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雪国に住む樹木たちのしたたかな戦略

こんにちは。北海道の佐野です。
3月28日、暖かい陽気に誘われて、札幌市、江別市、北広島市の3つの市にまたがって広がる、野幌森林公園へ散歩に出かけました。

原生的な自然が残る野幌森林公園

野幌森林公園は、総面積約2000haで、一部は特別天然記念物に指定されるなど、開拓前の原生的な自然の姿を残しており、カツラやミズナラ、ヤチダモなどの広葉樹とトドマツ、エゾマツなどの針葉樹が混交する亜寒帯気候を代表する林相となっています。

根開きは春の合図

長い冬の間、雪に閉ざされていた森も、3月下旬になり、ようやく、木々の根元の周りから地面が現れてきました。根開きです。根開きは、北海道に春の訪れを知らせる合図ですね。根開きしたとたんに、次から次へと青々とした木々が起き上がってきました。春を待ちわびていたのは私たち人間だけではなかったんですね。

雪解けを待ちわびていた樹木たち

我先と起き上がってきたのは、エゾユズリハ、ハイイヌガヤ、ハイイヌツゲ、ツルシキミです。さて、これらの木ですが、雪国に適応して、独特の姿になりました。

雪国に適応した姿

雪が少ない地方であれば、太陽に向かって幹をまっすぐ高く伸ばしていった方が効率的ですよね。近縁種のユズリハやイヌガヤは10メートルもの高さに成長します。ところが、雪国北海道のエゾユズリハやハイイヌガヤなどは、幹を起こさずに地面に這うように伸ばします。さらに、エゾユズリハは、枝をたくさん出して、横方向に広がっていきます。このため、エゾユズリハの高さはせいぜい3メートルまでしか成長しません。

林床を埋め尽くすエゾユズリハ

場所によっては、写真のように、林床を埋め尽くすように広がっています。やはり、エゾユズリハも、次の葉に譲るのは春なんですね。雪の中でも葉っぱを落とさずにいるんですね。

イヌガヤも雪国では姿を変える

ハイイヌガヤも高くて2メートル程度でしょうか。針葉樹らしく真ん中の幹はまっすぐですが、斜め方向ですね。もちろん、雪の重みで倒れているということもありますが、夏の間も多くのハイイヌガヤは傾いたままです。

冬の間は雪の下

ハイイヌツゲやツルシキミも、エゾユズリハやハイイヌガヤ同様、冬の間は雪の中で寝そべっています。近縁種のイヌツゲやシキミとは姿を変えています。これらの樹木がどうしてこのような姿になったのかは、雪が降れば、無理せずにしなやかに倒れ、冬の間は雪の下でのんびり過ごすという雪国に適応した戦略を選んだ結果ですね。

雪の下は意外と暖かい?

この戦略の優れていることは、実は、雪の下は暖かいこと。無理に、雪の上に枝葉をさらしていると、氷点下10℃以下の極寒、さらには猛烈な寒風を受けることにもなります。雪国では、実は、雪の上よりも雪の下の方が居心地が良かったりするんですよね。いわば、雪は、樹木たちの布団のようなものですね。冬の間、雪の下でじっとしていて、お腹ペコペコ状態でしょうから、高木たちが葉っぱを広げていないこの時期、思い存分、太陽の光を浴びるチャンスですね。

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