見出し画像

『好意①』〜50歳道子の移動スーパー奮闘記〜vol.13

 午前の販売場所を周り、商品補充に店舗に戻ると、店長が搬入口で待っていた。

『電話でお客さんから問い合わせあったよ。15時50分に来る野口公園はどこですか?って。』

野口公園と言えば、今日の午後最後の販売場所だ。店長は続けて言った。

『一応説明したけどさ。おじさんだったよ。今日来てくれるんじゃない?』

おじさん…50代の店長がおじさんと言うくらいだから60、70代だろうか?

 道子はお客様を呼ぶ時、なるべく『お客様』と呼ぶようにしている。
 名前を呼びたいところだが、なかなか名前を聞くチャンスがない。翌週の注文を頼まれた時はメモを取りながら『お名前宜しいですか?』と聞けるので、少しずつ名前をゲットしている。あとはお客様同士が話しているのを聞いて
『あ、この人、佐藤さんって言うんだ。』とこっそりゲットする方法もある。3ヶ月経ったのでお客様の名前もかなりゲット出来てきた。

 本部の人や副店長が同行してくれた時、お客様を『お父さん、お母さん』と呼ぶのは違和感を感じる。道子の九州に暮らす母が『他人にお母さんと呼ばれるの気持ち悪い。アンタのお母さんじゃねーよ。と思う。』と以前言っていたのが頭の片隅にあるのだろう。確かに本部の人や副店長がそう呼びかけるたび『歳がほとんど変わらないのにお父さん、お母さんって…自分のことどんだけ若いと思っとるん?』と冷ややかな目でみる自分がいた。やはり、お父さん、お母さんと呼ぶのは20歳以上は年が離れている方が良いのではないかと思う。

 話はそれたが、新規の男性客が来てくれるのは楽しみである。男性だから数も少ないし、すぐわかるだろう。と道子は思った。

『午後は俺が手伝いだから、よろしくね』

ここのところ、週2回は同行してくれる店長が言った。

いいなと思ったら応援しよう!