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別れた男について、母に相談した話

※この記事では人の生死を茶化すように感じる表現が出ます。苦手な方は読まないでください。



私は根本的にゲスい男好きである。
友人知人のパートナーを除いた周囲の男性は全て恋愛対象だった。
未婚、既婚、独り身、まったくこだわっていなかった。

私は男女関係が始まる初期段階特有の駆け引きが大好きだった。
自分に彼氏がいる状態の時でも、チャンスがあれば平気で浮気していた。
浮気がバレたことは一度もない…はずだ。

私に好意を向ける男性の中で、私が一番居心地良く感じられる男性を彼氏のポジションに置いた。
浮気相手には彼氏がいることを隠さなかった。
そのままセフレ状態が続く男もいたが、浮気相手の方が私に対する忠誠心が高い場合は平気で乗り換えた。

私は彼氏のことも、浮気相手のことも、等しくちゃんと好きだった。
彼氏から振られることもあった。
浮気相手が彼女を作って離れて行くこともあった。
その時はそれなりにショックも受けたし、涙を流したこともある。
ただ、執着したことは一度もなかった。
正味、次の日には忘れていた。
なんなら都合よくセフレに収まることさえあった。

夫と結婚するまでの交際期間は6年だった。
その間も常に複数人の男性と関係を持ち続けていた。
でも、夫以上に居心地の良い男性はいなかった。

私は28歳になっていた。
私はプロポーズされたことをきっかけに、全ての男たちとの関係を清算した。
ただの恋愛と結婚は別物だと理解していた。
その覚悟は自然にできた。
何人か縋ったり脅したりしてくる男がいて、結婚がご破算になるのではないかとヒヤヒヤしたが、無事に夫との結婚は成立した。

もうすぐ結婚して10年になる。
結婚してから8年の間も、なんとなくいい雰囲気になりそうな男は何人かいた。
しかし私は行動にうつさないようセーブしていた。
また、既婚者である私に実際に手を出してくる男もいなかった。


3年前、私は職場で8歳年下の独身男性と出会った。
彼は見た目がカッコよくて、笑顔が可愛かった。私は彼のファンだった。
彼は眩しく輝いていた。
はじめは目の保養として彼を遠くから見つめていただけだった。

でも、いつからか彼の方から私へのアプローチがはじまった。
歳上をからかって遊んでるんだろうと思ったが、久しぶりに味わう恋愛初期のときめきが楽しかった。

突っつけば思った通りの反応が返ってくる。
もっともっとと止められなくなった。
結婚する時にした覚悟を私は簡単に捨てて、あっという間に男女の関係になった。

私は経験上、この関係を終える時に潔く身を引ける自信があった。
彼が本気で私に惚れるはずもないし、長くは続かないと思っていた。

しかし、全て予想に反した。

関係は2年も続いた。
途切れることの無いLINE、毎日の長電話、ごく短い時間での逢瀬、毎週のデート。
そのほとんどが彼からのお誘いだった。
彼は本気で私に惚れていた。
私は今までひとりで過ごしていた全ての時間を彼に費やした。
彼と過ごす時間は、本当に楽しかった。
私にとってはじめての1:1の恋愛だった。
はじめて本気の恋をした。

今年の6月末、私と彼は関係を清算することになった。
切り出したのは彼からだった。
彼は別れる時に「お互いのため」というような私に寄り添ったような耳障りの良い言葉を吐いたが、事実ベースで見ると他の女に乗り換えたかったようだった。
別れ話が出てから今日まで、私はほぼ毎日泣いて過ごした。
復縁なんて絶対したくないし、恋心なんて無い。
それなのに彼への執着がとてつもなかった。

彼の態度もしばらくは曖昧なものだった。
まだ私に未練があるような態度。
でも、実際はその女とずっと一緒にいる。

悔しくてたまらなかった。



この記事を読んで、ふと思い出したことがある。

まだ私が不倫を始める数年前の事だ。
実家で母と一緒に母の若い頃のアルバムを見る機会があった。
若い頃の勤め先での集合写真のページで母は手を止めた。

その中のひとりの男性を指して、母は言った。
「お母さん、お父さんと婚約してるのに、この人とも付き合ってたんだよ〜」
全く悪びれていなかった。

さらに続けた。
「この人ね、悪いことしたから死んじゃった」

コイツ…!!娘の前で何言ってんだ!!
悪いことしたって?お母さんも同罪じゃん!
というのが率直な感想だったが、まぁまぁ重ためな話なのに、あっけらかんと笑って話す母のことが可笑しかった。

でも、カッコイイとも思った。
きっと母にとってすごくつらい事だったはずだ。それを乗り越えて、今を生きている。
(……もしかしたらただのサイコパスなだけかもしれないけど。)

さらに、この母にしてこの娘ありだな、とも思った。きっと浮気性なのは血筋だ😂


ちょっともう、彼に執着するのも疲れたし、占い師に相談もお金がかかるし。
もうすぐ40歳になろうとしてるのにアレだけど、母に甘えてみることにした。

電話をかけると「久しぶり!元気にしてる?」と母の優しい声がした。
「いや〜、あんまり元気じゃなくて…実はさ、夫以外の好きな人が出来ちゃって」と切り出した。
母は驚かなかった。
「そういうこともあるよねぇ、相手はあの職場の可愛い男の子でしょ?そうなると思ってたよ。」と笑われた。

母が受け入れてくれたことに安心した。
失望されたり怒られたりしなくて良かった。

私は
・つらくて仕事を辞めようと思っていること。
・私の恋愛遍歴と初めての恋だったこと。
・乗り換えられて悔しいこと。
・怒りと執着で苦しいこと。
全て打ち明けた。

