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光の王編8


光の王編8 細く、早く、樹。  ボス・デビルは幻術、最果ての森をまた使う。 苦し紛れだった。ドラグーンの魔法が突如消える。何が起きたんだ? 一つの木に、命が眠っている。光の王ウィルは耳を樹に当てた。 静かな鼓動が聞こえる。上を見るとキツツキが懸命に穴を掘っている。その正確さに、置いていかれて聞こえない。命の音、闇の風、生きている不思議。ウィルはここで随分休んでいる気がした。待ち合わせのように息をひそめた。 ボス・デビルの幻術の中に居る・・・。 誰か居る・・・。スズメ。リス。黄色と白の光が森の中心に差し込む。リスもスズメも、その明るい所に向かった。岩があって灰色。神秘的。リスは岩の上で静かに眠っている。温かい気がした。温かい気がしたんだ。間違いない。何かがそこにある。光の王は手で岩に触れた。 「僕は今まで特別だと思っていた。こんな健気な動物でさえ、大切に感じる。」 スズメが飛んでいる。光の王の頭に着地した。 「こんな平凡な僕は何を志していたんだ。」

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