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待ち人来たるの話

電話で持ち帰り予約したお寿司を引き取りに、友達とお寿司屋さんに向かっている車中。
友達「5時に予約したのに、あと5分しかない。車で15分はかかるやん」
わたし「15分もかからへんよ。10分くらいちゃう?」
友達「5時過ぎるやん」
わたし「作って、そのままどこかに置いてくれたはるんちゃう?」
友達「いや、でも待ったはるやん」
わたし「…誰が?…お寿司が?」

お寿司屋さんの台の上で両膝を抱えて体育座りしている寿司桶。
「…5時って言ってたよな。もう5時なるやん」
さっきからずっと壁の時計をチラチラ見上げている。
「…え?5時って言ってたよな」
自分に言い聞かせるように呟く。
ふと横を見た。
「お前、もう冷めてるんちゃう?」
「え?」
お寿司と一緒に注文された唐揚げが目をこする。
「いや、冷めるまではいかへんけど、ちょっと蒸気が出てて蒸し風呂状態かな」
パックの中で窮屈そうに体をモゾモゾ動かす。
「っていうか、『お前』って言うなよ。自分がお寿司やからって、ちょっと上に立ち過ぎちゃうか?」
蒸気のせいか、余計に不機嫌そうにこもった声で言う。
「別に上に立ってるつもりはないねんけど…。…『お前』って言ってごめん」
「…うん、いいよ。もう言わんといてな」
「うん。もう言わへん」
2人は揃って壁の時計を見上げた。
「もう5時過ぎてるやん…」

ウィーン。(自動ドアの音)
「いらっしゃいませー!」
「あ、予約してたお寿司を取りに来ました」
「ありがとうございます。お寿司と、こちらの唐揚げですね」
「はい」
「どうぞ。気をつけてお持ち帰りください。ありがとうございましたー!」

5時10分。引き取り完了。
ホッとした表情の寿司桶と、「予約してたお寿司」の言葉に引っかかっている唐揚げ。
その後、どちらも美味しく食べられましたとさ。
めでたし、めでたし。

#なんのはなしですか
#お寿司の話です
#あっ唐揚げもです





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