もう、朝日が見える頃だ。 ケインとフロルは眠かった。睡眠を全く取っていなかったから。 秋の風が冷たい。とても寒く感じる。レイナも寒かった。 フロルとはぐれた馬がさみしそうに、こちらへ近づいてきた。 「助かった。」レイナは言う。 レイナ、フロル、ケインは馬の上に最後の力を振り絞ってまたがった。「妖精の砦へ急ごう。」 30分後、なんとか妖精の砦に着いた。 イリデッサが心配そうな顔をしている。 「大丈夫ですか。レイナ様。」 「私含めて、もうボロボロよ。早く防寒着を。」 「わかりました。すぐに用意します。」 イリデッサは、防寒着をすぐに持ってきた。 三人は防寒着を来て、たき火の前で眠った。 他の妖精たちは、眠っている客人を温かく見守った。 三人の勇者の休息。 睡眠を終えると、三人は意識や感覚が研ぎすまされていた。 「起きた?」フロルはケインに言う。 「おう、起きたぜ」 「これから、王都スカイシティに向かうけど、心の準備は良い?」 レイナは二人に言葉を投げる。 「良いに決まってる。」ケインは頷いた。 「準備万端」フロルは言う。 馬に三人は乗ってスカイシティを目指した。 「翼で空を飛ぶのも良いけど、馬もやっぱり良い!!」 レイナは大きな声で言った。 3時間後、三人はスカイシティにたどり着いた。 スカイシティ。王都は美しい町だった。 鳥が飛び交い、家が建ち並び、酒場は賑わい、商人が食べ物や珍しい物を売ってる。 三人は目の前にある石像を見つめた。 天空神ウーラノスの石像だ。 レイナは跪き、両手を添えて祈った。 ケインとフロルは空を見上げた。翼で飛行している人がいっぱい居る。僕らも空を飛びたい。空を飛ぶってどんな感じなんだろう? フロルがそう考えていると、レイナは話す。 「私の大好きなジェシカお婆さんの家に行こうか。私の翼が弱ってるから。」 「わかった。」フロルは了解した。 「おう。」ケインも同意する。 小さな路地を行くと右に曲がる道があって、そこをまっすぐ行くと ジェシカの家に着いた。 表札にジェシカと書かれてる。 「ジェシカさん!いますか!」 「ここに居るよ!その声はレイナかい?おおおおお、レイナ帰ってきたか。待ってたよ。」 「ジェシカさん。私の翼の手当てをお願い出来ますか?」 ジェシカさんは優しそうなお婆さん。 少し小太りで優しそうな目をしてる。 「あんた、大分無理したみたいだね。大丈夫、薬を付けて水で消毒すればすーぐ良くなるよ。」 「それとなんだけど、その二人の男は誰?レイナちゃん。彼氏でも連れて来たのかい?」 「ちがうってば!!!」レイナは、顔を赤くする。 「私を救ってくれた命の恩人!!」 「名前は?」ジェシカはレイナに言う。 「頭に鳥の羽飾りがある方がケイン。いっぱいアクセサリーを付けている方がフロルよ。」 「そうか。そうか。長旅でしょう。ここでゆっくりしてください。」 ジェシカはケインとフロルに優しく言った。 「早く、ジェシカさん、私の翼に薬塗って」 「今、塗るわ。」ジェシカはレイナの翼を消毒して、薬を翼に塗った。「明日には傷は治ってるわ。さて、フロル、ケイン、何があったの? レイナを苦しめたのは誰?」 フロルとケインは声を出そうとした。でもすぐにレイナが答えた。 「赤いドラゴンよ。」 「じゃあ、レイナちゃんは妖精の森まで逃げたのかい?あの冷酷なルドルフ王がよほど嫌か。」 「なんでお父様は、あんな人を選んだの?あの人は私が選んだんじゃない!」 「よーくわかるよ。レイナ。」 「私、逃げたの。妖精の森までね。もう空の王国の王宮で暮らすのもう嫌だよ。だから・・・・。」 「もう言わなくいいよ。レイナちゃん。」 「え?」 ジェシカお婆さんはレイナを抱きしめた。 「私、本当に苦しかった。」 「わかる。よーくわかるよ。今、シチューを作るから、待ってちょうだい。元気をお出し。」 1時間後、ジェシカお婆さんのシチューは完成する。 昼食の時間がやってくる。 フロルとケイン、レイナは楽しそうにシチューを食べた。 「うめえ。」とケインが言ったあと、 「おいしい。」とフロルが言う。 「ジェシカお婆さん、最高にこのシチュー美味しいわ。」