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【オンライン講座】「身近なカエル、最前線!」~埼玉県の博物館 藤田宏之先生が語る

藤田宏之先生の原点は、地域のボランティアから

藤田宏之先生は、埼玉県川の博物館の学芸員。
元々会社員をされていたとのこと。その時代にされていた環境保全のボランティアがきっかけで今のお仕事につかれたそうです。

今回は、ご専門である両生類、爬虫類の中で、カエルが今置かれている状況についてお伺いしました。

調査を実施する藤田先生

アライグマの被害が深刻


今回はカエルの講座なのですが、なぜかアライグマの話から始まりました。
その理由は、アライグマの両生類への被害がどんどん深刻化しているから。

千葉県は早くから被害が発生していましたが、アライグマは夜間に活動し、ほとんど姿をみないためどのような被害なのか知られていないことが多いそうです。

日本国内へは1962年愛知県で確認され、国内各地で分布域が拡大したのは2000年を過ぎた頃だそうです。果実など甘いものや水生生物などを好む雑食性で、農作物や家屋に侵入する被害が問題となっています。

とても美食家なのですが、冬場は農作物が少ないことなどで、生態系被害が深刻化することがあります。その例として産卵にやってきたカエルやサンショウウオ、樹上の鳥の巣を襲うことがあるといいます。

特に、サンショウウオなどの両生類は深刻な被害を受けています。

両生類に深刻な被害をおよぼすアライグマ

アライグマを見分ける方法

アライグマと似ている動物にタヌキがいます。夜間みると、間違いやすいのでタヌキとアライグマの違いについても教えていただきました。主な違いは4つです。
1、耳 タヌキは耳の縁が黒くなっていますが、アライグマは白くなっています。
2、顔 マスクの模様が違いますが、はっきりと出ない個体もいるそうです。
3、手 タヌキと比べてアライグマの指は長くなっていて、とても器用です。
4、尻尾 尻尾が縞々なのはアライグマです。

アライグマは、タヌキとは違い寺院や家屋の垂直な柱を登ります。そのときに柱につく爪痕は、アライグマがいるかどうかを確認する方法の一つになります。

アライグマが増え続ける理由

アライグマは、繁殖力が高く年2回繁殖することもあり、メスが子供の面倒をしっかり見るそうで、生存確率が高くなることが増加している理由の一つだそうです。

また、学習能力が高い上に警戒心が非常に強く、タヌキに比べて交通事故で死ぬケースが少なく、道路で跳ねられて死んでいるところを滅多にみないそうです。

気づきにくいアライグマ

アライグマは夜行性のため、なかなかその存在に気づくことがありませんが、以下のような兆候があったらいる可能性

・天井裏でドタバタと音がする
・いちご、スイートコーン、ブドウなどの農作物が食べられる(葉野菜やジャガイモなどは好まないということです。)
・金魚やメダカが減る
・犬小屋からドッグフードを盗まれる
・両生類がかじられている
上記のようなことが起こった場合アライグマによるものの可能性があるそうです。

アライグマのカエルに与える被害

アライグマの被害は、両生類の中でもサンショウウオは深刻で、カエルはおもにアカガエルやヒキガエルで発生しています。
アライグマは、集まって産卵している両生類の成体をおもに狙います。
身近にいるニホンアカガエルは警戒心が強く、短期に集中して産卵するヤマアカガエルよりは被害は多くない方だそうです。

皮肉なのですが、美食家のアライグマにはサンショウウオの成体も卵もあまり口に合わないらしく、身体の一部だけ食べて食い残しが散乱していたり、卵が投げ捨てたような状態になっていることが多いのだそうです。

上記のような産卵時にアライグマが襲う

田んぼの変化がカエルを減らす

田んぼのカエルが減っている理由の一つに、そもそも田んぼの数が減ってしまっていることがあります。近年お米の消費率が下がっているため田んぼの数も減っています。これにより、田んぼを産卵場所や住処にしていた生物たちは数を減らしているのです。

また、田んぼの近代化もカエルの減少に繋がっています。田んぼを使用していない冬季に水を抜く乾田化や、U字溝の設置によりカエルが産卵、生活する場所は減っているそうです。

稲作の近代化により数が減っているトウキョウダルマガエル

外来生物、ヌマガエルの侵入

ヌマガエルは国内外来種として持ち込まれたカエルです。主に平地で生活し、成長が早いという特徴を持つそうです。産卵期の遅いこのカエルは、最近増加している乾田化した田んぼや遅植え田んぼにも耐えることができ、千葉県では利根川沿いの田んぼで増加しているそうです。
田んぼの近代化などで在来種のカエルが減少し、競争相手がおらず大繁殖しているということです。

分布を広げるヌマガエル(背中に筋があるタイプ)
分布を広げるヌマガエル(背中に筋がないタイプ)

田んぼのカエルが減らないようにするには

藤田先生によると、田んぼにおけるカエルの減少は止まることがないそうで、対策は少ないそうです。
今考えられている対策としては、田んぼをビオトープに利用する、クワイやサトイモなどお米以外の作物を育てるというものだそうです。
また、私たち一人ひとりができる対策としては、とりあえずたくさんお米を食べることだとおっしゃっていました。

アライグマから守るには

関東地方各地でトウキョウサンショウウオにもアライグマの被害が出ているそうです。捕獲が追いつかないアライグマからサンショウウオ守ろうとする場合、サンショウウオの産卵場所をアライグマの被害から回避できるような対策が必要になるそうです。藤田先生はDIYショップで売っている畔板(あぜいた)で、水路に蓋をし、サンショウウオの産卵場所がアライグマから見えなくする方法や、防鳥ネットを使用して侵入を防ぐ対策をとっているそうです。アライグマは水深がある場所に入らないそうで水深が浅く水に入りやすくなっている場所から対策するといいそうです。


市町村レベルの対策ではもう間に合わない

藤田先生いわく、アライグマ対策が市町村レベルで行われているのも防ぎ切れない大きな原因とのこと。各市町村の足並みがそろわないと捕獲圧が低い自治体で増えたアライグマが、減った自治体へ移動して捕っても捕っても減らないという悪循環に陥ります。
より大きな都道府県単位や国レベルの対策が必要だということでした。

知っているようで知らなかったカエルの生態
〜さすらう生き物〜

藤田先生のお話で興味深かったのはニホンアカガエルの生き方について。
そもそもニホンアカガエルというのは、環境の安定しない広い氾濫原(川が氾濫してできた湿地)に適応した生き物なのだそうです。
なので、一時的にできた湿地で卵を産んでも早く成長し成体になり移動していくようにできているいわばパイオニア的な生き物なのだそうです。
割と短命でどんどん世代をかえ、棲みやすい場所があればある程度離れていても移動し生きていくとのこと。
じつは、ずっと水がたまっているような安定した池などではニホンアカガエルは数が減ることもあるのだそうです。
一方サンショウウオは、水位や水温の安定した場所に同じ個体が長く生き、ゆっくりと世代交代をしていくのだそうです。
ニホンアカガエルとサンショウウオを比較して説明いただき、それぞれの生き方がよくわかりました。

カエルの中でも、最も分布の広いアマガエル。短期間に僅かな水があれば繁殖できる。

生態を正確に知ることの重要性

このたび、カエルの興味深い生態についてお聞きすることができました。

両生類は減っている、と聞いて全部がそうだと思っていたところもあったのですが、種によって大きく違うことがよくわかりました。

今回カエルの数を減らさないためには、その生態を知ることがどれだけ重要か分かりました。

リトカル代表 中田



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