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【小説】 ウィザード #2
「卒業証書、アメティスタ・エキナセア。ラーキオ魔術学校を卒業したことを賞する」
魔術学校は、大きく2つの学科に分かれている。
魔獣と闘う魔術師を育成する魔術科と、魔獣や魔法によって傷ついた人を治癒する魔法看護官を育成する看護科。
私、アメティスタは今日、ラーキオ魔術学校看護科を卒業した。
「これから、明日から君達が働くことになる病院を発表していく」
校長が、生徒の名前と病院を読み上げていく。アメティスタは、淡い紫色の瞳でただ前を見ていた。
「最後に、アメティスタ・エキナセア。君には、とある魔術師についてもらう」
「え?」
思わず声を漏らした。その場が静まりかえる。
「あの、魔術師につく、とはどういうことでしょうか?」
「言葉通りだ。君は病院で働くのではなく、とある魔術師の専属看護官となってもらう。後で校長室に来るように。以上」
質問のいとまも与えず、校長たちは去って行った。
「失礼します」
校長室の重い扉を押し開けると、机に向かって座る校長と、知らない男がいた。
「お呼びでしょうか」
校長は、うむ、と答えてソファに座るように促した。
「君は、今日から彼の専属看護官となる」
彼、といわれたその男は、ひどく鋭い眼を私に向けた。絹のような白い髪に、空を閉じ込めたような藍の瞳。そして鼻の頭にある大きな古傷が痛々しかった。
「彼の名は、レオ・セルリアン。現代魔術界最強の魔術師だ。」
私はおずおずと頭を下げる。私をにらむ視線が痛かった。
「初めまして、アメティスタ・エキナセアと申します。よろしくお願いいたします」
頭を下げ、自己紹介をする。
「おい、校長先生さんよぉ、専属の看護官なんていらねーって言ったよなァ?しかも女かよ。何の役にも立ちやしねぇ。」
男――レオ・セルリアンは、心底怠そうに頭をかいた。
「役に立つかどうかの話ではないのだ、セルリアン。君は使っている魔術との相性が悪い。だから魔術を使う度に体の内側から爆発したようなけがをするのだろう?」
校長の言葉に、レオは深々とため息をついた。
「そして君が強くなる度に怪我もひどくなる。このままでは、君は近いうちに死んでしまう。もし君がいなくなれば魔術界が回らなくなるのは目に見えている。」
「だから?」
レオは、そんなことは聞き飽きたとでも言うように首をすくめてから、アメティスタの向かいのソファにドカッと座った。
「ラーキオの看護科始まって以来の天才看護官である彼女を君の専属としてそばに置くのだ」
レオは両手を組み、私を見定めるように鋭い眼を向け、ニヤリと笑って言った。
「だってよ、天才さん?」