嘘つきの街で指切りを
リトルナイトメア【二次小説】
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平和時空の【学園パロ】です。
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年を重ねるにつれ、人は手を繋がなくなる。
誰かを疑い嫉妬して、不信感と握手をしているような気分だ。嘘つき同士が握手をしてつくりあげられたペイルシティーは雨に濡れていた。教室の窓から陰鬱な街並みを眺めながら僕は思う。海上に「胃袋」の意味を持つ「モウ」という名の船があるならば、この街は人間のどの臓器に喩えられるのか。様々な言語や思惑がひしめく、人体の中で最も騒がしい場所なので、おそらく「脳」ではないかと。
「モノ。また……頭痛いの?」
隣の席に座る、制服姿の黒髪の少女。瞼にかぶさるくらい長い前髪の下、彼女の目は不安げにゆがめられていた。彼女の名はシックス。僕の幼なじみだ。
「シックスは、腹ぺこかい?」
シックスは肯いて、自分のお腹をさすった。
「食堂に行こう」
「行く」
立ち上がった彼女に手を伸ばそうとして、僕は慌てて引っ込めた。小さい頃は躊躇いもなく君の手を握れたのに、今はそれができなくなっている。この子に対して疑いや嫉妬の念を抱いたことは一度もない。たぶん僕が君より少し大人になってしまったからだろう。一人分の間を空け、彼女と並んで廊下を歩く。
「モノ。頭痛い? 熱ある?」
シックスは左手でおもむろに僕の前髪をかきあげると、背伸びして自分の額をぴたりとつけた。
「シックス!」
思わず彼女を押し離してしまった。顔が急に近付いたので、一瞬キスされるのかと思った。
「痛い時には言って」
「心配してくれて、ありがとう。でも大丈夫だよ」
「……嘘」
シックスがみずから僕の手を、ぎゅっと握った。
「モノは頑張り屋の嘘つきだもの」
「シックス……」
大人になるにつれ人は手を繋がなくなる。それでも嘘つきの僕の手を、君はとってくれた。
「ありがとう。実は……頭が割れそうに痛いんだ」
ちょうどその時、職員室から軽やかな曲調の歌が聞こえてきた。昼休憩に入った先生がテレビを見ているらしい。
『He's gone, he's gone, he hung
Don't leave me, no more bellman among the sea.』
僕もシックスも、眉目を寄せた。
「この歌は苦手だ。不幸せな【誰か】を歌っているから。電波塔の放送は、どれも好きじゃ無い。アイタタ……」
「モノの頭痛って電波塔が原因?」
「そうかも。電波の届かないところに行きたいな」
『Help her, help her, and we'll see my way, my way
And you'll see a halo ascending above our sea.』
職員室から、あの歌の続きが聞こえてくる。
「船に乗りたいな。旅がしたい」
「一緒に行く。置いていかないで」
「うん、一緒だよ」
嘘つきの街で、指切りを交わした。
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