![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/160961827/rectangle_large_type_2_0ea15d0877365518e3595d3e0e95fae6.png?width=1200)
【小説】 ウィザード #13
「僕の家族が、あの魔獣に殺された」
カルセドニーはぽつりとつぶやいた。
「だから、魔獣と戦おうとしていたのですね」
カルセドニーはアメティスタの言葉に頷いた。唇をぐっとかみしめ、下を向く。
「私はアメティスタ・エキナセア、魔法看護官をしています。そしてこちらは、レオ・セルリアン様、魔術師です」
アメティスタは自己紹介をする。カルセドニーがゆっくりと顔を上げた。淡い紫色の瞳と黒曜石の瞳が交わる。
「で、誰が死んだんだ」
雰囲気をぶち壊すようなレオの言葉。カルセドニーは自分が出来る一番の恨みを込めた顔でレオをにらんだ。
「レオ様」
アメティスタも冷たい視線を向けた。
悪いと思っている様子もないレオにあきれ、カルセドニーはにらむのをやめた。そして、つぶやく。
「ニーニャ、…僕の猫が、殺された」
カルセドニーの頬が、少しずつ湿っていく。黒曜石も涙に濡れ、光を失っていた。
「猫かよ」
「猫だよ!猫で何が悪いの!例え動物でもっ!僕の大切な家族なんだよ!」
レオは、あっそ、と興味なさげにつぶやく。
「お父様やお母様、もしくはご兄弟はどちらにいらっしゃいますか?」
カルセドニーは涙をごしごしと拭いて答える。
「いないよ。僕はずっと、ニーニャと二人で生きてきたから」
アメティスタは息をのんで、そうですか、と小さく言った。
沈黙が流れる。カルセドニーは孤独を思い出し、アメティスタはかける言葉を探した。
「お前さ、」
沈黙を破ったのはレオだった。
「自分の先天魔法好きか?」
突然の質問に、カルセドニーは怪訝な顔をしながら、わからないと答える。
「じゃあその先天魔法、どのくらいの頻度で使う?」
「余り使わない。だって役に立たないから」
言いながらカルセドニーは、近くにあった小石を宙に浮かせた。
1つ、また1つと小石を浮かせ、空中に猫の顔の形を作った。
「どうやったら、魔獣(あいつら)に復讐できる?」
死んでしまった猫を思い描きながら、カルセドニーは言う。
「魔術師になりゃできんだろ」
レオは、空中の小石を1つ指でつついた。