かわいそうな男
ニックドレイクの2枚目のアルバム『Bryter Layter』を聴いた。相変わらず、ニックドレイクは囁くような歌声だ。ただ、ファーストアルバムとは音楽性が少し変わっている。ライナーノーツにも書いてある通り、ジャズ、バロック調、トラッド風と前作に比べ、色彩が豊かになっている。オシャレな音になっているのだ。僕はどちらかというとファーストアルバムのような素朴さの方が好きだ。
ニックドレイクの曲は夏には向かないかもしれない。秋とか冬に向いていると思う。歌声にしても、歌詞にしてもかなり繊細なのだ。僕は最近ボブディランをよく聞いているが、ボブディランには力強さがある。何かを語らなければならないという使命感のような、何かを背負っている感じがボブディランからするのだ。それに対して、ニックドレイクはかなり繊細な印象だ。「俺は繊細なんだ。誰にも俺の苦しみは分からないから放っておいてくれ」というような印象を受ける。ボブディランにはキメの曲がある。例えば、「風に吹かれて」であったり、「ミスタータンブリングマン」であったり、「ライクアローリングストーン」であったり、ここぞというときにキメてくる曲がある。ニックドレイクはそういうキメの曲がない印象だ。どの曲も薄っすらと通奏低音のように暗さが続く。
セカンドアルバムの8曲目に「プア・ボーイ」という曲がある。ボサノヴァっぽい感じでおしゃれな曲なのだが、詩の内容はとても暗い。鬱の人の心境を語っているような内容なのだ。今僕は鬱状態にあるので、この曲が刺さった。やはり僕はこの詩にあるように、哀れな人だ。悲しんでばかりいる。そして、健康を気に病んでいる。僕は何か重大な病気なのではないかと定期的に不安になる。こういうのを心気妄想というらしい。異常なまでに気にしている。そして、参ってしまう。ああなんて可哀そうなんだろう。