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すべてが新しくすべてにドキドキする
朝起きた後の見慣れない天井が、いつもと違う場所に来ていることを寝ぼけた僕に教えてくれる。玄関の引き戸をカラカラ開けて、まるで緑色が溶け込んだような空気を胸いっぱいに吸い込んだ。水漏れ補修の跡がたくさんある昔ながらのキッチンに向かい、冷たい水を一杯飲んだ。お隣さんの猫も起きたようで、あくびのようなのんびりとした鳴き声がときどき聞こえる。
昨日から始まった新天地での生活は、すべてが新しくすべてにドキドキする。期待と不安のドキドキだ。期待と不安は、理科の実験でつくった地層のように綺麗に分かれているのではなく、まるで味噌を鍋で溶かし初めたときのぼやけ具合のように、あちらこちらで混在している。
そんなドキドキという不思議な感情は、自分の捉え方次第でポジティブにもネガティブにもできてしまう。死ぬこと以外は問題なし。歩いて食べて読書して、笑顔が自然と浮かぶ生活ができれば言うことなしだ。
400字エッセイ書いています。