住宅業界(注文住宅)の業界特性 2/3
⑥垂直統合型・分業型が多い
営業・設計・インテリアコーディネーター・工事・総務経理などがひとつの会社のなかで働いている形が多い。営業のみを行い、設計・施工は外注する『営業会社』などもあるが、少人数でもすべての職種を社員として揃えて分業しているケースが多い。営業・設計と施工を分けるケースもあるが、住宅の施工に関する責任の所在や家造りの流れが一元管理できる点では垂直統合型の方が安心と言えるのかもしれない。
⑦実務難易度が高い
経営として在庫調整や資金調達の難易度はそこまで高くはないが、営業・設計・施工に関わる実務者レベルの難易度はかなり高い。分業体制となっている場合は受け渡しのコミュニケーション力・段取り力が必要であり、それを一般顧客に向けたBtoCの事業として行っている点でさらに難易度が上がる。営業・設計・施工を一気通貫で行う体制もあるが、分業体制と双方にメリット・デメリットが存在する。会社としての経営の安定やノウハウの蓄積といった点からは分業型が適していると考える。
⑧事業ルーツが数パターン化に分かれる
地域で家造りをするきっかけとなった『ルーツ』となる事業が何種類か存在する。元々の事業が材木店・不動産会社・ゼネコン・大工などが多い。地元である程度資金力・技術力・営業力のある会社が住宅着工が増加した世代に算入しているケースが多い。その後は資金調達が容易にできる時代となり住宅会社・工務店の社員が独立創業するケースなども見受けられる。設計事務所が工務店になったケースは意外と少ないのではないだろうか。
⑨デジタル化が進んでいない
業界構造や現場ありきの業態体質の古い業界でもあり、技術革新が生まれにくい。近年(私の感覚では早い会社で2017年頃・コロナ期を境に大きくデジタル化)工務店業界においてもデジタルマーケティングはようやく進みつつあるが生産性向上の面からはまだまだ余地がある。『見積りの自動化』『プランの自動化』『動画を使ったマニュアル作成』『施工体制の自動化』などから生産性を上げて収益性を高めたり人材不足を補ったりなどの方策が求められていると考える。
⑪リアル&シリアス型
現場ありきの業態でまた非常に高額かつ個人向け(BtoC)となるところから典型的なシリアス型の業態である。カジュアル型がたの業態と比較して顧客側の感情の起伏が激しくなりやすく、満足度の高い時は感動的であるが半面感情的クレームになりやすく、技術的な知識と共にコミュニケーションスキルや精神的タフネスも必要とされる。家造りは家族の人生の一大イベントである事から、これをやりがいがある事業と位置づけ理念経営をする地域型工務店が多く存在する事も納得できる。
⑫急成長よりも継続的成長が求められる
特に地方では建設業は基幹産業であり地域に根差した事業としての住宅産業がある。よって顧客からはより安定した経営を求められる(アフターメンテナンスの意識が低いため、これに気付いていない顧客が案外多いのも事実であるが)。急成長を遂げる企業は注目されやすいが、本当の意味でノウハウと実力を持つ工務店が継続的成長をする事が、例えばその地域の良質な住宅の提供に貢献できる。
3/3へ続く
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