『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』末永幸歩著
20世紀絵画や作品を紹介しながら、従来の美術の捉え方を刷新してきた考え方とその表現法を見ていく本。
どれも一般的な美術史の見方ではあるが、わかりやすく、読んで面白い書き方になっている。
各章で取り上げられている主な作品は次のとおり。
・アンリ・マティス《緑のすじのあるマティス夫人の肖像》(1905年)
・パブロ・ピカソ《アビニヨンの娘たち》(1907年)
・ワシリー・カンディンスキー《コンポジションVII》(1913年)
・マルセル・デュシャン《泉》(1917年)
・ジャクソン・ポロック《ナンバー1A》(1948年)
・アンディー・ウォーホル《ブリロ・ボックス》(1964年)
最後の解説は(解説者が有名人らしく、表紙にも名前が載っており、箔をつけるためと思われるが)不要かも。
絵の向こう側にある「イメージ」ではなく、自分の身体の動きによって紙のうえに刻まれていく「行動の軌跡」だった(p. 252)
子どもの絵の描き方を考察した部分だが、これを読んで、私は大人になってからもそういう落描きをすることがあるなあと思い至った。何かの形やイメージを表現するのではなく、鉛筆やペンが動くままに、手が行きたい方向に線を描いていく。最後に全体を整えようと思って線を足すと、必ず、足す前より出来が悪くなるというか、魅力が半減する(私の落描きに魅力があったとして 笑)。身体表現としての絵だったのか。大人でも、手を動かす心地よさから描く人は結構いるのかもしれない。
「真のアーティスト」(いわゆるアーティストに限らない)は、「課題解決」ではなく「価値創出」をしている人(p. 300)という結論は、(流行の定説に沿った)ビジネス書の趣。
皮肉は置いておくとして、従来の枠内でごちゃごちゃと何かを頑張るのではなく、その枠をはみ出たり作り替えたりすることはとても難しい。でもそういうことができるといいとは思う。