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Efterklang Japan Tour 2024 ツアー後記

デンマークのバンドEfterklang(エフタークラング)12年ぶり、単独としては初の来日ツアーは1週間弱で4公演という短い期間だったが、これ以上ないくらい濃密で幸福な時間だった。

photo by Ryo Mitamura

東京・京都・名古屋の3公演をテニスコーツと周り、また東京に戻ってきて、最終日はausと共演するというスケジュール。Efterklangはテニスコーツ、ausそれぞれと深い縁がある。特にテニスコーツはDJ Klockとの別プロジェクトCacoyをEfterklangの自主レーベルRumraketからリリースしたのが始まりで、20年近く友情を育んできた仲だ。ausは2017年にEfterklangの別バンドLiimaの来日ツアーを主催し、共にかけがえのない時間を過ごした。

Efterklang & Tenniscoats

Efterklangの熱烈なリクエストによるテニスコーツとのジョイントツアーとなったが、誰よりも楽しんでいたのはEfterklangのメンバーだった。お互いのライヴにゲストという形で参加し、お互いの音楽をリスペクトしながら日を追うごとに絆が深まっていくのを近くで感じることができたが、Efterklangのみんなにとっても、長い間待ち望んできた夢のような時間だったのだと思う。

テニスコーツはインプロ色の強い感じで、毎回セットリストも異なっていた。両者の縁のきっかけとなったCacoyの曲まで披露するという粋なサプライズまであった(東京公演初日で「Piracle Pa」、京都公演では「Mural of Music」を演奏)。各公演でRasmusがアコースティックギターまたはベースで1曲ずつ参加)。特に前もって準備していたわけでもなく、Rasmusがテニスコーツと一緒に演奏したいからという理由で、サウンドチェックで軽く合わせたぐらいで、ぶっつけ本番でのコラボだった(東京公演初日は「光光ランド」、京都公演は「Mural of Music」、名古屋公演は「嗚咽と歓喜の名乗り歌」)。テニスコーツのライヴの自由さや包容力は彼らのライヴでしか体験できないものであり、毎回新たな感情が芽生えた。今回3回も連続で体験できてこの上ない幸せだった。

ツアー最終日の東京公演2日目でサポートアクトを務めてくれたausはヴァイオリン(高原久実)とヴィオラ(青柳萌)を加えた3人編成。しかも全曲新曲でスペシャルなライヴを披露してくれた。最後の曲ではCasperがヴォーカルで参加。美しいアンサンブルにデンマーク語(?)の即興ヴォーカルで花を添えていた。

photo by Ryo Mitamura

今回、EfterklangはドラムにTatu Rönkköを加えた4人編成での来日。Tatuは前述したLiimaのメンバーでもあり、10年ぐらいサポートをたまに行なったり行わなかったり。Efterklangのすべてを知っているドラマーだ。かつては大所帯編成がEfterklangのイメージだったと思うが、近年は5-6人編成でツアーを行うことが多かった。今回の4人編成はEfterklangにとって新たなトライでもあり、そのパフォーマンスは結果的にEfterklangのイメージをいい意味で裏切るものだったと言えるだろう。

Casper & Saya (Tenniscoats)
photo by Ryo Mitamura

キーボードのMads Brauerは他にもサンプラーや、ヴォーカルエフェクターを使用したコーラスなどその役割はずっと重要度を増していた。Rasmus Stolbergは元々エフェクターを駆使したベースプレイを行なってきたので、そもそもエレクトリック・ギターの不在を感じさせない。Tatu Rönkköはドラマー、パーカッショニストとして、エクスペリメンタル・ミュージック・シーンのみならずフィンランドのジャズ・シーンでも活動する実力派であり、前述の通り、Efterklangのライヴの肝を知り尽くしている。そしてフロントマンのCasper Clausen。アコースティック・ギターやSOMA PIPEという小型のヴォーカル・エフェクト・プロセッサーを使い、その持ち前のハイトーン・ヴォイスで圧巻のパフォーマンスを披露してくれた。普段はゆるふわな人なのに、ステージ上での存在感は圧倒的でカリスマ性を備えている。

photo by Ryo Mitamura

北欧の空気感をまとった壮大なバイブス、実験性と精緻さを絶妙なバランスでエモーショナルなバンド・サウンドに落とし込んだ演奏は、単にベテランの安定感という言葉で済ますことができないものだったし、テニスコーツとはまた違った種類の優しい包容力と懐の深さを持っていたように思う。どの公演も1曲目から最後までずっと最高で、これまでいろんなバンドやアーティストのツアーを行なってきたけど、そんな経験は多分初めてのことだった。大体クオリティが落ちる日が出てくるものだ。

