[京都・烏丸紫明] 喫茶 花の木 高倉健が通った喫茶店 - 京都ローカル喫茶店案内 -
京都市上京区、北大路通りと鞍馬口通りの間を東西に極太に走るのが紫明通り。
北大路通りが華やかな体の表側だとすれば、鞍馬口通りは下町的な背中通り、そして紫明通りは曲がりくねっていながら体を支える脊柱だ。
地図で見れば、本当に背骨のように見えるから面白い。
その紫明通りは京都のローカル喫茶店分布図に置いてもまさに中枢。
堀川通から賀茂川という比較的短い距離の中にローカル喫茶店が8軒(2008年時点)。
しかも、どこもかしこも濃ゆいキャラ。
ぼくはここをローカル喫茶店の聖地と呼んでいる。
そしてそんな紫明通りの中でも中心的な喫茶店がこちら「喫茶 花の木」。
かつて高倉健が映画撮影の度に通ったという店内は薄暗く、飴色と琥珀色の落ち着いた空間。
まるでアンティークの宝箱に迷い込んだかのような、きらびやかでいて渋みのある輝き。
壁紙といい床の千鳥模様のタイルといい、黄金色のテーブルといい、何一つ調和を乱すものがない。
扉から差し込む光、かすかなBGM、客の静かな会話、丁寧に掃除された道具や部屋。
それらすべてが完璧なバランスで、花の木に収まっている。
それは「奇跡」とでも呼ぶべき、決して他の誰かが真似してもつくれない世界である。
そして、コーヒーも軽食も美味しい。
特にクロワッサンサンド。
金色のテーブルにコーヒーを置いてクロワッサンサンドを頬張れば、極楽浄土に南無阿弥陀仏。
カウンターの中のジャン・ギャバンのポスターは「この喫茶店に合うから」と高倉健さんから突然贈られたものだそうだ。
彼は店が閉まる時間になってにスタッフ十数人を引き連れてやってきて、この店を貸し切って夜な夜な宴会をしていたらしい。
一度、『黄色いハンカチ』の撮影の時、高倉健さんが吉永小百合さんが連れてやってきたときは圧巻だったそうな。
「で、その時、健さんが座ってた席が、いまお兄ちゃんが座っている席よ。」とママにいわれ、ぼくの尻は1cm浮いた。
「花の木」に立ちこめる独特の背筋が伸びる空気は、そんな伝説が今も息づいているからだろうか。
この空気は「花の木」に足を運ばなければ、味わうことができない。
ぜひ京都に来た際は、「花の木」もお忘れなきよう。
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喫茶 花の木
京都市北区烏丸紫明東入る北側(地図)
鞍馬口駅から徒歩5分、北大路駅から徒歩6分
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