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早朝に目覚めてしまったとき

目が覚めて恐る恐る時間を確認すると、目をつんざくような容赦ない光と一緒に3時30分という情報をスマホが教えてくれた。完全に目が覚めてしまっていることを大人しく認め、大袈裟なあくびと大きな伸びをする。

いつもより丁寧に布団を畳んだ。それだけで気分が良くなる自分に気づいて嬉しくなる。近くの公園まで散歩した。外は夜と同じ色をしているけれど、夜よりも落ち着いた音色が起き抜けの耳に優しく届く。散歩から戻ると、いつもは食べない朝食を用意する。茶碗一杯分の米を小鍋で炊き、豆腐とネギだけの味噌汁を作る。静寂な部屋に米がぐつぐつ炊き上がる音と、赤味噌とネギの濃い香りが充満した。味噌汁が渇いた身体のすみずみまで染み渡って、身体が喜んでいるのがわかる。

いつも朝が早い隣家のドアが開いた。ようやく目覚めたセミたちの元気な鳴き声が響く。その声量に負けないように、いってらっしゃいとわざと声に出してつぶやいた。


400字エッセイ書いています。

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