母の第一声は意外なものだった。
「いるんだよねぇ…周りにいる『さみしい男』を全部かっさらう女の人って」だった。

確かにそうだ。彼の乗り換え先はまさにそういう女性だ。
職場にいる彼以外の『さみしい男』も彼女に好意を向けている。
また、彼女には複数人の彼氏がいるらしい噂も聞いている。

フォローしておくと、私は全然彼女のことを嫌いじゃない。むしろ好きだ。
明るくて、優しい。女手ひとつで3人の子供を育てあげていて尊敬もしている。

「はぁ?!この私がそんな女に負けたってこと?!」
優しく受け止めてくれた母に思いっきり反発した。
母は
「違うよ。負けたのは彼の方。彼女のエネルギーに当てられて、たくさんいるメンズの一員に成り下がっちゃったんだよ」
「そういう女の人って、幸せになるための手段が私たちとは違うからさ、勝負になんないんだよね。…というか、その土俵に上がったらあんたは負ける」
「見ててごらん。絶対、長く続かないから」

あー…確かに。それはそうかも。

母は続けた。
「彼、結婚して自分の家庭を持ちたいって言ってたんだよね?それなのに、次に選ぶのが若い女の子じゃなくてあんたより歳上の彼氏持ちのシングルマザーなんだよ?完全に自分を見失ってるじゃん。本当にまだ好き??」

…いや、もう好きではないのは自覚してます。

さらに続けた。
「くだらないごっこ遊びをしてる連中に対して本気でぶつかって、わざわざ負けに行って、自分の価値を下げる必要ある?」
「そんな連中のために仕事辞めるとか、人のせいにして逃げるのはあんたのポリシーに反してるでしょ。もっと自分を大事にしなさい。」

じゃあ、私と彼の2年間もくだらなかった…?

「概ねそうだね、先が無い中での遊びだね。あんた自分で言ったよ『若い頃は男を取っかえ引っ変えだった』って。彼は今、その時期なんだよ。覚悟を決めれない若者なの!」

確かに私は恋愛と結婚は別物だと思って生きてきた。
…いや、違うな。
恋愛の延長線上に結婚があると思っていた。
私が今までしてきた恋愛は全て、結婚相手を探すためのものだった気がする。
だから彼氏はいつでも一番居心地がいい男性を選んでいた。
現に、結婚生活は今の夫で満足している。

あ〜〜、もしかしたら大恋愛の末に結婚ってのに憧れてたのかな…??
なんにせよ、彼が相手では今の落ち着いた、居心地の良い環境は手に入らない。
それは付き合っている時からそう思っていた。

母にとっては、人生を共に歩む覚悟ができない相手は全て遊びということらしい。
言葉の聞こえが悪いけど、他に適切な言葉が浮かばないから仕方がない。

「でも、彼が1:1でぶつかって来てくれたのは良かったね。あんたがちょっとだけ覚悟を滲ませたから逃げちゃったけどさ。10年後には大事な思い出になってるよ。」
「本気で愛して遊べて良かったじゃん!」


私はこの年齢になっても、親離れできていないことを恥ずかしいと思っている。
でも、今日は母に打ち明けることができて本当に良かった。
母は私を良くわかっている。
私の立ち直らせ方を知っている。

私は基本的に私こそ至高だと思っている。
人生のテーマはカッコイイかどうか

実は、彼と私はよく似ている。
彼の一人称は「俺様」で、自分以外の人間のことを「凡人ども」と呼び、自虐や他人を落とす時の決めゼリフは「ソレってダサくね?」だった。

彼は私が持っていない、私が欲しいと思っている能力をたくさん持っている人だった。
彼が引っ張ってくれたおかげで、できるようになったことがたくさんある。
結婚して以降、表に出し切れなかった女性としての魅力も存分に発揮することができた。

もー……恥ずかしいけど言っとこう。

彼は私のことを「女神」と呼び、私こそ至高であると表現していた。
私は私以外の人間にそう思ってもらえることが、めちゃくちゃ嬉しかった。
多分、彼が欲しい何かしらの能力を私が持っていたのだろう。

結果的に、私は彼からうける影響が大きすぎて、私こそ至高を見失った。
私の中で彼こそ至高になってしまった。
私は思いっきり彼に依存した。


母は、今の私がどれほどみじめで、カッコ悪いか言葉で教えてくれた。
そして、そもそも私こそ至高であることを思い出させてくれた。

好きだと勘違いしながら、嫉妬に耐えながら傷が癒えるのを待つか。
怒りに身を任せて彼を憎みながら忘れるか。
迷っていた。
どっちかって言ったら後者かなって思ってた。

でもどちらも違う。
私には彼を高みから見下ろすのが合っている。

母は最後にこう言った。
「次を探せばいいじゃん!きっと見つかるよ。
でも、旦那さんも大事にしてね!」

それを聞いて、あー…母も経験者だな。
と思った。
聞かなかったけど、これは完全に遺伝だと思う。

私の母は私が思っていたよりもずっと強い女性だったようだ。
長い人生の中で私が知らない経験をたくさんして、強くなったんだな、きっと。

改めて母を尊敬した。



最後に、大好きだった彼へ。

ごめんね、覚悟もない若者に全力で寄りかかって。疲れちゃったよね。
黒い服がグレーに見えるくらい光ってたのに、今、全然光ってないもんね。

光ってない俺様は私から見ると全然魅力的じゃないよ。
はやく元気になってね。

本当に楽しかったよ。
ありがとう。さようなら。




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