photo by Ryo Mitamura

幻想的でアトモスフェリックな雰囲気で始まり、徐々に激しさを増し、アンコール以降、エモーションが爆発するような考えられたセットリストは、リリースされたばかりのアルバム『Things We Have In Common』を中心に、1st以外の過去のアルバムから選ばれた曲で構成されていた。

photo by Ryo Mitamura

静謐で神聖な「Dreams Today」。Tatuの見せ場でもあり、Casperがマレットで各会場のいろんな金属を叩きまくる鬼気迫る「Frida Found A Friend」。テニスコーツさやさんとのデュエットが美しい「Hold Me Close When You Can」。エフェクトをかけたマイクとの2本持ちでCasperが歌い上げる「Plant」。アルバムタイトルの「Things We Have In Common(私たちに共通するもの)」の旗を振りながら歌うCasperがカッコ良すぎた「Balancing Stones」(東京初日はステージ後方に掲げていた)。見どころはいくつもあったけど、古くからのファンとしてはアンコール以降がやはり格別だったと言えるだろう。

photo by Ryo Mitamura

名曲「Modern Drift」は当然一番のハイライトだった。イントロからもう感情が爆発したし、Casperはこの曲では毎回ステージを降りて、客席や、会場のバーカウンターでより自由な振る舞いを見せながら歌う。どの公演でも会場の一体感が最高潮になった瞬間だった。「Living Other Lives」ではテニスコーツの植野さんがサックスで参加。おそらくインプロだったと思うけど、もはやサックスなしの「Living Other Lives」が考えられないほどハマっていた(ツアーファイナルはテニスコーツの参加の予定はなかったけど、自然な流れで参加することとなった)。そして、どの公演も最後は全員でステージを降りて、生音での「Getting Reminders」。Casperがアコギ弾き語り、Rasmusがアコギ、Madsがリコーダー、Tatuはシェイカー(京都では箸でグラスを叩き、名古屋ではイスなどを叩いていた)。京都公演以降はテニスコーツも演奏に加わる。オーディエンスもコーラスで参加し、最高の大団円となった。Efterklangは昔からオーディエンスやリスナーとつながることに常に意欲的なバンドだった。それは意欲というよりも欲求と言ってもいいぐらいかもしれない。リスナーから映像を募集してMVを作ったり、オーディエンスの中からコーラスメンバーを集めたり…etc.。「Getting Reminders」をああやって演奏したことは、彼らにとって、オーディエンスとの歓喜の時間の共有をより意味のあるものにするためにとても象徴的な行為なんだと想像できる。

photo by Ryo Mitamura

個人的に一番うれしかったのはツアーファイナルでの「Cutting Ice to Snow」。初日とセットリストを変えるという話をしていたときにリクエストしてみた。「コーラスが足りないから難しいかも」と言っていたので、まさか演奏するとは思わなかった。とても大切な1曲。息をするのが苦しくなるくらい美しい時間。「music saved us. tonight it did.」という歌詞の通り、まさに救済だった。

最後に、オーディエンスのみなさま、関係者各位、古巣インパートメントのみんな、テニスコーツのおふたり、aus、京都公演を手伝ってくれたnight crusing島田さん、そして色々とサポートしてくれた7e.p.の斉藤さんに大きな感謝を。どうもありがとうございました。

およそ1年越しのプロジェクト。思い入れも強かったし、やり切った感もあるけど、ライヴがよすぎただけに歯痒さは公演を重ねるごとに強くなっていった。もっと大きな舞台でライヴをさせてあげたい。残念ながらぼくの力ではこれが限界だっただけど、そういう日がいつか来ることを願っている。

Efterklang Japan Tour 2024 setlist

2024.10.15 東京 FEVER
2024.10.17 京都 CLUB METRO
2024.10.18 名古屋 KD JAPON

1. Dreams Today
2. Alike
3. To A New Day
4. Animated Heart
5. Ambulance
6. Sedna
7. Black Summer
8. Frida Found A Friend
9. Hold Me Close When You Can (with Saya from Tenniscoats)
10. Sentiment
11. Plant
12. Balancing Stones
——
encore
1. The Ghost
2. Modern Drift
3. Living Other Lives (with Ueno from Tenniscoats)
4. Getting Reminders

2024.10.20 東京 WALL&WALL

2. To A New Day
3. Animated Heart
4. Ambulance
5. Sedna
6. Black Summer
7. Frida Found A Friend
8. Hold Me Close When You Can (with Saya from Tenniscoats)
9. Uden Ansigt
10. Plant
11. Balancing Stones
——
encore
1. Cutting Ice to Snow
2. The Ghost
3. Modern Drift
4. Living Other Lives (with Ueno from Tenniscoats)
5. Getting Reminders


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