被害者バッシングと加害者擁護

一連の話の流れの中で、
被害者がグラビアを出版したことについて物議を醸し、
加害者の引退に対しては、過去の功績を含めて惜しむ声が寄せられていることに大いに違和感を感じる。

そもそも当事者間で「示談」したというだけで、刑事責任すら問われる可能性がある事件である。
被害者に何一つ落ち度がない以上、責められるべきは加害者・犯人であるはずだ。

もし一般人が加害者であったとするならば、この話は一体どういう展開を見せただろうか?
とっくに犯人は逮捕され、報道機関はここぞとばかりに、連日過去の悪行(かどうかもわからない)やプライベートの詮索を始め、お得意の家族取材の結果、世の中では加害者家族バッシング・リンチがおこなわれていたはずである。

当然、一般人の加害者にも「ファンや理解者好意的に見る人」はいるであろう。どれほど悪い人間でも「仲間内にだけ」は優しい人間もいるし、その人間の利益関係にある者であればあるほど「いい人」と感じている可能性が高いのは、言うまでもないのだから。

繰り返すが金のない一般人なら即逮捕されてようやく上記のような「報道(笑)」が行われる。
今回のような「女性の生命に関わるような事件」であるにも関わらず、逮捕されることもなく金の力で示談という仮免罪符を得、逃げている犯人に擁護の声が寄せられることには強烈な違和感を禁じ得ない。

ましてや性犯罪被害者に対し、「脇が甘かった」「隙があった」「一人で男の家に行ったから」などという暴言は、すべてセカンドレイプである。
すべて加害者に責任があること、「非親告罪」であるからこそ、本来逮捕され捜査起訴を検討されるべき存在であるほどの事案であることを、我々はしっかり認識し、犯人には厳しい目をむけるべきであるはずだ。

そして、考えてみてほしい。
身近で同様の事件が起こったとした場合のことを。

同じ会社で、仕事の延長線上で取引先の人に性的暴行を受けた
と社長に直訴してきた社員が居た。
社長はコンプライアンス室を無視して、一部の幹部でその申告を秘匿し、
取引先との板挟みの中、宥恕の意思のないままに示談を余儀なくされ、
最終的に被害者は退職の選択に至った。

加害者は逮捕されることもなく、のうのうと自社との取引を続けている。
被害者は、心身ともに蝕まれ、退職を余儀なくされたというのに。
本当に、あなたがたはそれを許せるのだろうか?

同じ会社にいた仲間として、そんなことをされた仲間を守ることもなく、示談がされたなら仕方ない、と取引先を守り被害者を切り捨てたと断じられても仕方がない社長の判断に両手を上げて賛同し、何事もなかったようにそんな会社で安心して仕事をして暮らせるのであろうか?

もしかしたらあなた自身が、被害者であったかもしれない。
そのとき今回の被害者のように誰も助けてくれなかったら、あなたはどうするのだろうか?

他人事だからと、こういった間違ったことに目をつぶり放置してきた結果が、今の日本社会の歪みと30年の無成長、いや凋落の原因だ。

自分で考え、間違いやおかしいことにNOと言う勇気を。




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