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「君が忘れたダンスフェス」シーユーインヘルプレゼンツ、こまばアゴラ劇場:新進気鋭とベテランの濃いコンテ

「東京ELECTROCK STAIRSを中心に様々なイベントや公演を企画・制作してきたcrackers boatを経て、新たに作られた創造ユニット。音楽リリース、ダンス、映像制作など多角的に手掛ける」(公式サイトより)という「シーユーインヘル」がプロデュースする(コンテンポラリー)ダンス公演が、2021年9月11日(土)~9月20日(月)に、東京の「こまばアゴラ劇場」で行われた。

こまばアゴラ劇場は、東京大学駒場地区キャンパスの近くにある。平田オリザ氏が芸術監督を務める小劇場だ。「劇場を通じての若手劇団を支援する」がコンセプト。

出演者は、Aプログラムに横山彰乃×34423、池ヶ谷奏×鳥羽絢美×西澤真耶×林田海里、伊藤まこと、BプログラムにMWMW×Von・noズ、yu-ki byeol(ファンファーレ、14、17、19日出演)、水越朋×宮崎あかね×古茂田梨乃、コーノ(ガウディーズ、12日出演・弾き語り)、Cプログラムに小林勇輝×吉田拓、W/ union、KENTARO!!、そして「さよならをするためのプログラム」に上村なおか、酩酊麻痺、IKKKKKI×Daoud bkdn、女屋理音×家坂清太郎、大江麻美子×岡田玲奈。

この中には、名前を知っているダンサーや公演を見たことのあるダンサー、そして知らないダンサーがいた。内容は謎だが興味を引かれ、劇場へ鑑賞しに行くことにした。

※各プログラムを鑑賞後に順次更新予定。

Cプログラム:どんどん濃くなる3組の並び

公演時間は約2時間で、3組の作品が上演された。

1組目は、小林勇輝×吉田拓。作品制作・出演は小林と吉田、振付は吉田だ。作品名は『Wooden Connection』

舞台の上手に薪が並べられ、下手には天井からロープがつり下げられ、ロープの先には薪などを数本固定できる輪が付いている。

薪を立てたり、小林が薪を傾けるのに応じて吉田が体を傾けたり、2人で走ったり、薪の上やロープにつかまって体のバランスを取ったりする。

リズムを刻む音に合わせて、振り子のように2人が呼応、反発し合う。微妙なバランスや関係を暗示する作品だ。

いかにも踊るという動作はほとんどないが、身体で影響し合う様子の表現は、まさにダンスと言える。

やや退屈ではあるが、緊張感のある作品だった。

2番目は、2020年12月に結成したというW/ union(ウィズ ユニオン)による『向こう宙シーン』。振付・構成:栗田紗采、出演:渡邊華蓮、中谷友紀、古村唯、栗田紗采。

木の枝の形のコート掛けか帽子掛けの器具を、病院で点滴中に移動するときに使う支え棒のように手に持ってダンサーが現れ、後ろに2人のダンサーが続く。3人は腰のロープでつながれている。そこに4人目のダンサーがスパッツ姿で登場。最初の3人が彼女にハーフパンツを渡して、彼女はそれをはく。

という意表を突くオープニング。

みんなカジュアルな服装で、ちょっと冒険に行きますといった趣。

音楽の音に合わせた俊敏な動きや、4人の息の合った、少しずつずらしていく動きなど、構成や振付の妙がさえる。壁に吸い付くような動きや、2人で両腕を絡ませて瞬時に外すといった、昔の手遊び(「みかんの花咲く丘」「線路は続くよどこまでも」など)を高度化したような動きも面白い。

バリバリ踊るシーンでは、4人とも心底楽しそうな表情で踊っているのが、見ている方としても楽しい。

カラフルな柄の布を継ぎ合わせた大きな1枚の布の中にダンサーが入り、生き物のようにうごめかせたりするシーンがクライマックスとなっていた。

先述の支え棒やこの布、さらにランプなど、道具の使い方も巧みだ。

ユーモラスで突き抜けた感じの若々しさを感じ(と言うと、こちらが年寄りみたいだが)、元気を勝手にもらった。

ラストの布、手、光の演出もよい。

3番目、トリはKENTARO!!『さよならをするためのプログレス』。もともとはtantanが出演予定だったが、メンバーの体調不良で出演キャンセルとなり、KENTARO!!が代打での出演になったとのこと。

KENTARO!!はダンスカンパニーの東京ELECTROCK STAIRS(2008~2017年)を主宰していたということで、つまりは本公演を提供しているシーユーインヘルの一員(主宰者?)ということか。

