6.かみとこ
日々のエセー『まいにちとことこ』。
第6回は、「かみとこ」。散髪について。
6月の終わりに、髪を切った。1年3か月ぶりに。
ほんとは2か月に一度くらいは切りたい。けれど、ひとりで美容室に入るのが怖い。美容室とか洋服屋さんとか、他者が介在する美的な空間が苦手。
美術館とか博物館は平気。自分が美に関わることが苦手。ないかもしれない誰かのまなざしを勝手に利用・推測・解釈して、<場違いなんじゃないか>と落ち込んだり自分を遠ざけたりする。そもそもファッションとか、よくわからない(オシャレとかダサいとかなんかもっともらしくあるだけで、それにはたぶん基準なんてない)。
美容室に入ってしまえば、もう大丈夫。
待ってるあいだも切ってるあいだも、他者の、存在が疑われるまなざしをあれこれと想像してしまうから、同年代の男性美容師さんより、女性美容師さんのほうが安心する。ほんとは地元のおばちゃんに切ってもらうのがいちばんいいけど。鏡越しに目が合っても、話をうまく返せなくても、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、女性美容師さんのほうが気が楽。落ち着く。
そんなこんなで久し振りに髪を切って、長髪とおさらばして、しばらくは違和感。でも、頭の軽さには感動。髪が短いというのは、お風呂で髪を洗って乾かすときや食事のとき、たいへん楽でいい。
そのうち、その見た目にもその暮らしにも徐々に慣れていくだろうけど、そのころにはきっとまたぼくの髪はセミロングからロングに伸びきっているんだろう。
[2024.8.17]