22.にやとこ
日々のエセー『まいにちとことこ』。
第22回は、「にやとこ」。上戸と下戸について。
にやにやが止まらない。お酒を飲むと。
「さけとこ」にも書いたけど、ぼくは下戸だ。
だからといってまったく呑めないわけじゃない。かなり弱いというだけだ。
呑めないのと、かなり弱いのは、かなり違う。どちらがいいというわけでもない。だからこの場合、「雲泥の差」でもない。
ぼくは、かなり弱い。お酒に、ではなく、アルコールに。
お酒に弱いのとアルコールに弱いのも、かなり違う。「お酒に弱い」と言ったときの、ただたんにお酒が体質的に合わないだけでなく、お酒は全然呑めるけれどもそれで何かやらかすことも含む、あの感じ。
だから本当は、「お酒に弱い」には、「お酒(アルコール)に弱い」のと「お酒(という行為)に弱い」の、その両方が含まれる。
ここまでとんちみたいなことを書いてしまった。でも、本当のことだからしょうがない。
そんな、アルコール分解能力があまりない下戸のぼくは、お酒を体内に入れると、にやにやが止まらない上戸になる。
下戸なのに、上戸なんて、これまた不思議だ。
上戸は元々、お酒を酒豪のように呑めるひとのことを指す。転じて、「笑い上戸」とか「泣き上戸」とか言ったりする。本当に不思議だ。
ぼくの場合、「笑い上戸」や「機嫌上戸」とまではいかない。大笑いはそれほどしない。ただ、ちょっとおかしくなって、にやにやが止まらなくなるくらい。「にやとこ」だ。
「にやとこ」になると、人生がほんのちょっとだけ明るくなる。その代わり、その反動で、酔いが醒めるころには抑うつが始まる。しかもそれが、ひとり暮らしの家に辿り着くときだというから、よくない。
でも、(気色悪いかもだけど)「にやとこ」で済んでよかった。泣いたり喚いたりなんかして場をさまずに済むし、アルコール分解能力が低いおかげで記憶を飛ばしたり二日酔いになったりなんかもない。
にやにや上戸の下戸様様だ。
[2024.9.2]