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『運転』〜50歳道子の移動スーパー奮闘記〜vol.6

朝6時30分。携帯電話が鳴った。
窪田店長からだ。

『山下さん、連絡取れないから、もう来ないと思うんだ。島本 さん、木曜日のルートって先週行った?』

先輩の山下さんが急に辞めた。今は『飛んだ』と言うのだろうか。

先週の木曜日は入社日で初めて移動車に乗った日だ。行ってないと言えば嘘になる。
しかし、方向音痴で車の運転が苦手な道子はどこを走ったのかも全く覚えていない。
移動販売で最も必要なスキル、車の運転が道子は苦手だった。
『ナビがあるから大丈夫でしょ』
運転が苦手で方向音痴には救いになる言葉ではない。
『300メートル先右折デス』
300メートルってどれくらい?マクドナルドがある交差点左とか、ヤマダ電気右とか言ってくれないかなぁ。そう、地図上に自分を置くことができないのだ。ナビを見ながら運転も道子にとってはハードルが高い。

車の運転苦手なら移動スーパーなんてやってはダメだよ。

と言う声が聞こえてきそうだが、ルート販売ならどうにかなると思っていた。
覚えた道を走れば良い。裏道は使わず、ただひたすら主要道路を走るんだ。

しかし、今日は覚えてない道を行かなければならない。しかも時間通りに!
できません。とは言えない。

それよりも今すぐ出勤して商品の積込みをしなければ、出発に間に合わない!

道子は急いで家をでた。

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