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【Investor's Sight #2】「粘り強く社会を変革していくための取り組み」ー マカイラ株式会社 藤井 宏一郎さん・高橋 朗さんとの対話

株式会社Liquitousは2022年5月に、さらなる事業促進にむけた資金調達を行いました。それぞれの分野でご活躍の皆さまに出資いただき、新たなシナジーの創発も展開していきます。

出資という形で、弊社の取り組みを応援いただいている皆様にインタビュー「Investor's Sight」を行い、弊社に期待することなどを伺いました。

今回お話を伺ったのは、「Advocacy for Changemakers」をミッションに、テクノロジー、カルチャー、ソーシャルの3領域のイノベーションの社会実装を目指す変革者たちを支援する、パブリックアフェアーズの専門ファーム・マカイラ株式会社の、代表取締役CEO 藤井 宏一郎さん・代表取締役COO 高橋 朗さんです。

――Liquitousの事業に対する率直な印象は

藤井さん:
日本にとって非常に必要で重要な事業だと思います。なおかつ、Liquitousがその事業に真摯に向き合っているという姿勢に、私たちは好感を持って共感しています。GovTech(ガブテック)という言葉が出てきた時に、こうした〜テックという言葉を儲け話として扱うのではなくて、社会の仕組みを改革したいという考え方から始まっているところが特徴的ですよね。
マカイラもそういう意味では同じ姿勢で取り組んでいます。日本を良くしたいという考え方に共感をしています。一方、民主主義のDXというLiquitousの考え方の必要性については同意する一方で、それが国家レベルほど複雑な環境でどのように実現できるのかは、まだ見えていない部分がありますよね。

これから政策形成のスピードはより早くなっていくと経済産業省の新しいレポート「GOVERNANCE INNOVATIONSociety5.0の実現に向けた法とアーキテクチャのリ・デザイン」でも提言されていますし、誰かがやらなければならないという意味で、そういった取り組みをしているLiquitousを応援しています。

高橋さん:
前述の話に付け加える形でお話ししたいと思います。まずマカイラは「ホリスティックにアップデートし続ける社会」をビジョンに掲げています。どのような取り組みにも光と影はあって、その中で合意形成をはかることの難しさを感じているからこそのビジョンです。

今の間接民主主義の不全さは、どうにかしなければならないと考えているのですが、ここに取り組んでいるLiquitousに触れた時、新たな回路を生み出してくれるのではないかという期待をもったのが最初の印象です。

――Liquitousを応援しようと思ったきっかけと、期待することとは

藤井さん:
デジタル技術を活用した政策形成が重要といわれてから30年ほど経ちますが、いまだにうまくいっていません。その中で、“今困っている人たち”を助けるには、デジタル技術の実装を待っているのではなく、既存のヒューマンシステムを良い意味でハックするしかないと思っています。それが、マカイラが取り組むパブリックアフェアーズであるとも言えます。

一方で長い目で見た民主主義の改革を進める必要も当然あるわけですから、そういった改革を進めるデジタルプラットフォームを作ることのできる技術をもった人たちと出会えるといいなと考えていたところです。

目の前の課題を解決する取り組みが必要である一方で、長期的に解決しなければならない民主主義の改革という課題に取り組み、粘り強く社会を変革していくための取り組みを続ける。こういったことを期待しています。

高橋さん:
Liquitousを応援しようと思ったきっかけのもう一つがまじめさというところです。合意形成には多くのステークホルダーに参加していただく必要があるので、難しさがあります。加えて、危うさもあると思います。

事業をしてみると、本当に困っている人の声を届けられているのか、感情的な部分にまで気を配ることができているのか、そういったことをひしひしと感じることが多々あります。こうした合意形成の難しさと危うさをLiquitousはよく理解し、覚悟の上で取り組んでいると思います。単にツールを作って終わりというものではなくて、いろんな人がいろんな前提といろんな情報をもとに判断をするという事情への理解が深いなというところに心を打たれました。応援するならこの人たちだなと思いました。

