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【小説】 ウィザード #13

「僕の家族が、あの魔獣に殺された」

 カルセドニーはぽつりとつぶやいた。

「だから、魔獣と戦おうとしていたのですね」

 カルセドニーはアメティスタの言葉に頷いた。唇をぐっとかみしめ、下を向く。

「私はアメティスタ・エキナセア、魔法看護官をしています。そしてこちらは、レオ・セルリアン様、魔術師です」

 アメティスタは自己紹介をする。カルセドニーがゆっくりと顔を上げた。淡い紫色の瞳と黒曜石の瞳が交わる。

「で、誰が死んだんだ」

 雰囲気をぶち壊すようなレオの言葉。カルセドニーは自分が出来る一番の恨みを込めた顔でレオをにらんだ。

「レオ様」

 アメティスタも冷たい視線を向けた。

 悪いと思っている様子もないレオにあきれ、カルセドニーはにらむのをやめた。そして、つぶやく。

「ニーニャ、…僕の猫が、殺された」

 カルセドニーの頬が、少しずつ湿っていく。黒曜石も涙に濡れ、光を失っていた。

「猫かよ」

「猫だよ!猫で何が悪いの!例え動物でもっ!僕の大切な家族なんだよ!」

 レオは、あっそ、と興味なさげにつぶやく。

「お父様やお母様、もしくはご兄弟はどちらにいらっしゃいますか?」

 カルセドニーは涙をごしごしと拭いて答える。

「いないよ。僕はずっと、ニーニャと二人で生きてきたから」

 アメティスタは息をのんで、そうですか、と小さく言った。

 沈黙が流れる。カルセドニーは孤独を思い出し、アメティスタはかける言葉を探した。

「お前さ、」

 沈黙を破ったのはレオだった。

「自分の先天魔法好きか?」

 突然の質問に、カルセドニーは怪訝な顔をしながら、わからないと答える。

「じゃあその先天魔法、どのくらいの頻度で使う?」

「余り使わない。だって役に立たないから」

 言いながらカルセドニーは、近くにあった小石を宙に浮かせた。

 1つ、また1つと小石を浮かせ、空中に猫の顔の形を作った。

「どうやったら、魔獣(あいつら)に復讐できる?」

 死んでしまった猫を思い描きながら、カルセドニーは言う。

「魔術師になりゃできんだろ」

 レオは、空中の小石を1つ指でつついた。

第十三話 カルセドニー・ブラックと魔法



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