36.やだとこ

 日々のエセー『まいにちとことこ』
第36回は、「やだとこ」イヤイヤ期反抗期について。

 得てして、幼少期の記憶というものは、今となっては、ほとんど残っていないものだ。

 かすかに残る記憶の糸を手繰り寄せていくと、ぼくは「イヤイヤ」と駄々を捏ねる子どもじゃなかったような気がする。おとなしかった。戦隊ごっこやおもちゃの車、外遊びよりも、積み木や絵本、おままごとが好きだった。

 反抗期にいたっては、ほとんどないに等しかった。誰かや何かにあたるのはなんかバカバカしいって思っていたし、たとえばママにイラッとすることがあっても(いい意味で)話しても通じない、無駄だ、そんな冷めた感じがあって、まんまと反抗する気力をア・プリオリに●●●●●●●奪われていた。

 だからか、ぼくは強く「やだ!」と口では言えない。「やだとこ」は存在しない。「そんなことない」「自分、我強いよ」「マイペースやん」って、ぼくの知り合いは思うかもしれないけど、本当は強く言えない。何かを否定的に言うときは、結構無理している。変に我慢強い。これが頑固たる所以。
 
 ちいさいころの傾向は、おおきくなっても引き継がれる。今後をおおきく左右する。だからって、焦ってなんでもかんでもやらせたりやってあげたりする必要はないよ。「良心」って、それとは関係ないしに「自己形成」されていくもんだから。

 子どもの自主性に委ねてみよう。イヤイヤにも反抗にも根気強く耳を傾けてみよう。それがなくとも注意深く目を向けてみよう。きっと、シグナルを出して、いつまでもママやパパを待っていると思うから。
 ぼくは、そんな子どもで、今は大人。自己形成の真っ只中。


[2024.9.16]