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tenju
【小説】 ウィザード #10
レオの両手のひらから青い炎が立った。
レオは、手の中の炎と魔獣を見比べる。
「これじゃ足りねーな」
憎々しげにつぶやくと、一度炎を消した。そしてゆっくりと目を閉じる。
カッと目を見開いた。
レオのまわりの空気が変わった。それと同時に腕全体から炎が上がる。
端から見ると、火傷しているようにしか見えず、まわりで悲鳴が起こる。しかし、レオはただ、魔獣だけを視界におさめていた。
魔獣は咆哮を上げた。
それと同時か、それともレオの方が早かったか、レオが攻撃する。
腕全体の炎を手のひらに集め、塊のようにして魔獣へ繰り出す。魔獣は攻撃があたった部分が塵となって消えたが、それでもまだ人の背丈ほどの大きさがあった。
レオはケラケラと笑った。
「まだ足りねーってか?いいぜ、遊んでやるよ」
両腕の炎が大きさを増す。離れてみているアメティスタにも、その熱が感じられた。
青い炎によって陽炎が立ち、景色が揺らめいて見えた。
「必殺技といくかァ?」
言いながらレオは炎を1本の棒のように引き延ばす。そして、弓を射るようにぐっと引き、魔獣に向かって放った。
炎の矢は、魔獣に命中すると大きく燃え広がり、その体を覆った。そして、断末魔のような咆哮を残し、魔獣は塵となった。
一瞬の静寂の後。
大歓声が起こった。逃げ惑い、悲鳴を上げていた人々は笑顔に戻っていた。
レオは両腕の炎を消すと、再び外套を纏った。そして、魔獣がいた場所に近付く。
そこでは青い炎が赤い炎に姿を変え、家が燃えていた。レオの炎によって家に火が移ってしまったようだった。
無言のまま両手を握ると、水が現れる。そして燃え続ける炎に水をかけた。
水を操る先天魔法を使って消火活動をしているのだと、アメティスタは一目でわかった。