――Liquitousとマカイラのシナジーについて

藤井さん:
マカイラとはいい意味で補完性があると考えています。マカイラは現行の社会制度では不十分な箇所に着目し、見過ごされがちな意見を、既存のヒューマンベースの民主主義システムの中で届ける活動をしています。つまり、既存の選挙や政策形成のやり方を、今すぐDXで変えようとしているわけではありません。
一方、既存のヒューマンシステムはブラックボックスになっている部分も大きいので、これをデジタルでオープンな仕組みにしていくニーズも感じています。これは非常にハードルが高いのですが、Liquitousにデジタル活用の方向性や可能性を示していただけるとありがたいかなと思います。

高橋さん:
マカイラとLiquitousの違いについてお話ししたいと思います。マカイラのクライアントは、特定の政策を実現したいという意図を持っています。その上でコンサルティングを行うため、どうしても取り上げるイシューに偏りが生まれてしまいます。

一方でLiquitousはシステムを作るし、ファシリテーションも行うけれどもある意味ニュートラルな運用をするわけですよね。Liquitousの仕組みを使うということは、すなわち誘導型の議論にはならないということです。この線引きは忘れてはならないかなと思います。

フラットな状態での議論やコミュニケーションが行われようとする時には、その対話に関わるすべての人が、偏りや思惑の少ない議論にしなければならないということを受け入れる必要があると思います。

――合意形成プラットフォームというものが社会に浸透していく際に、インフラとしての一般性をいかにある程度担保していくべきだと考えますか

藤井さん:
合意形成プラットフォームの運用について、それぞれの事業者が独自の運用ルールで動くのでは、自治体間などで混乱も起きるでしょうから、どこかで共通ガイドラインやベストプラクティス集といったものを作る試みはすべきだと思います。ただし、これをデジタル庁のような国の行政機関が拙速にルール作りをしてしまうということは避けるべきでしょう。市民社会の合意形成の流れを国が先取りして定めてしまうのは違うと思いますし、まだまだ試行錯誤、切磋琢磨の状況だと思います。

高橋さん:
今後様々な形で合意形成プラットフォームが浸透していくと思いますが、海外の同様の仕組みとの連携はできていた方がいいと思います。ガラパゴスのような状態になるのではなく、国際的な標準仕様などにも対応しておくことで国際運用性も高まりますよね。海外の同様の事業者とも連携していくことが重要です。

大事なのは、こういったルールを政府だけで拙速に決めてしまうのを避けることです。市場の競争と市民の選択が導くものであってほしいのです。ユーザーたる市民の声をもとに改善されていないと生き残れないと思います。もちろんどれくらいその声をシステム作りに反映させるかは難しいバランスですが。しっかり様々な立場が参加して、ルールをつくっていくということが極めて重要であると考えています。

藤井さん:
どれくらい融通の効くものにしておくかは難しい問題な気がしますよね。コンセンサス会議にはじまり、タウンミーティングなどさまざまな実験がなされているわけですけれども、それぞれのファシリテーションや合意形成の方法って違うじゃないですか。どう決めていくのかといったことは時と場合によって自由に決めていけるといいのかなと思いますよね。

もちろんルール化が一概にダメな訳ではなくて、パブリックコメント制度のように、市民からの意見収集について法律などで規定している場合もあります。また、議会のプロセスについていえば、国会法や地方自治法、議院規則のように、民主主義的統制を及ぼすからこそルールで規定しているわけです。

なのでこれは、合意形成プラットフォームが、市民・行政・議会の間で、どこ部分の意見集約をどう行うのか、という問題とつながっていますよね。規格を定める上でも、国内外問わず様々な場で活用できるものとして柔軟さがあるといいと思います。何がベストなのかわからない状況なので、規格を決めてしまうことを焦らないでいただきたいですね。

藤井さん、高橋さん、ありがとうございます!