それいけ!春日俊彰!〘小説〙
春日俊彰、オードリーと言う漫才コンビをしているお笑い芸人だ。
普段は春日語を駆使し、平場では負け無し、春日が喋れば皆が黙る、ロケーションでは撮れ高高すぎ進一、各所に引っ張りだこでスタッフディレクタープロデューサー更にはスポンサーまでも春日を尊敬している。
そんな春日が日頃どんな思いでお笑いの世界に興じているのか、皆さんに垣間見せようじゃないか。へっ!
お笑いモンスター春日の朝は早い、嫁のクミさんに丁寧にペットボトルの水を顔に掛けられ起床。へっ!
春日はクミさんに『ありがとうございます』と深いお辞儀と共に感謝を述べる、クミさんは春日に気を使い〈ありがとうございます〉の〈あり〉の段階でそそくさと部屋を出ていく、春日は『気が利く嫁だな』と素晴らしい伴侶に敬服し自慢の一張羅であるピンクベストを着て食卓につく。へっ!
食卓にはクミさんが作った手料理があった、春日はケチなので安物の食べ物が大好きなのを奥さんは知っている、安ければ安いほど春日のテンションは上がっていき興奮が抑えられない春日はつい勃起をしてしまう、近くのパン屋で貰ってきた〈パンの耳〉は春日にとってまるでフォアグラ、スーパーから貰ってきた〈おから〉はキャビア、家の前に落ちてたガムはトリュフだ。へっ!
朝からこんな豪華なモーニングを頂けるなんて春日は幸せ者だなと、パンの耳にガムを乗せ食した。へっ!
そして春日はマネージャーから掛かってくる電話にでて仕事現場まで来るように呼び出しがかかった、春日ほどになればスケジュールなどは伝えられない、伝えられ向かい椅子に座り人の面白い話を聞いて笑う、これが春日の高尚な仕事だ、だが今日の仕事は一味違うらしい、どうやら私におしゃべりを求めている、この春日に喋ろと?まったくナンセンスなディレクターだなっ!へっ!春日は喋るより座って笑ってる方が成果がでるんだよ。へっ!へっ!
春日は女子の集まるトーク番組に呼ばれた、キャスティング自体は妥当だろう、だが喋るとなると大変だ、春日は無駄話が多いで有名、余計な言葉や繰り返しで合間を繋ぎ、いつも若林を眠くさせてる、編集でどうとでもなるとはいえ流石に現場に迷惑をかけれないでゴンス。へっ!しかしこれでもすべらない話のMVPを取った実績もある春日、春日の過去が春日を奮い立たせた。へっ!鬼瓦っ!トゥースっ!
いける、私には出来るでゴンス、いっちょやったりマスカット。へっ!へっ!
口だけはいっちょ前の春日は緊張すればするほど春日語が多くなる、いつも私をサポートする係の若林も不在だ。
女子の前で恥はかきたくないでゴンス、便ステに行ってこようかしら。
そうこうしていると収録が始まった。
収録は順調だった、バラエティ女王達に囲まれ春日は鍛えられた自慢の相槌で応戦した、バラエティ女王の一角である指原莉乃が話を振ってきた、はいはいここでゴンスね、春日は擦りに擦ったピカピカに輝く泥団子の様な面白くない話をいかにも面白そうに喋り倒した、思わず『へ〜』と流しそうな話をバラエティ女王達は番組成立の為外堀を埋めてしっかりビルディングしていく、春日は『上手くいったでゴンした』と心で思い、最後は『失礼ぶっこきやした』と渾身の春日語を披露、無事静寂に包まれ終わった。へっ!
春日の仕事としてロケがある、言わいる外でブラブラする仕事、目的も無く生きている春日にはピッタリのお仕事だ。
春日は永遠に同じ道を歩き倒す事が出来るのでロケには困らない、スタッフには渋い顔をされるが、そんなものはキャスティングミスなので私のせいではない。
いつものノロノロ歩きで尺を稼ぎ、間が持たない時は『へぃ』『うぃ』『なるへそ』で攻略していく。
しかし春日の完璧なロケーションのイメージを今日活かすことが出来ない、何故ならここ最近は仕事が無くいつも暇だからだ。暇すぎ進一。へぇっ!?
仕事が無いのでそのまま家路に着くと若林から電話があった。とうとう浮気をしましたか、若林さん。へっ!
『あ〜もしもし〜』今にも嬉ションしそうな春日。
「あ、春日さぁ、ライブの漫才の合わせをしたいのよ」
『ほうほう』ハスる春日。
「だから、仕事終わりに合わせようかなって、あ、春日仕事無いか」
『いや有るわ!みっちみちだわ!』本当は3日休みの春日。
「あそうなの?じゃあ夜遅いけど合わせる?」
『まぁ、若林さんが言うならしますけど、ちょっとスケジューリング確認します』するまでも無い春日。
「あー、じゃあマネージャーの岡ちゃんに言っといてよ」
『うぃ、わかりやした』ちょっと春日語を入れる春日。
「お前まだ、そんな喋り方してんのか?」
『いやいや、これが普通ですよ』毎度この返しの春日。
「もういいや、これはもう合わせの時、復ビンです」
「いや、何で」喜ぶ春日。
電話を切ると自宅に着いていた。中々有意義な1日でゴンした。へぇっ!へっ!
家に入るとクミさんからお帰りのビンタがあった、春日は『あっつっ』と理由のわからないリアクションを取ると、へへ…と頬を抑えはにかむ。
春日も負けじとカバンを机にグレゴリーボムする、置くたびに『うぃ!』『うぃ!』と声が漏れるが、クミさんは子育てに忙しいので春日にかまってられない、エロパソでもプロスピでもやってて欲しい、仕事が無く家にずっといる春日に辟易しているクミさんは、春日のグレゴリーボムに対抗するように春日の胸に三澤のエルボゥをかます、春日はプロレスラーなのでかまされた技には全力で受ける調教をうけている、机の上に背中から落ちて机をバキバキにする、春日は変わらず痛いを『あっつっ』と言いクミさんの追撃の踏みつけを食らう、さすがにクミさんにドロップキックを食らわす訳にはいかずとっさに『トゥース!』と渾身の掛け声、畳み掛けるように春日はフリースタイルラップで勝負を賭ける、『へいっ!ここはフリースタイルダンジョン言いたいことはラップに乗せろ!』、春日は先行をクミさんにあえて譲ったが、クミさんは
「仕事して」と正論ラップ。
『………』春日はラップどころでは無かった。
「わかった?」
『うぃ!』
春日は可愛い我が子の為に真面目に働く事を誓った。へっ!へぇっ!へっへぇっ!
このムダの無い職人の動作を刻む春日は、一つ一つ少ない仕事をこなすごとに『また仕事が増えるでゴンス』と唯一の喋り相手であるサトミツにLINEを送ると、サトミツは『ゴンス』と一言かえす、しかし確かに意思を汲み取った的確なLINEに『腕を上げましたね』と余裕の返答をかます。へっ!
実は少しサトミツにも緊張していた春日、へ…へぇっ…。
プロスピで3日の休日を無駄に過ごしたのだった。へっ!へぇっ!へぇっ!
そして春日の今日が終わった。へぇっ!へぇっ!へっ!へぇっ!へぇっ!へぇっ!へ…へぇ…へっ!へぇっ!
『皆さん、春日のスケジューリング、空いてますよ?へっ!』
おわり。
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