【小説】 ウィザード #15
「二人はさ、なんで旅をしてるの?」
カルセドニーの声が、森にこだまする。
「別に旅をしてる訳じゃねーよ」
レオが答えたことにカルセドニーは驚いた。てっきり、アメティスタが答えるものだと思っていたから。
「旅じゃないなら、なんなの?」
「さあね」
レオはつっけんどんに答える。はなから答える気などないようだった。
ねえ、と、カルセドニーがレオを追いかける。そのたびにレオは歩くスピードを上げた。
そんな二人の背中を見ていたアメティスタは、心の中で1つの考えを固めていた。
「ねえ、エミー」
カルセドニーがアメティスタを呼ぶ。アメティスタはすぐには返事をせず、ゆっくりと答えた。
「カルセドニー、少し、話をしてもいいですか?」
アメティスタとカルセドニーが足を止めたのに合わせて、レオも少し離れたところで立ち止まった。
「これから大切な話をします。聞いてくれますか?」
カルセドニーはゆっくりと頷いた。
アメティスタはカルセドニーと目線を合わせ、カルセドニーの肩に手を置いて話し出す。
「リーリエスに着いたら、カルセドニーの新しい家族を探します」
カルセドニーは、どういうことかわからないというように、瞬きを繰り返した。
「あなたをつれたまま、魔獣討伐を続けるわけにはいきません」
アメティスタの言葉の真意を理解したカルセドニーは、嫌だと首を振った。
「ですから、リーリエスで、お別れになります」
「嫌だっ!」
カルセドニーは、肩に乗ったアメティスタの手を振りほどいた。
「僕は大丈夫だよ!ついて行く!僕も戦えるようになって、」
その瞬間、大きなため息が聞こえた。レオだった。
「わかんねーか?お前が邪魔だって言ってんだよ」
レオはカルセドニーに背を向けたまま言った。カルセドニーの顔が、絶望で塗りつぶされる。
「率直に言って足手まといなんだよ。何も出来やしねぇガキに付いてこられると迷惑なんだよ」