レイナが笑って言った。 ジェシカお婆さんはニコニコしていた。 このチームなら、きっと・・・・、空の王国を救える!!!! ご飯を食べたあと、ジェシカ婆さんはベッドに三人を連れていった。 「昼寝の時間よ。あんたら、相当疲れているみたいね」 「ありがとう。ジェシカさん」 レイナは満腹感を味わいながら静かに眠った。 フロルもケインも昼寝をする。 夕方の時間になると、フロルもケインもレイナも起きた。 「俺、空を飛んでみたい。いいなあ。フロルとレイナは。空を飛べるんだもんなあ。フロルは風魔法浮遊術で空を飛べるし、レイナは自分の翼で飛べるだろ。羨ましいぞ。」 「う~ん大丈夫。ケインも空を飛べるよ。巨大な鳥、ビッグバードが居るから、それに乗れば飛べる。始めはちょっと怖いけど。」とレイナは言った。 「え???俺も、空の世界を体験できるの!!!マジで!」 ケインは興奮しているみたいだった。 「オリバーの家に行けば、ビッグバードを貸してもらえるよ。」レイナはケインにそう話す。 三人は、オリバーの家に向かって歩いた。歩いている途中、たくさんの人にレイナは声を掛けられた。 「あ!レイナ様だ。これからどこに向かわれるんですか?」 「レイナだ!男の人を連れてる!」 「今からオリバーの家に行くの。この男の人達は客人よ。」レイナは堂々と言って、顔は良い表情をしている。 ケインは、レイナってすごい人気なんだなと思った。そりゃそうか。空の王国のお姫様だもんな。レイナは明るいから好かれやすい。 良い仲間を俺は得た。 フロルもレイナの明るい性格が好きなった。 「もうすぐ着く?レイナ。」フロルはレイナに聞いた。 「うん、近いよ。え~と、オリバーおじさんの家はこの通りの左側にあるわ。」 「ここか。結構広い家だなあ。俺、こういう家に住んでみたい。」と ケインは言った。 「オリバーおじさんは、お金持ちなの。」とレイナは言った。 木製の大きな家だった。レイナがコンコンとドアを叩くと、オリバーおじさんは笑って迎えてくれた。 「やあ。いらっしゃい。レイナ様。カッコいいお兄さん二人は、客人かな。久しぶりにレイナが来てくれて嬉しい。」 オリバーおじさんは紳士だった。レイナを快く迎えて、お菓子と水を三人にあげた。 テーブルも綺麗だ。椅子に四人は座った。 「ビッグバードに乗りに来たんだね。誰が乗るんだい?」 「彼よ。」レイナはケインの方に手を向けて、オリバーおじさんが わかるように言った。 「名前は?」 「俺、ケインです。」 「ケイン君。ビッグバードに乗ったことはあるかい?」 「一度もないです。」 「大丈夫、始めは怖い。少しずつ、低い高さで空を飛ぶ。私のビッグバードは訓練されてるから、大丈夫。絶対安全だから。 少しずつ高度をあげていけば、なれてくるよ。ビッグバードの操作の仕方も教えなくてはいけないね。ビッグバードの首に掛かっている 紐を使う。右の紐を引っ張れば右に飛んでくれる。 反対に左を引っ張れば左。両方の紐を引くと、高度が上がる。 紐を緩めて、自分の体を前傾姿勢にすると高度が下がる。 ビッグバードは生き物だから、優しく使うように。」 オリバーおじさんは水を一口飲んだ後、 「三人を外に案内しよう。ビッグバードが空を飛びたくてウズウズしてる。」 四人は家の隣にある、とても大きな鳥の訓練場に向かった。 フロルも、ビッグバードに乗りたくなってしょうがない。 レイナも久しぶりに乗ってみたい気がしてきた。 「私も乗って良い?一応自分でも空を飛べるけど、ビッグバード乗ってみたい!」 「僕も!」フロルも言う。 「良いよ。ちょうど四羽居るから、私含め一人一羽ずつ乗れる。みんな乗ってみよう。」オリバーおじさんは優しく言った。 「乗る時にコツがあるから教えよう。いきなりジャンプして乗ったらビッグバードが驚くからね。優しく、後ろから忍び寄って乗るのが正解だ。手本を私が見せる。」 オリバーおじさんは、忍び歩きで、ビッグバードに近づいた。 そして、静かに乗る。両腕でビッグバードの紐を引っ張ると、高度が静かに上がっていき、すこしずつ浮かび上がる。ビッグバードは翼をはためかせて、空を目指して飛ぶ。