外国語を習得した経緯(後半)

2日前に書いた、外国語を習得した経緯の後半を書く。

前回は、初めての短期留学でホストファミリーと生活するところまで書いた。

ご両親は優しかったが、怒られることもあった。

父親が元警察官らしく、ルールに厳しい人だった。初対面で年齢を聞かれ、20歳ですと言うと、「そうか、ならこの土地では酒は飲めないからな。買うのもダメだぞ」と釘を刺された。

20歳になりたての時だったので、ビールがようやく美味しく感じ始めてきたくらいの感覚だった。お酒も弱く、ビール2杯ほどで結構フラフラになるので、日本でもあまりお酒は飲まなかった。なので、特にそれはダメージにはならなかった。

またある夜、決められた時間にシャワーを浴びていると、浴びた後にすごく怒られた。どうやら時間を15分間違えていたようで、濡れたままバスルームから閉め出された。

「脱衣所にあるドライヤーを使いたいんだけど、、」と母親に相談すると、「あなた髪短いんだし、自然乾燥しなさい」と言われた。泣く泣く予備のタオルで拭きながら、課題をやった。

ステイしていた家の玄関の扉は、気をつけて閉めないと風圧?の関係で勢いよく閉まる。

大学が終わり帰ると、2階で母親が「なんでうるさくドアを閉めるの?びっくりするし痛むからやめなさい」と言われた。

「わざとじゃないんです。ドアが風で勢いよく閉まって、、」という文が、英語で咄嗟に出てこなかった。悔しかった。

けれどそれらを除けば、生活は楽しかった。夜は毎日母親かその娘さんが温かいご飯を作ってくれる。何か手伝えませんか?と聞いても「テレビでも見てゆっくりしててね」と言われた。

食卓では、英語のことや大学のことを色々聞かれた。またハワイの印象についても聞かれたので、天気もいいし人も優しくていい土地ですねと答えた。

1ヶ月のハワイ生活はあっという間に終わった。特別仲のいい友達ができたわけでもないし、観光スポットに全て行けたわけではなかったが、日本と違ってじめっとした暑さはなく、カラッとしていたし、スコールの後に見る虹が美しかった。

けれど、たまに日本に帰りたくもなった。前半で写真を載せたアラモアナのビーチで座って海を見ながら「日本のみんなは元気にしてるかな、、日本食食べたいな、、」と思った。

帰国して、予定通り部活の合宿にも参加することができた。

部活では、自分の他にもう1人留学に行っている友達がいた。

彼女は同じ外国語学部のフランス学科。半年ほど、フランスに留学に行っていた。

あまり物怖じしないタイプで、やりたいことにはどんどん挑戦していく勇敢な人だった。フランス語だけでなく英語も少し話せていて、尊敬していた。

彼女はその合宿には参加していなかった。また部活動のメイン活動であるバンドにも3年生の時は参加しなかった。その分、日本やフランスでたくさん勉強したんだと思う。

帰国してしばらく経ち、3年の秋から卒業まで所属するゼミの募集が開始された。

ゼミは、日本人の先生と外国人の先生が3:7くらいの割合だった。高い確率で、外国人の先生と話すことになる。

自分が選んだのは、イギリスの文学史を専攻するゼミだった。前半でも書いたハリーポッターで海外の小説に触れて興味があったし、他にも大学の前半でコナンドイルの小説を読んだりしたので、イギリスの文学が持つ独特な魅力について学びたくて選んだ。

ゼミは12人構成で、男性3人、女性9人だった。幸いなことに、友達も何人かいたので、居心地は悪くなかった。

そこでは色々な本を読み、文脈や難しい単語の解釈について話し合った。先生自身もちょっとした作家業をしていて、先生の作品も読んだ。

また、会話の練習にも励んだ。先生が、発音を鍛えたい人は、私のオフィスに来てくださいとゼミ終わりに告げた。

先生はイギリス英語を話すアジア系の人だった。

自分は当時は、漠然とイギリス英語を習得したいという気持ちだけがあった。ハリーポッターの登場人物、ビートルズ、オアシスのような英語を話したいと思った。

オフィスでは、渡されたA4の紙に書いてある英語の文章を、何も意識せず読んでくださいと言われ、音読した。

読み終わると、「あなたはどちらかというとアメリカ寄りのアクセントになっています。もしイギリスの話し方をしたいなら、母音の発音をこうしましょう」と教えてくれた。

スピーキングに関しては、今はなんだかんだほとんどアメリカの発音で話している。傾倒していたイギリスの文学や音楽はあったものの、インプットしていく英語はアメリカのものが多かったので、その発音やアメリカでしか使わない単語などに慣れた。

