テスト:李賀
これまでの授業で紹介していただいた作品は本当にどれも興味深かったですが、そ ういえば特に二回ほど心をつかまれた回があったというおぼろげな記憶があって、今 回の課題に際して改めて全作品を読み返してみたところ、その二回はどちらも李賀の ものだったと分かり、自分でもとても驚きました。どちらも非常に不思議な詩で、強 く惹かれます。天才なのに出世に失敗し、プライドの高さから人付き合いも苦手な人 間性と、そのまま夭逝した陽炎のような人生が、彼の詩の独自性に重なって見えま す。「銅駝悲」も「南山田中行」も、詩を詠むうちに、あっという間に李賀が心の世界 に入っていく様子を感じます。落魄してなぜか西の昌谷へ帰らずに東へ誘われ、いな いはずの銅駝の前を何千年もの旅人が行き交う様子を夢想する、人生の短さと風前の 燭、また、故郷の現実の田畑を前に、徐々に李賀にしか見えない不思議な景色が深ま っていく様子は、どちらも現実の人間の営みのはかなさと、その雄大な蓄積の永劫の 時間を感じる、感動的な作品だと思いました。