見出し画像

対面の男性

渋谷駅に到着すると東急東横線からJR線に乗り換えた。慣れない乗り換えに少し焦る。乗り換え案内アプリに記載された乗り換え必要時間はどう考えても少なく見積りすぎだ。

無事に予定通りのJR線列車に乗り込むと、無人の4人掛けボックス席を運良く見つける。小さな幸せに思わず笑みがこぼれながら読みかけの本を開いた。

次の駅に着くと対面に男性が座る。4人席を独り占めできなくなることを少し残念に思いながらも、男性が満面の笑みで会釈するので何だか良い気持ちになる。

その男性も本を開いた。横目で本の内容を覗くと英単語が並んでいる。どうやら英語を勉強中のようだ。休日の列車内で勉強していることに感心しつつ、自分が娯楽の本を読んでいることに少し罪悪感を覚えてしまう。

久しぶりによく晴れた外をぼんやり眺める。英単語に飽きたのか、対面の男性も外を眺める。外を眺める同士の2人の目が会い、お互いに照れ臭く笑う。

列車は更に加速する。


「400字エッセイ」書いています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?