大学4年になると、ゼミ以外は単位を取り終えているので、登校も週に1回になった。

部活はあったものの、就活もしていたし、落ち着くまでは部室にもライブにも顔は出していなかった。

必然的に、英語のインプットとアウトプットの時間が減った。なので、高3の時に読んだハリーポッターの続きを読み始めた。

1冊目で慣れたのもあり、2冊目の秘密の部屋は割とスムーズに読めた。賢者の石では初見だった用語も、2冊目以降もたくさん出てくるので、単語を少しずつ覚えていった。

また、短期間だが英字新聞も取った。書いてある内容は日本の新聞と変わらないが、言葉が英語になっている新聞。

ニュースや新聞で使われる表現は、日常会話のそれよりも堅苦しい言葉が多い。政治や経済の用語もたくさん出てくるので、おそらく全くの初心者にはハードルが高い。

そうやってインプットの量を自主的になるべく増やしながら、アウトプットもしていった。

ほとんどがライティングだ。大学生の大半が書くことになる卒論が、もれなくうちの大学にもあった。

英米学科では、卒論を英語で書かなければいけなかった。A4で最低15枚から。

それまでは、必修のライティングの授業や英語の授業の期末レポートなどで、せいぜい2〜3枚書くくらいだった。それだけでも、かなり疲れる。

4年生の時間をほぼ全て使って、15枚超えの英語のレポートを書くのは、なかなか挑戦的だった。

テーマは、ハリーポッターの商業化の経緯とそれが生み出した経済効果についてにした。

映画はもちろん有名だし、小説も日本だけでなく世界中で翻訳され読まれている。その影響と効果について、データを分析したり自分の見解を書いた。

大学の図書館で、関連の英語の本をたくさん借りた。

図書館は割と古めな印象だったが、地上3階と地下2階があり、特に地下の棚は洋書ばかりでほとんど人がおらず、海外の大学に彷徨って来たような感覚になった。

また、個人で研究されている方のサイトにお邪魔して、データを参考にさせてもらうこともあった。

日本語の卒論でも、論文の最後に「引用」の欄を作り、参考にした本などを書くと思う。自分の論文でも、そこにexcerpt(注釈)として、本や個人的にコンタクトした研究者の名前を書いた。

最終稿提出前に、ゼミ生が個別でオフィスに呼ばれて、論文について先生と話し合いをした。

自分のケースでは、論文のテーマ自体はいいものの、肝心の文章がなかなか読みづらいという指摘を受けた。

ライティング歴は4年ほどだったが、まだGoogle翻訳にはかなり頼っていた。「こんな表現、普通の論文では使わないよ。このままでは単位はあげられないよ」と指摘されたので、より適切な単語を1つずつ探した。

