【長編小説】さよならが言えたら#7
【時代背景】
江戸時代後期ごろ。(現代ではありません。また、歴史に基づいた物語ではないので、時代だけ頭に入れていただけるとすんなり読めるかと思います)
【キャラクター説明】
[桜空]
15歳。一年前の夏祭りの日、事件に巻き込まれて両親を亡くす。近藤に引き取られ彼の営む剣術道場で暮らすようになる。
[総司]19歳。近藤の剣術道場に居候している。
[近藤]剣術道場を営んでいる。
[すみれ]近藤の妻。医療担当。
[敬助・三哉]
桜空と総司の友達。近藤の剣術道場に通っている。
[あらすじ]
総司と夏祭りに来ていた桜空。しかし、途中で総司とはぐれてしまう。道場に探しに来た桜空は、道場に見知らぬ女性がいることに気がつく。そしてそこには、血だらけの総司がいた。
[本文]
「ねえあなた。夏祭りで、五年に一度の花火が上がる年、最後の花火が上がった時に手をつないでいた恋人は、永遠に一緒にいられるっていう言い伝え、知ってるかしら?」
もちろん知っている。が、言葉を口にできないほどに体が震えている。頭の中は怖いくらいに冷静なのに。
「それでね、今日がその日なの。私と総司は、一生、ずっと、永遠に、永久に一緒にいるために、今日、総司と過ごすはずだったの。それなのに、総司がね、用事があるって私の誘いを断ったの。これって良くないわよね。私が勇気を振り絞って誘ったのに。誘ってあげたのに。」
なんとなく感づいてはいたが、この女性、総司さんに付きまといをしていたのではないか。総司さんに一方的に思いを寄せて、一方的に好かれていると思い込んで。
総司さんは優しいから、きっぱりと断らなかったのだろう。だから、この女性はきっとそう思い込んだのだ。
「総司が私の誘いを断ったから、私もこんな手段に出るしかなかったのよ。本当は、こんなことしたくなかったのに。傷つけたくなかったのに。」
言っていることがめちゃくちゃだ。でも、反論する勇気なんて出なくて。
「桜空、…これは、彼女と俺の問題です……。ですから、首を、突っ込まないでください……。」
今まで聞いたことのないようなきつい言葉。だけど、今ならわかる。これは、私を危険から遠ざけるためにわざとやっている、総司さんなりの優しさだろう。
気づいてしまえば、涙が出るくらいうれしい。
「気遣ってくれてありがとうございます。…でも私は、こんなときどうしたらいいか、毎日考えながら生きてきました。だから、もう間違えません。」
総司さんのやさしさに勇気を与えられて、やっと体の冷静さを取り戻す。
「ねえ、もう、あなたも死んで。私と総司の貴重な時間に水を差したんだから。ちゃんと責任取ってよ。」
女性は、小刀を構えた。
[告知]
次回!
総司と女性の関係が判明!
やっと冷静さを取り戻した桜空に
女性がかけた不穏な言葉。
桜空は、そして総司は、
このあとどうなってしまうのか!?
さよならが言えたら#8 お楽しみに!