W/ unionのダンスも結構行っちゃっていると思ったが、KENTARO!!のぶっ飛び具合はその比ではなかった。

YouTubeチャンネルで動画が見られるが、これだとヒップホップ系か、と思うだけかもしれないが、作品としての生の舞台はもっとずっと「異様」だった。自分と同じ人間とは思えないというか、何この生き物?みたいな。

今回の作品では振付・ダンス・音楽(つまり照明以外のすべて)を担当。以前からソロでも活躍し、音楽・歌や作中テキスト(せりふ)も手掛けてきたという。

KENTARO!!のことは、今回の公演情報を見て、そういえば名前を聞いたことがあると思ったのだが、2008年に「横浜ダンスコレクションR」と「トヨタコレオグラフィーアワード」で受賞していたとは。もしかしたら1回くらい踊りを見たことがあったのだろうか・・・(思い出せず)。

フツーにかばんを持って歩きながら登場。録音音声でナレーションや自身のモノローグが入る。その音声にリアルの声によるせりふもかぶせて、ソロながら重層感を出している。

「アゴラ劇場で公演するために25回目のワクチンを打った」というような内容が最初のせりふで、冒頭からシュールな笑いを誘う。様子のおかしな(というかもはや妖怪?)な近所の人について語り、謎の探偵などに扮するなど、小芝居(と言うには妙に本格的?)が繰り広げられる。

その後音楽が入り、録音音声で「ダンスを始めないか?」というような言葉が連呼され、それに応じるように、いきなりスイッチが入って踊り出す。

ストリートダンスを基盤にしたスタイルなのは見てわかるが、もちろんその枠には収まりきらない。動きに粘りがあって、オンとオフの切り替えが神業的。

先の2組はダンサー同士の呼応が優れていたが、KENTARO!!は1人の身体の中でいろいろな部位が呼応し合っている感じだ。体の中に何か(何匹か?)飼っていますか?と思ってしまった。ストリートダンスに顕著な体の使い方、テクニックではあるかと思うのだが(そしてコンテンポラリーダンスでも実践されている)、各部位を別々に動かして離したりまたくっ付けたりといった動きを自在に行うことができる。

どういう訓練をしたら、ああいう体になり、ああいうふうに踊れるのか?パッと見は小柄で平凡な中年男性という風貌なのだが、まったくただ者ではない。

途中でシャツを脱いで舞台のそでに放り投げ、すぐにそでから赤いTシャツが飛んできて、受け取る。それを白いTシャツの上に着て、また踊る。

かなりたくさん踊っていたのではないか(汗びっしょりのようだった)。飽くことなくダンスを凝視していた。

当日パンフレット(ペラだが)に「創作を何となくしたくなくて、今も別にしたいわけじゃないんですが」と書いているが、いや作れよ!あ、違った、失礼。作ってください!と思った。こんなに面白くて不気味でどうかしちゃったのか?というパワーのあるダンス作品(演劇や音楽ライブでもある)を作れるのだから。

作ってくれたら、もっと見に行きます。

プログラム

■Aプログラム
横山彰乃×34423
池ヶ谷奏×鳥羽絢美×西澤真耶×林田海里
伊藤まこと

■Bプログラム
MWMW×Von・noズ
yu-ki byeol(ファンファーレ)14,17,19日出演
水越朋×宮崎あかね×古茂田梨乃
コーノ(ガウディーズ)12日出演・弾き語り

■Cプログラム
小林勇輝×吉田拓
W/ union
KENTARO!!(追加出演決定)
※出演を予定していたtantanがメンバーの体調不良によりキャンセルとなり、代打でKENTARO!!が出演。

■さよならをするためのプログラム
上村なおか
酩酊麻痺
IKKKKKI×Daoud bkdn
女屋理音×家坂清太郎
大江麻美子×岡田玲奈(追加出演決定)

公演日程

9/11(土) A 19:15
12(日) B 14:30 / C 19:15
13(月) A 19:15
14(火) B 19:15
15(水) C 19:15
16(木) A 19:15
17(金) B 19:15
18(土) C 14:00 / A 18:30
19(日) B 14:00 / C 18:30
20(月・祝) さよならをするためのプログラム 16:00

チケット

前売り券は売り切れ、当日券の有無はTwitter参照。

<8/11発売開始・全席自由>
・前売 3,000円 当日 3,500円
・2プログラムセット券 5,500円(30セット限定/日時指定)
・3プログラムセット券 8,000円(20セット限定/日時指定)
※『さよならをするためのプログラム』また、同一のプログラムに関してはセット券不可


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