1月に、合計18枚になった論文を提出した。先生のオフィス前にあるポストに、「問題ありませんように!」と願い投函した。

結果は、5段階評価のうちBだった。完璧ではないが、量も申し分ないし、表現も良くなったとのことだった。

そうして、凄まじい量のインプットとアウトプットを課された大学生活が終わった。

大学で英語に触れた時間は正確にはわからない。

おおよその概算をすると、課題と授業を含めて1日に5時間ほどは触れていたと思う。それが週5日。1ヶ月に20日。

5×20=100

1ヶ月に約100時間。大学の休みは長いので、学習期間はおそらく10ヶ月ほど。

100×10=1000

それが4年間。

1000×4=4000

約4000時間。4年生は授業はほぼなかったので、実際はもっと少ないと思う。でも多分、3000時間くらいは勉強したと思う。

加えて、高校までに勉強した時間を含めると、

4000+約1000=5000時間

くらいになると思う。最も高校まではアウトプットはしていないので、足された1000時間はインプットの時間だ。

大学を卒業してからは、新卒で中小のメーカーに入社した。

そこでは、海外営業職を志望した。就活生がよく面接で言う強みの中に、英語力も入れていた。

ただ英語力があると自称しても説得力がないので、TOEICというビジネス英語力を測る試験を、3年生の秋に受けた。

その時のスコアは、865点。

当時の成長過程の実力を考慮すると、まあまあ頑張ったほうかなと思う。

英米学科の同級生は、ほぼみんな900点を超えていたので、追いつけない悔しさはあったが。

それでも、取得したスコアは英語力の証明になったらしかった。

その会社の海外営業職は、国内営業で実績や成果を出して、優秀だと認められた人が配属されるらしい。

なので面接でも、「海外営業を希望するなら、まず国内の営業で大阪や東京に行くかもしれないけど、それはいいの?」と聞かれた。

都会に出るのは怖かったが、やりたい仕事ができるならなんでもいいと思い、承諾した。

入社後半年の実習期間をあけて配属されたのは、希望していた海外営業の部署だった。

人事の話によると、就活の時からのポテンシャルと、高い英語力が役員陣に評価されたらしかった。

英語力が評価されたようで、嬉しかった。

そこからは英語を使っていろいろな仕事をした。

まずは1年半、部内の貿易事務部門に配属され、貿易のルールや用語ややりとりの仕方を学んだ。

国を超えて取引をするので、用語も国際標準の英語が使われる。

貿易事務だけなら、たぶんそこまでの英語力はいらないかもしれない。

しかしその部門では、海外のメーカーの担当者とメールで出荷スケジュールの調整をする。

また、海外からの来客時には、挨拶などの簡単な会話やホテルへのピッキングもしていたので、そこそこ英語を使う場面はあった。

1年半後、今度は同じ部署の海外営業部門に配属された。

この部門が、実際に海外と商談で取引をして、売上を上げる役目を持っていた。

うちの会社は、売上の半分近くを海外への輸出が占めていた。

また海外営業部門は上司と自分含めて8人で、全員が複数のお客様を担当に持ち売上を上げていた。

自分が担当したのは、台湾、オセアニア、一部アジア、サウジアラビア、ヨーロッパ、アフリカだった。

国によっては、間に日本の商社が入るので、基本的なやり取りは日本語だ。自分の場合は担当の半分ほどがそうだった。

残りの半分は、英語でのやり取りになる。商談はもちろん、売った後のアフターサービス、クレーム処理、トラブル対応は全て英語で行った。

最初から全てを理解することはできなかったので、時間をかけて少しずつ用語やよく使う表現を学んだ。

また3年目からは、子会社の財務諸表を扱う仕事もした。

財務諸表とは、会社の純利益や固定費、当期利益などを科目ごとに仕分けた表、売掛金や買掛金の残高、固定資産の額をまとめた表、収益に対してかかる費用や減価償却費などのお金の流れを書いた表のことを指す。

…今自分で打ったこの文面を見ても軽くアレルギーを起こしそうだが、これらの数字が英語で載った表が毎月送られてくる。それを見て、固定費や減価償却費、科目ごとの売り上げ計画の調整をする。

任された当初は、本当に何の表なのかさっぱりだった。渡した上司(課長)もよく知らないらしい。部長だけがその表を読めるので、部長と前社長と自分の3人と、海外の子会社の役員をzoomで繋いで、web会議をした。

意見を求められても、ろくに発言はできなかった。まず表の意味がわからないからだ。用語も、数字の推移の理由も何もわからない。

けれど会議は、それらの用語をバンバン使いながら話が進んでいく。

得意な英語の仕事をしているはずなのに、会議が終わる頃には毎回脳が疲れ切っていた。

また、少しM&A関連の仕事もした。

M&Aとは、Merger and Aquisitionsのことで、簡単に言うと企業の買収とそれに付随する手続きや業務のことを指す。

子会社が、ある会社の買収の検討をしていて、その相談を定期的に日本側にしていた。

財務諸表の仕事で少し会計用語も頭に入ってきたが、M&Aはさらにその上をいった。

出される表がとても複雑で、もちろん英語なので完璧な理解はできない。

30枚ほどの提案資料を、役員に説明するために和訳させられた時もあった。

比重としては通常の海外営業よりはるかに大変だったが、今思うとあれはあれでいい経験ができたと思う。

それらの仕事を6年して、昨年の5月に退職した。

そこからは、いろいろな道を探した。また海外営業につくか、フリーランスとして翻訳家になるか。道はいろいろだった。

まずは、ちゃんとしたインプットを続けようと思い、辞めた次の月からTOEICの勉強を久しぶりにした。

TOEICは、感覚としては受験勉強に近い。出される用語も限られているし問題形式も変わらないので、傾向と対策を徹底して勉強すれば、全くの初心者からでも700点くらいは取れると思う。

自分は、やはり大学の頃取れなかった900点を目指して勉強をした。

先月試験を受けて結果が出たが、875点だった。

自己ベストは出せたが、900点には届かなかった。

けれど、自信にはつながったので、いい経験だったと思う。

一応、ここまででざっくりと自分の英語学習の歴史を語った。

もし英語に興味がある、あるいはこれから仕事で英語を使うから学ばないといけない人には、こうアドバイスしたい。

インプットもアウトプットも、恐れずにやること。それを続けること。

学生の頃から英語が苦手で、アルファベットにすら抵抗がある人もいるかもしれない。

けれど最近は本当にいろんな本が出ているし、いきなりビジネス書を読めなくても、アメリカの子供が読むような児童文学から入ってもいい。

リスニングも、今はpodcastやYouTubeでたくさん英語のコンテンツがある。

それらを活用して、1日のうちに少しずつでも英語に慣れることから始めたらいいと思う。

慣れてきたら、アウトプットの練習もする。
ライティングに関しては、日記やブログなどから始めるのがいいと思う。

学校で習った文法となんか違う、、とか、この単語のニュアンスあってるの、、?とか、最初のうちは気にせずどんどん書いていったらいい。

完璧じゃなくても間違っていても、発信しないと伝わらない。

スピーキングに関しては、今はオンライン英会話が良いと思う。

スマホさえあれば、ネイティブの人たちと30分や1時間、話す時間ができる。

自分も何回かやったことがあるが、みんな丁寧だし、間違ったところは指摘してくれるし、完璧な英語じゃなくても「それってこういうこと?」と、ニュアンスを汲み取ってくれることが多い。

自分の場合は最後に「自分の発音や会話はわかりやすかった?」と聞いていた。

ここが良かった、悪かったなどの細かいフィードバックをくれるので、勉強になった。

すごく長くなりましたが、少しずつでも続ければ、道は開けます。

習得できたらそれは仕事で役に立つだけじゃなく、日本の外の文化や歴史や素晴らしさを知れる良いツールになると思います。

やれることからやっていきましょう。

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