどんな物語を見せてくれるのだろうと思わせてくれる。
そんな僕の心の中を上手く表せたと思います。
あなたの心の中にはどんな光景が見えますか。
2.迷い子ストーリー
実は弟に向けて書いた曲です。
迷いながら歩いていくのが人間ならば、
その道中に仲間が居てくれたら最高だよね。というイメージで書き始めました。
将来や自分自身の事を悩む時期は誰にでも必ず訪れるなら、メンバーとして、兄として、そして1人のアーティストとして自分に何が出来るだろうか。みたいな事を考えていた気がします。
ライブで歌っている時でもこの曲の優しさみたいな部分に何回も救われています。
個人的にLittle Bluffにらしさみたいなのがあるとすればこの曲がその最初のイメージを作ってくれた曲なのかなと思います。
「誰のでもない物語さ
物の見事に決めてやろうぜ」
と言う歌詞が気に入っています。
このアルバムのリードトラックです。
3.ココロネ
1st Single 「Finder/マイヒーロー」収録の3曲の次に書かれた曲です。
人と人は完全に分かり合う事は絶対に出来ないからこそ歩み寄り合える。その心と心の距離について歌っています。
どれだけ寄り添い合おうとしても、その全てまでは僕の目には映らない。
そこから書き出した歌です。
心根、心音、その2つでココロネ。
リズムの取り方が独特で1番と2番で違う取り方をしないといけなくてレコーディングではノリに苦労した記憶があります。
ギターソロが大変お気に入りです。
実は歌詞の中に友人2人の名前が織り込まれています。彼らは今、元気かな。
夜の海を見ながら砂浜や堤防とかでこの曲を聴いたらそれはそれはエモくなれるのでオススメします。
僕はまだそのシチュエーションで聞いた事ないけど。
4. at dawn
ココロネの次に出来た曲です。この2曲がアルバム内では大人組。
18歳の頃に書いた歌詞が大枠であり、そこにメロディとコードを付けてバンドアレンジを加える順番で作りました。
等身大な言葉と熱みたいなものを感じながら当時10代だった自分はこの曲をどう歌うだろう、みたいに考えながら歌を歌った気がします。
曲は2Aから2Bが好きですね。カッコいい。
リリースしてから現在までライブで演奏されていない曲です(ごめんよ)
それもあってたまに歌うとバンド初期の記憶を呼び起こしてくれるこれまたエモい曲です。
メンバーでスタジオに入ってたまにこの曲を演奏する事があると、その度に誰かしらが「かっこいいな…」って言ってくれます。
これを次演奏するライブに遭遇できた方は本当にレアすぎて良い事起きます(適当)
5.メモリーダスト
自分の中に存在する形のない事実に名前を付けるなら、それは「記憶」と「思い出」のどちらになるのだろう。
思い出と記憶の違いには感情の有無が関わると言います。
どちらも当てはまるけれど、その意味は全然違ってくる。
楽しかったり、悲しかったり、共に過ごした時間を「思い出」と呼んで、
その後感情という色が抜け残った事実だけを「記憶」と呼ぶ。
そして最後には雪のように静かに消えていく。
人間の記憶力はそういう風になっているのかなと思います。
その流れの繰り返しの中で、すぐに忘れたり、どれだけ時間が過ぎても消えなかったり、それを決める重要な要素は感情が絡む「思い出」の部分かなと自分は思います。
痛みは呪いにも等しい力で自分の中に刻み込まれて、その切なさ、苦しさ、愛おしさを含めて忘れるなと言わんばかりに自分の胸を締め付けてくる。
そこから解放された時、胸が楽になると同時に、自分の中にある「思い出」は「記憶」に変わる。
ならば僕は痛む胸をそのままに、
どうせ時間と共に雪のように溶けていくなら、せめてその最後まで苦しみ続けよう。
白い息が見える頃に、
こうして思い出せるように。
そんな事を思って書いた曲です。
Memoriaのもう1つのリードトラックで、アルバムのジャケットのデザインも「記憶の欠片」を意識しています。
メモリーダストはレコーディングの当日もずっと歌詞が書けずに1コーラス分くらいの歌詞が足りませんでした。(書いてはあったけど納得いかずボツにした)
死ぬ程焦りながらレコーディングスタジオのラウンジのような所でペンを持って向き合い7時間ほど、
伝えたい気持ちを書いて、それをよりシャープに削ぎ落とす。その作業を極限まで集中して繰り返してなんとかギリギリで完成しました。
人生で最も短い7時間でした。体感1時間です。精神と時の部屋でした。ほんとに。
僕はレコーディング中は何故かコーヒーとチョコしか食べないんですが、その2つを切らして買いに行こうとスタジオの外に出たら、既に日が暮れていた事に驚愕したのを覚えています。
本当に焦ったなぁ。
自分もだし、何よりメンバーがヒヤヒヤしたと思います。途中、何度も逃げ出したい衝動に駆られました。ごめんね。
しかし物事やはり何とかなるようになっていて、ヒーヒー言いながらも無事に書き終え、歌も録り終えられた時、
「自分も本気になったら意外とやれるやつだな。」などと思っていた気がします(反省はしている)
メモリーダストの歌録りの日はクリスマスだったのでいつもうちのレコーディングを見て頂いているサウンドエンジニアの大島さんと4人でケーキを食べたのも良い思い出です。
作詞作曲も一度詰まると抜け出すのに苦労するタイプなので、この日の前日には半ば自暴自棄になりながらカラオケに行ってその後お酒を飲んで現実逃避した事も思い出しました。
カラオケに関しては色んな曲の歌詞を見て何かヒントはないか、みたいな情報収集しに行ったのですが何の成果も得られずに乾いた笑みを浮かべて店を出てそのまま居酒屋に入りました。
そんなエピソードもあった甲斐か結果として、
とても大切な曲がまた1つ増えてくれました。
でもそれも含めて僕には良い「思い出」なのです。
Little Bluff
上野貴広